35 使い魔
暫く話した後アナベルたちは図書室を出て行った。静かになった図書室で続きの絵本を読み進めた。夢中で読んで居ると図書室の司書が話しかけてきた。
「君そろそろ閉館の時間だよ。そろそろ寮に帰りなさい」
司書にそう言われて窓の外を見るともう外は暗く赤く染まっていた。
「すっすみません。今出て行きます」
急いで本を戻そうと本に手をかけるとそっとその手を止められた。
「そんな焦らなくても良いですよ。それにここの本は貸出していますので寮に持って帰る事が出来ますよ。手続きしますか?」
「はい!」
貸出の上限である五冊だけを残し後は本棚へと戻した。司書の男性に貸出手続きの仕方を教えて貰い。本を持って図書室を出た。
「明日も来ますね」
「はは。貸出期間は一週間ですので慌てなくても大丈夫ですよ」
「そうなんですか?でも他の本も気になるので来ます」
そう言うと今度こそ寮に戻った。寮に戻ると既にエーゼルが帰って来て居た。
「セラ遅かったわね。心配して居たのよ?」
「セラ様すみません。ご同行で出来ずに……」
そんな二人の様子に申し訳無くなった。
「ごめんなさい。本に夢中になってしまって……」
「ふふっ。抱えてる本を見れば分かるわ。ほら本を置いてご飯食べに行きましょう」
「はい」
本を置くと食堂へと向かった。他の人はもう食べ終わったのか殆ど人は居なかった。
「セラ!」
「あっ義兄様」
「セラたちも今から食事?」
「はい。私が遅くなってしまったので……」
「何してたの?」
「図書室で本を読んで居たので」
「あぁ、あそこは本が充実しているからね。でもあまり遅くなっては駄目だよ。皆心配するからね」
「はい。今度は気を付けます」
話をしながら食事を選び一緒に食事を楽しんだ。それから夕食は度々エディと一緒に食べる事になった。偶にオルフェたちやアナベルたちも混ざり賑やかな食事になっていった。セラへの妬みも増えていったが、そこはセラの持ち前の天然で味方を増やしていった。
入学からあっという間に半年が過ぎ自分たちの得意不得意も見え始めた頃、漸く自分たちの使い魔を呼び出せる事になった。
「今日は使い魔を召喚しましょう。使い魔を召喚出来るのは一生に一度ですから集中して行って下さい。手本に私の使い魔を召喚しますね」
そう言うとベラは使い魔の召喚呪文を言い呼び出した。魔法陣からは白い小さな鳥が出て来た。生徒たちの口から歓声が上がった。使い魔の召喚には危険な事もあるので一人ずつ前に出て行う事になった。皆それぞれ呼び出した使い魔は虎であったり狼だったりと様々だった。そんな中でもエイベルやイザベラの召喚獣は見事だった。
「見てエイベル様の召喚獣!見事な黒狼だわ!」
「それを言うならイザベラ様の火鳥!綺麗な羽よ!これは学年一じゃないかしら!」
皆感嘆の声を上げながら自分の召喚獣を見せあって居た。セラの番になり前に行くと他の人と同じように簡単な説明を受け呪文を唱えた。
「シューラティエール」
セラがそう唱えると魔法陣が浮かび上がった。しかし直後、騒がしかった声が静まり返った。
「えっ……」
「嘘……」
「どういう事?」
「失敗?」
などと言った疑問の声が上がった。
「卵?」
セラがそう言った通り魔法陣の上にはセラがやっと抱えられる様な大きな薄い水色の卵がそこにあった。
「先生……」
失敗してしまったのかと思いベラの方を見ると驚いた顔をしては居たが慌てた様子は無かった。
「大丈夫ですよセラさん。過去に卵を召喚した者は何人かは居ますから。ですが使い魔とは言え何が生まれて来るかは分かりませんから気を付けて下さい」
「分かりました」
取り敢えず卵を抱えて席に着いた。
「あなたは何の使い魔ですか?」
まだ見ぬ使い魔に胸を膨らませながら卵を抱えた。




