55 精霊
次の日、授業が終わるとセラは図書室で時間を潰していた。エーゼルたちにお茶に誘われたが断って一人本を読んでいた。少し日が傾いた頃、庭園の方へ向かった。昨日の場所に着くといつもと変わらない様子だった。やっぱり昨日の事は夢でも見ていたのだろうと帰ろうとした時、目の前が光に包まれた。眩しくて目を瞑った。暫くしてからおそるおそる目を開けると白い空間が広がっていた。
「ここ、どこ?」
セラは辺りを見渡したが、自分が先程までいた庭園ではなかった。ぼうっと立っていると声が聞こえてきた。
『やっときた~』
『えへへ』
『おそいよ~』
声の主は昨日見た者と同じ者だった。
「……あなたたちは誰ですか?」
おそるおそる質問してみると小さな虫の様な者が悲しい顔をした。
『ひどいよ~いつもいっしょにいたでしょ?』
『そうそう』
『ちかしつのころからずっとだよ?』
「ちかしつ?」
地下室と言われ始めは何の事だろうと首を傾げたが、次の瞬間思い出しのだ。小さい頃、奴隷として地下室で生きていたあの頃だ。あの時、今の見た目ではないが得体のしれない者、しかしとても温かい者だった光たちだ。
「あの時の……小さな光?」
そうセラが呟くと小さな虫の様な者は嬉しそうに言った。
『そうだよ!あのとき、いっしょにいたのがぼくたちだよ』
『あのころは、きみはまだぼくたちのすがたを、かんぜんにはみえなかったけど』
『いまはちからがだんだんと、めざめてきているからみえるようになったんだよ?』
嬉しそうに話すこれに先程からあった疑問をぶつけた。
「あなたたちは精霊……なのですか?」
セラがそう尋ねると小さな虫の様な者は顔を見合わせ嬉しそうに飛び回った。
『そうだよ!』
『ぼくたちせいれい』
『やっと、きづいてくれた』
精霊たちは嬉しそうにセラの周りを飛び回った。
「それで精霊さんたちはそれで私に何の用なのですか?」
呼ばれた理由を聞くと精霊たちは顔を見合わせて頷きあった。
『きょうはねあいさつにきただけなの』
「挨拶?」
『うん』
『そう!』
『これからね、ちょっとだけたいへんなことがおきるけど』
『がんばって!』
「大変な事?」
『うん、でもこれいじょうはおしえられないの』
『でもね』
『ぼくたちはきみを』
『てだすけしてあげることはできるから』
『またね』
精霊たちはそう言うと消えて行った。白い空間も消え戻って来た場所は寮の部屋だった。どうやら精霊たちが寮まで送ってくれたらしい。エーゼルが驚いた顔をしていた。いつの間に帰って来たのかと問いだされたが、今日の事は他の皆もいる時に説明した方が良いと思ったセラは明日のお茶会で話すと約束した。
まさか物語でしか知らない精霊が存在しているとは思わなかった。しかも昔から会っていたとは夢にも思わなかった。今日は様々な事があり疲れたセラはあっと言う間に眠りに着いた。その夜セラは夢を見た。それは自分が赤ん坊で優しそうな女性に抱かれている夢だった。幸せな夢だったが起きたら覚えてはいなかった。




