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48 熱

 その日から皆から距離を置いた。放課後街へ行こうと誘われると用事があるから無理だと言い、休みの日一緒に過ごそうと誘われれば勉強するからと断った。そんな日々が続いたある日、セラはいつものように皆からの誘いから逃れる為に学園を出た。いつもなら図書室や庭園に行くのだが自分が行きそうな所に先回りされている事が多くなった為街に出て時間を潰すか部屋に閉じこもる事が多くなった。だから今日も街へ出かけたのだが……


「セラ」

「……オルフェ様」

「セラ、話があるんだ」

「話ですか?」

「あぁ……」

「私には話す事などありません。忙しいのでこれで失礼します」


 平静を装いオルフェの横を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。


「離して下さい……」

「私の話を聞いてくれるのなら手を離す。私たちは一度きちんと話すべきだと思う」


 怒気を含んだその声にビクッと身体が震えた。オルフェに促されるままある店に来た。店に入ると奥の個室に通された。店員が紅茶とクッキーを持って来た。個室から出て行くとオルフェは防音の魔法をかけた。暫く沈黙していたがオルフェが先に口を開いた。


「セラ何故私たちを避けるんだ?」

「避けてなど……」

「避けてるだろ……私たちが遊びに誘っても前は楽しそうに受けてくれたじゃないか。今じゃ全て断ってるじゃないか」

「……」

「何故だ、どうして……」

「……の……す……」

「えっ?」

「オルフェ様たち……殿下と一緒に居るのが嫌になったんです!それ位分かりませんか!あなた方と一緒に居るのは苦痛でしかないんです!ここまで言わないと分かりませんか!この話は終わりです。今後私に関わらないで下さい。失礼します」


 一気にまくし立てた後、急いで外に出て走って寮に戻った。その後の事はあまり覚えていない。食事はしなかったが一応お風呂に入って寝たらしい。起きたら椅子に座って寝ていた。髪を乾かさずに寝てしまったせいか少し喉が痛かった。自分で引き出しから風邪薬の瓶を出した。エリーが風邪の引き始めが大事だからと言われたからだ。その日は薬を飲んで食堂の小母さんに軽めのご飯を用意して貰いその日はずっと眠りに着いた。


 次の日になっても良くならず、逆に体調は悪化した。事務員の人に医師を呼んで貰い、薬を出して貰った。診断の結果は風邪だった。その日は学園を休んでゆっくり眠る事にした。


 暫く眠ってから目を開けると、身体が熱く頭も痛かった。喉が渇き水が欲しくなり起き上がった。その時眩暈がして倒れ込んだ。頭がぼうっとする中、身体がふわっと浮き上がったのを感じた。そのまま身体を委ねた。温かく包むそれに顔を摺り寄せた。ベッドに降ろされ頭の上に手を置かれたのを感じた。うっすら目を開けるとオルフェが目の前にいた。


「オルフェ様……?」

「セラ?良かった……扉の前で倒れて居たんだよ?覚えてない?」

「そう……だったのですか?」


 ぼうっとした頭で答えるとオルフェは心配そうに見ていた。


「ごめんなさい……心配をおかけしました……」


 そう応えるとオルフェは辛そうな顔をしていた。


「こんな時に聞くのもどうかと思ったのだが……何故私たちを避け始めたんだい?」

「それは……」

「皆心配しているよ?何があったんだい?セラは無意味に私たちの事を避けないだろう?」

「私……は……」

「安心して話してくれないか?」


オルフェが心配するのも当たり前だった。だが今は熱に浮かされ現実と夢が分からなくなっていた。


「私の事を……知っている人が居たんです……」


 セラはゆっくりと話し始めた。ここ数日にあった事を全て話すとセラは疲れたのかそのまま眠りに着いた。オルフェは全てを聞いた後、静かに怒りを滲ませていた。


「まさかセラの事を知る人物がいたとはな……そのせいで俺たちの前から離れようとしたのか……俺の……俺たちの大事なセラを追い込んだ罪は重いぞ……レイリー・トラン。このまま終わらせないからな」


 セラの頭を優しく撫でながらオルフェは呟いた。

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