42 それぞれの使い魔
今日は前から約束していたピクニックで広い草原に来ていた。勿論外出届はきちんと出している。
「広いですね。でもこれだけ広ければ全員の使い魔を呼び出せますね」
「そうね。早く呼んであげましょ」
エーゼルの言葉を皮切りに皆それぞれ使い魔を出した。全員の使い魔が揃うのは初めての事だったのでそれは圧巻だった。
「ルファ」
「グル」
オルフェは氷の属性なので使い魔は氷狼だ。そしてソルト、ユリア、アヴァンの使い魔は、火狐のルーン、水熊のウィン、火猫のロスだ。セラのクラスメイトのベンジャミン、クリス、アメリアたちは土熊のブレッド、氷鳥フィリー、赤鹿のロウだ。因みに召喚時に素晴らしい黒狼を出したエイベルの使い魔の名前はノアでアナベルの火鳥はヒルエと言う。
皆使い魔を出すと持ち寄ったシートを広げお弁当を開けた。使い魔たちはいつも遊べていない為伸び伸びと遊び回っていた。
「さぁ食べようか」
オルフェの言葉で皆食べ始めた。皆思い思いにお弁当を交換したりしていた。
「セラさん、こちらもどうぞ。エーゼルさんたちもいかが?」
「アナベルさんありがとうございます。私の物もどうぞ?おいしいですよ」
「エーゼルさんこれとこれ交換しませんか?」
「わぁそれも美味しそう!アメリアぜひっ!」
「ふふ、皆さんこれもどうぞ。美味しいわよ」
「ありがとうございます。先輩」
女子たちが仲良く分け合っている所を他所に男子たちはお弁当の中身を取り合っていた。
「おいアヴァン!それは俺のだ!」
「いや、そっちにもあるでしょ。ソルト人の物は取らない方が良いよ」
「へへん、もーらいっと!クリスは相変わらず鈍いな~」
「ベンジャミン……意地汚いよ……」
「クリス、俺のやるよ」
オルフェとエディはそんな五人を見て呆れながら自分のお弁当を静かに食べていた。皆食べ終わった後少し休んでから使い魔たちと遊び始めた。セラはネーヴェに果物をやっていた。基本的に使い魔は契約している主の魔力だけで済むのだがネーヴェが食べる事が好きな為良く食べ物を上げていた。
「ネーヴェが好きな果物沢山持って来たんです。皆さんも食べますか?」
そう言うとネーヴェ以外に近寄って来た使い魔たちにも果物を分け与えた。すると嬉しそうに皆食べ始めた。最初はエーゼルの使い魔であるエトーがネーヴェと共に食べに来たがその後興味深そうにルファやタイもやって来て食べて居るのを見た他の使い魔たちもセラの元にやって来た。その様子を見たオルフェとエディ以外は驚いた。自分たちが如何に食べ物を進めても絶対に食べてくれなかった自分の使い魔がセラの手からいとも簡単に食べたからだ。
「お腹いっぱいになりました?そうですか、良かったです。さぁ沢山飛んで行って下さい。なかなか広い所に遊びに行けませんから、今日は思う存分遊んで下さい」
「キュルルルルル」
セラがそう言うと嬉しそうにネーヴェは鳴いた後翼を広げて大空に飛んで行った。エトーはネーヴェが気に入ったのか飛ぶ前にネーヴェの背に乗って一緒に飛んで行った。魔力で足場を固定しているので飛ばされる心配は無い。他の使い魔も各々昼寝をしたり追いかけっこをして遊び始めた。
「驚いたわ……まさかウィンが食べ物を食べるなんて……」
「それ言うならルーンもそうだ。あいつ、意外に気難しくて未だに俺を馬鹿にするんだぜ?」
「それはあなたの使い魔だけよ」
「でも本当にそうだよね。普通使い魔ってあまり好んで食べたがらないのに……」
皆不思議に思いながら使い魔の様子を見守っていた。その後休憩を終えたセラたちは使い魔たちと遊び始めた。セラとエーゼルの使い魔は飛んで行ったきり戻って来なかった。帰る頃になりセラがネーヴェの事を心配していると遠くからネーヴェの鳴き声が聞こえてきた。
「ネーヴェ!」
セラが大声でネーヴェの名前を呼ぶと傍に降りて来た。
「キュア」
「ネーヴェ、いつまでも帰ってこないから心配したんですよ」
そう言うとネーヴェは反省したのかしゅんとした。するとネーヴェは口の中から何かを吐き出した。
「?」
セラは吐き出した物を拾い見てみると、白い水晶のような物だった。
「ネーヴェ、これ何処で拾って来たの?」
「キュルルルルル」
ネーヴェを首をこてんと傾げセラを見つめた。これ以上聞いても何も分からないと思ったセラは諦めて白い水晶を鞄の中にしまった。何故そうしたのか分からないが持ち帰らなければならない、そう思ったのだ。




