34 妬み
今日の日の授業も何事も無く終わると教室の外からセラを呼ぶ声が聞こえた。
「セラ」
「あっ!義兄様!」
セラの教室にやって来たのはエディだった。エディはセラを見つけると近くまで来た。
「セラ久しぶり。元気そうでよかった」
「お久しぶりです。義兄様、こちらはエーゼル・コーレイです。学園での初めての友人です」
「そうか、初めましてセラの義兄のエディ・ノルディスです。セラと仲良くして貰ってありがとう」
「いいえ、こちらこそセラ様とは仲良くして貰っています」
挨拶もそこそこに三人は中庭へとやって来た。中庭に着くとオルフェたちがお茶とお菓子を並べて待って居た。
「セラいらっしゃい。さっ、こちらにどうぞ。君はセラの友人かな?君もどうぞ。私はオルフェ・ライト・ヒュードレイン。一応この国の王太子をしている」
「初めまして殿下。私はウェル・コーレイ伯爵の娘、エーゼルと申します。以後お見知り置きを」
「そう固くならなくて良い。ここでは同じ勉学を学ぶ者としている。ここではただのオルフェとして居るから、友として接して欲しい」
「分かりました。ですが先輩ですので、このまま敬語で失礼します。オルフェ様」
「あぁ」
そして、ソルト、ユリア、アヴァンにも自己紹介をしお茶を楽しんだ。その日からこの七人で一緒に居る事が多くなった。そのせいか、セラは周囲から妬まれる様になったがそこはエディたちが守っていた。
しかしこの日は違った。この日はエーゼルも用事がありエディたちとも約束して居なかった為セラは図書室に居た。図書館には魔術書の他にも絵本や歴史書など国中の本が集められていた。セラはその中から今まで読んだ事の無かった絵本などを中心に読んでいた。絵本なので数十ページしかないので何冊か選んでから席に着き、読み終わったら戻しまた何冊か選ぶという事をしていた。
席に着いて読んで居ると目の前に人が立った。ずっと影が差したままだったので誰だろうと思い顔を上げると、眉間に皺を寄せ不機嫌を表した令嬢が三人立って居た。
「えっと、こんにちは」
取り敢えず挨拶はきちんとしようと思い挨拶をすると相手も漸く口を開いた。
「ご機嫌よう、セラ様。私はアナベル・ガトーと申しますわ。あなたに言いたい事があって来ましたの」
「言いたい事……ですか……」
何も思い当たらないセラは首を傾げながら訪ねると三人の令嬢は一気に攻め立てた。
「あなた少し媚を売りすぎてません?」
「えっ?」
「あの三人の方だけで無く、先輩である殿方とも仲が良いではありませんか」
「三人の方と言うのはエイベル様たちの事ですか」
セラがそう尋ねると三人の令嬢は顔を真っ赤にして慌て始めた。
「えっ、えぇそうよ!あなたエイベル様たちに色目を使い過ぎではなくって?」
「アナベル様の言う通りだわ」
「そうよ!」
それまで会話に加わって居なかった令嬢も揃って捲くし立てた。
「そんな事無いと思いますけど……」
「なっ!」
「まぁ厭らしい!」
「同じ令嬢として恥ずかしいですわ」
そんな事を言われてもセラにはピンと来なかった。
「では皆さんも話しかけてみたらどうですか?」
「なっ……そんな破廉恥な!」
「ですが私は皆さんの事はとても大事な友人です。ここは学園ですし、勉学を学ぶ場所ですよね?私はまだ令嬢になりたてで至らない点はあるかと思いますが、勿論公の場では気を付けます」
はっきりと自分の意見を言ったセラにアナベルたちはたじろいだ。こんなか弱そうな子が自分たちに臆する事無く言った事に驚きを隠せなかった。
「あっ……な……」
言い任されたアナベルたちは言葉を失い悔しそうに手を握った。
「だったらどうしたら……あなたみたいに仲良くなれるのよ!」
そう叫ぶアナベルにセラはずっと感じていた疑問を言った。
「あの……間違ってたらごめんなさい。もしかしてエイベル様たちの事が好きなのですか?」
そうセラが聞くとアナベルたちは顔を真っ赤に染めた。
「それでしたら皆さんも友人から初めてはどうですか?私も皆さんの気持ちが分かりますから」
「えっ……」
「私も好きな人が居ますから……あっ!誤解しないで下さい。エイベル様たちは確かに素敵な方たちですが良き友人としてですので……私の好きな人は他の方ですから」
顔を赤くして言うセラに対して自分たちの愚かさに気づかされた。
「ごめんなさい。先程は令嬢として間違って居たわ……」
「アナベル様……」
「ほら、あなたたちも。私たちは今まで一方的にエイベル様たちに一緒に居たけれどそれは相手の事を考えて居なかったわ。私たちもセラ様のように友人から徐々に仲良くなって行けば良かったの」
「アナベル様……そうですよね……一方的に逆恨みなんかして私も間違っていましたわ。セラ様ごめんなさい」
「私も間違っていましたわ。ごめんなさい……」
こうしてセラに新しい友人が出来た。




