50 一人
教室に入ると皆心配してくれたのか声をかけてくれた。
「熱が下がったのですね。良かったですわ。皆心配してましたのよ」
「ご心配おかけしてすみません。もう大丈夫です」
一人一人に答えているとエーゼルが教室に入って来た。
「あっ!セラ、良かった。風邪治ったのね」
「おはようございます……心配おかけしました。もう大丈夫です」
そこで話は終わった。いつもならもっと会話を弾ませ、沢山話をするのだがこの日は違った。漸く離れてくれた安堵と大切な友人が離れてしまった悲しみがやってきた。
(これで良かったんだよね……やっぱり、私なんかが皆と居るべきじゃなかったんだ……)
この日から挨拶はするがそれ以外過ごす事がなくなった。誰も来ない階段下へ行くようになった。授業が終わるとすぐにそこへ行き授業が始まる寸前までそこに居るようになった。
ある日いつものように階段下で昼食のサンドウィッチを食べているとレイリーが傍までやって来た。
「ふふ、最近一人ね。やっぱりアンタみたいな子がオルフェ様たちと一緒に居る事自体間違いだったのよ」
会って早々そんな事を言われセラは溜息を吐いた。話すのは嫌だがこうして話しかけてくるので、こういう時は無視する事にしていた。
「でもぉ、まだ一人じゃないわよねぇ。朝の挨拶はされてるわよねぇ」
「それは……」
「それじゃあ駄目なのよねぇ。か・ん・ぜ・んに一人にならないと。学園には本当は来て欲しくないけどそうもいかないし……てなわけでもう誰とも話さないでね。あーそうそう、あとは私の事虐めてね。やらないと秘密話しちゃうから」
その後セラは何も言えずに黙った。レイリーは満足したのかその場を去って行った。その日からレイリーを虐める日々が始まった。怪我はさせたくなかった為物を隠したり、悪口を言うだけに止めた。だがそれだけでは満足しなかったのか、水をかけろだとか階段から突き落とせなど過激な事も言われたが、怪我をしたら大変だと言いそれだけは断った。
「レイリー様、そこ邪魔なんですがどいて下さいますか?」
「そっそんな、邪魔だなんて……私そんな事……」
「邪魔なんですよ!」
「きゃっ」
そう言うとレイリーはその場に倒れ込んだ。実際には押してもいないので倒れる筈が無いのだがセラが声を上げた瞬間に押されたように倒れ込んだ。とんだ演技家だ。セラは溜息を吐きながらその後の成り行きを見守った。
「ひっ酷いです。セラ様……私何もしてないのに……」
「男爵のくせに公爵に逆らうからです。生意気なんですよ」
周りからは息を呑む声が聞こえてきた。
「セラ嬢」
「っ……殿下」
「何をして居るんだ」
今まで聞いた事のない声で言われた。責める様な眼をしたオルフェに一瞬怯んだ。しかし怯えている訳にもいかず、意を決して口を開いた。
「殿下、何もしていません」
「では何故、レイリー嬢が倒れて居るんだ?」
「知りません。勝手に一人で倒れただけです」
「私にはセラ嬢が突き飛ばしている様に見えたが?」
「そんな事して居ません」
「まぁ良い。セラ嬢はレイリー嬢には二度と近づかないでくれ」
「殿下!」
「レイリー嬢、一応保健室へ行こう」
そう言うと、オルフェは座り込んでいるレイリーに対し手を差し伸べ立ち上がらせた。レイリーは顔を赤らめ立ち上がり保健室へ向かって行った。残されたセラは皆からの非難のの目が浴びせられた。その場にいるのが辛くなり、教室を出た。
教室を出ていつもの階段下へ向かった。一人になり暫くしてから涙が溢れてきた。
「ふっ、うっ、ふっ……み、んな……はな、れ、て……ちゃった……」
今まで努力してきて皆と仲良くなってきた事が嬉しかっただけに、皆と離れてしまった事がとても悲しくなった。この日を境にオルフェたちはレイリーの傍に居る様になった。一番の友達であるエーゼルもレイリーと共に居る様になった。これで完全にセラは一人になった。
来月からお休みします。再開は9月を予定しております。
楽しみにしている方すみません。




