32 本当は
職員室に行くと中の別室へ通された。
「ではエーゼルさん防音の魔法をかけますね」
「はい」
「エーゼル……」
「大丈夫!暫くの間だけ声が聞こえないだけだから安心して」
「はい」
心配そうに話すセラを他所に笑顔で答えた。エーゼルに防音の魔法をかけ終わると髭が立派な男性が入って来た。
「初めまして。この学園の校長をしておる、アーロン・ロベルトじゃ」
「初めまして。セラ・ノルディスです」
「突然すまんな。呼び出してしまって」
「いいえ」
「話と言うのはお前さんの属性についてだ」
属性と聞いてセラは不思議に思った。先ほど無属性と言われたのにその事についてもう一度聞かせられるとは思わなかった。
「実はなお前さんが翳した属性を調べる水晶なんだが本来は無属性は白色に色づく筈何だが、お前さんが示した色は何も無かった。つまり無色透明。にも関わらず強く光り輝いた。これはそなたの魔力を何者かが封じている為だ。過去にもその様な者が居たが、その者の場合は魔力が強すぎる為に少し成長して魔力が安定してから解放する為だった。セラは何か聞いておるか?」
アーロンの話を聞き考えたが思い当たる事は何も無かった。あるとすればセラが奴隷として生活する前に何かあったとしか考えられないが、自分の身の上を果たして今話して良いものかどうか分からなかった。
「えーっと……ありません……」
「ふむ……そうか……ん?あぁ、すまない。セラの事については儂は全て知っておるよ。そなたが世話になったアトスから話は聞いているのでな。そう心配せずともお前さんの事を知っておるのはこの学園ではこの場に居るベラと儂、後はそれぞれの初等部、中等部、高等部校長だけじゃ。他の者は知らぬから安心しなさい」
しかしそれが本当だとしても言える事じゃなかった。
「ふむ、アトスの話していた通りじゃな。聡明な子じゃな。セラ今話さなかった事は正解じゃ。もしかしたら、かまをかけて本当の事を聞き出す輩が居るかもしれんからな。気を付けなさい。もう少しでアトスが来てくれるからその時にもう一度話してくれるか?」
「分かりました」
暫くしてからアトスがやって来た。
「ほほ久しぶりじゃのセラ」
「お久しぶりです。老師」
「どれ早速だがアーロンにはある程度聞いた。話してくれるか?」
「分かりました」
アトスに言われ、本当の事を話すにしても本当に思い当たる事は無かった。マカロフの元に居た頃も魔封じされる事も無く無尽蔵に魔力が枯れ果てるまで使用されていた。なのであそこに来る前生まれ頃になる。
「つまりセラが記憶している限りは術を掛けられた事は無いんじゃな?」
「はい。間違いありません」
「ふむ……ではもしかしたらセラの両親が何らかの理由で魔封じをした可能性があるの」
その話を聞きどうすれば良いか分からなかった。記憶に無い、まして生きているかどうかさえも分からないのだ。自分はずっとこのままかと不安に思って居るとアトスが優しく頭を撫でた。
「大丈夫じゃ。少しだけだが分かった事がある。セラがかけられている魔封じは一時のもので自然に解呪される。年齢を重ねて行けばいずれ解けるから安心せい。それに今の所は身体に異常は無いのだろう?」
「はい、大丈夫です」
「ほほ、なら心配せんでも良いだろう。もし違和感があればすぐに言っとくれ」
「分かりました」
「では儂はもう帰るの。アーロンまたの」
そう言うとアトスは部屋から出て行った。
「アトスが言うのであれば問題は無かろう。判定通り無属性として登録するからの」
「分かりました。宜しくお願いします」
「ではもう言って良いぞ。時間をかけてすまなかったの」
漸く話が終わりエーゼルが待つ部屋に行った。学園長が来てすぐに隣に移動して貰っていたのでとても待たせてしまっていた。
「ごめんなさい!遅くなってしまって……」
「大丈夫!話は終わったみたいね。さっき魔法も解いて貰ったから今はもう聞こえているわ」
「良かったです。では行きましょう」
エーゼルと一緒に職員室から出ると生徒たちはもう殆ど誰も居なかった。
「もう誰も残って居ませんね」
「そうね、遅くなっちゃったし図書館へは明日行こう」
「ごめんなさい私のせいで……」
「もう、そんな事気にしないの!」
「うぅ、分かりました」
雑談をしながらゆっくり部屋に戻った。




