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52 断罪

「目障りなんですよ。オルフェ様たちの周りをうろうろして迷惑だったんです」


 平静を装いながら言うとオルフェは悲しそうな顔をして聞いていた。苦痛な表情のまま口を開いた。


「だからと言って人を貶めるのは良くない」

「何故です?悪い事はしていません」

「セラ……」

「分不相応という事を教えて差し上げただけです。それの何処が悪い事なのですか!」


 今度は強めに言うと皆ショックを受けた様に眉を顰めた。


「セラ様……酷いです……私、皆様と仲良くなりたかっただけですのに……セラ様とも仲良くなれたらって……」


 涙を浮かべ、いかに自分が被害者であるかを見せていた。大した女優である。耐えきれなくなったのかレイリーは今度は涙を流した。その横にいたエーゼルが彼女の背中をさすっていた。その様子を見て胸が苦しくなった。何とか表情を出さずにしているとオルフェが口を開いた。


「セラの言い分は分かった……その上でもう一度聞く。君がレイリー嬢に対して、持ち物を壊したり、隠したり、挙句の果てには階段から突き落としたと聞いたけれど、本当……なのか?」


 もう一度確かめる様に聞いてきた。レイリーの様子を窺うと手を覆っている隙間からこちらを睨む目を見た。また何をやられるか分からないので大人しくシナリオ通りに進める事にした。


「私がしました。それが何か?」

「セラ……」

「先程も言った通り、間違った事はしていません」


 心苦しかったが自分にはもうこれしか道はなかった。顔に一生懸命出さない様にしているとレイリーが声を荒げた。


「酷いです!私も皆様と同じになれる様に頑張ってるのに……」

「セラ、今回の事は見過ごせない。邸に戻り謹慎をしていろ。おって沙汰を言い渡す」

「……」


 オルフェにそう言われショックを受けた。分かっていた事だが、いざ言われると悲しかった。本当はこんな事をしたくない。何故こんな目に合わなくてはいけないのか、鳴く日々が続いた。自分の過去を隠す為とはいえ、やはり自分がおこなっていた事は間違っていたと気づかされた。


「衛兵!」


 オルフェがそう言うと扉の前で控えていたのだろう数人の殿下の護衛が入って来た。


「連れて行け」


 オルフェが静かに言うと護衛はセラの背に当て退出を促した。出て行く直前、扉の前で足を止めた。


「ごめんなさい……」


 誰にも聞こえない小さな声でそう言って、部屋を出た。




◇ ◇ ◇




 セラが部屋を出たあと、騎士と共に廊下を歩いていた。外に出ると一台の馬車が泊まっていた。それに乗り込み両脇を護衛が固め、目の前にもう一人いた。顔を下げて俯いていると護衛が話しかけてきた。


「セラ様、大丈夫ですよ」


 その言葉に驚いて顔を上げると護衛の人はにこにことしていた。


「安心して下さい。と言っても無理だと思いますが、セラ様に危害を加える事は一切ありませんから」

「えっ……」

「セラ様に対して、先程の様な事をしてしまった事、殿下は心を痛めておりました。最後まであの様な事をするのは反対しておりました」

「それでは私は……」

「セラ様には悪いですが、殿下方で人芝居を打ったのです。セラ様に辛い目に合わせてすみません。このあとレイリー様がどんな行動に移るか分かりませんので、今から王宮で保護させて頂きます。公爵にも連絡してありますのでご心配にはいりません」


 騎士は微笑んでそう言った。セラはオルフェたちに嫌われたと思ったので安堵から涙が零れた。


「ふっ……うっ……良かっ……た。嫌われ……た訳じゃ……なかった……」

「事前にお伝え出来ず、すみません」


 泣き続けるセラに騎士は謝った。

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