7 提案
いつの間にかブクマが増えていて驚いております。
ありがとうございます!頑張って書いていきます。
提案と聞かされてジェシカも心配そうに二人の話を聞いていた。セラの今後のことだと思い話を切り出した。
「セラちゃんのこれからのことですよね?提案って何ですか?」
ジェシカがそう聞くとローファスはセラの近くまで行き、目線を合わせる為に腰を下ろした。
「提案というのはですね、私と家族になりませんか?」
「あら!」
「か……ぞく?」
「はい」
笑顔でそう応えるローファスに戸惑った。今まで奴隷として生きてきたセラにとって、家族というのは夢物語でまやかしのようなものだった。
「でも、わたしとかぞくになったって……なにもできませんし……どれいでしたし……」
「君は奴隷ではありません。奴隷制度は数百年前に廃止されているんです。もし君を買ったマカロフのように奴隷を持っていたなら、重い刑を科せられるのですよ」
奴隷では無い。そう言われても実感が湧かなかった。物心つく前から奴隷だったセラにとって染みついた精神はなかなか取れるものでは無かった。
「でも……」
「なら一週間お試しという形でどうですか?」
「おためし?」
「ええ、お試しです。それで嫌であれば、私たちと家族になるのを止めて頂いて大丈夫です。ですが私だけじゃなく私の家族も楽しみにしているんですよ?どうですか?お試し期間ということで私たちと家族になってみませんか?」
「いい……んですか?」
「もちろんですよ。私はセラと共に一緒に居たいです」
優しく微笑みながらローファスは応えた。セラはローファスの言葉に不安があったものの、家族という響きに嬉しさもあった。
「セラ。泣きたいときは思い切り泣いて良いんですよ……」
「えっ……?」
顔に触れると湿った感触があった。どうやら涙を流していたらしい。それに気づくと今度はどんどん涙が溢れてきた。
「ふっ……うっうっ……」
「セラ……」
ローファスはセラを頭を抱え込むように抱きしめた。抱き込まれたことで慌てたセラは身じろいだが、もっと強く抱きしめられた。背中をトントンと叩かれて、その温かさに触れた。そしてローファスの裾を掴んで顔を埋めて大声で泣いた。
暫く泣いていたセラだったが落ち着きを取り戻しローファスに向き直った。
「ほんとにいいんですか?」
「もちろん」
「ローファス……少し焦りすぎじゃぞ……セラ、そんなに慌てなくて良いんじゃぞ?無理に家族にならんでも、ここにずっと居ても良いんじゃ」
アトスに言われ少し考えたが、ローファスの言葉にも思うことがあった。いつまでもアトスにばかり甘えていれば、自分自身は変えられないと思った。ローファスと家族になることで自分を変えるきっかけになるかもしれない、こんな自分でも人の為に何か出来るかもしれないと思い、提案に乗ることにした。
「わたし……ローファスさまとかぞくになりたいです」
「セラ……」
「わたし、かわりたいです。このままじゃ……だめだとおもうので。ちゃんとつみとむきあって、これからはひとのために、だれかとむきあっていきたいです。なので……こんなわたしでもいいのなら……つれてってください。おねがいします」
セラは深く頭を下げお願いした。
「セラならすぐに変われますよ。私たちが付いてます。いつでも歓迎しますが、いつ来ますか?」
「三日後でどうじゃ?気持ちの準備もあるだろうしの」
「それでだいじょうぶです」
「では三日後に迎えに来ますね。それまで老師たちと話をすれば良いですよ」
そう言うとローファスは部屋から出て行った。その様子を静かに聞いていたジェシカは心配そうにセラを見つめた。一か月セラの様子を見守ってきたジェシカにとっては妹のような存在になっていた。ローファスは陛下の右腕として知っているがそれでも心配にはなってくる。
「セラちゃんはそれで良いの?」
「はい……だいじょうぶです。でも、あのひとのところにいってもまたあそびにきてもいいですか?」
「……もちろんよ!いつでも遊びに来て、チェスでもやりましょう?」
「はい!」
それからずっと三人で沢山話をした。城のこと町のこと、これからのことを沢山話をした。チェスも何度も対戦しジェシカといい勝負が出来るまでになった。三日後ローファスが来るまでずっと楽しく三人で遊んだ。