31 属性
ベラが出て行った教室では騒がしさに包まれた。
「セラ気にしちゃダメよ?」
「?」
「先生に無属性って言われたでしょ?あんなに楽しみにしてたのに……」
エーゼルに言われてどういう事かと思ったが無属性は他の人にとってはあまり良い結果じゃないらしい。でもセラにとっては無属性で良かったと思っていた。
「気にしてません。それに私は無属性で良かったと思っているんです」
「何で?」
「無属性は皆さんのサポート役って事ですよね?私は魔法で攻撃をしたくありませんし、人の為になるのが嬉しいので……私はこの結果で嬉しいです。それにベラ先生も他の属性も扱えるようになると言ってましたし、そこまで残念に思ってませんよ?」
自分の昔の事を明かしていないがずっと人を傷つける仕事ばかりを行っていたので無属性と言われた時ほっとしていたのだ。
「そっか……まぁそれもそうだね。適性が一番良かったのが無属性であって、別に他の属性が使えないって訳じゃないものね」
「エーゼルは髪の色と同じで火属性でかっこいいです」
「ありがとう!それより早く教室に行こう」
二人が教室から出るとひそひそと話し始めた。
「無属性で良かったですって」
「私たちの属性が羨ましいからそんな事言ってるのですわ」
「僻みも良い所ね」
そう話す貴族の女子たちはくすくすと笑いあって居た。平民の子たちからはあんな貴族の子は初めてだと共感を覚えた。
「無属性なのにあんなに堂々として凄いわね」
「本当よね。私なんて魔力が弱いから役に立た無いと思ったけど、私の力でも使い方次第で何とでもなるって事よね」
「だよなぁ。俺も頑張ろう……魔法だけじゃなくて武術とか剣術とかも考えて置こうかな……」
こうしてクラスが二分して行く中、後ろの席に座って居た男子の三人は他の人とは違う感情を抱いて居た。
「あの子良いなぁ」
ベンジャミンがそう言うと他の二人も
「だな、他の女の子たちとは違うと言うか」
「雰囲気も柔らかくて……」
三人はぽうっと顔を赤く染めながらお互いの顔を見た。
「抜け駆けは無しでと言いたい所だけどそうは言ってられないから早い者勝ちで」
「「異議無し」」
セラの知らぬ所で企てが始まろうとしていた。
自分たちのクラスに戻って来たセラたちはこの国の歴史について学んでいた。貴族たちはある程度学んできているが平民たちは両親から歌から簡単にしか学んでいない。それが貴族と平民の差だった。
「で、あるからしてこの国が誕生したのです」
セラは授業でする話をきちんと聞いていた。学園に来る前に基礎知識は勉強してきたが改めて聞くと新鮮で面白かった。
「何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
ベラが質問を促すと一人の平民の女子が手を上げた。
「はい!」
「ではアメリアさん」
「この国の成り立ちは分かったのですが、精霊との関わりはいつ頃から始まったのですか?」
他の人も精霊と聞き適当に聞いていた貴族の人たちも背筋を伸ばして興味深そうに聞いていた。
「精霊についての授業は他であるのでここでは簡単に説明して措きます。精霊の存在が確認出来たのは今から数千年前と聞いています。時代で言うとロティリア様の時代です。ロティリア様はヒュードレイン三世であり初代女王です。彼女が手掛けたものは数知れず今もその名残が残って居る所が沢山あります。この学園もその一つなのですよ」
そう簡単に説明しながら歴代の王の話になった。あっという間に時間が過ぎ放課後になった。
「セラ図書館に行ってみない?」
「そうですね。行ってみましょう」
エーゼルとそんな話をして居るとベラが話しかけてきた。
「セラさん少し宜しいですか?」
「はい?」
「実は少しお話がありまして職員室に一緒に来て欲しいのです」
「今から……ですか?」
「えぇ」
ベラが申し訳なさそうに言うとエーゼルが話に割り込んできた。
「先生私も一緒に良いですか?」
「えっ?」
「初めての場所でセラも戸惑ってますし私も一緒に行けば安心すると思うんです」
「うーん、でもねぇ……」
ベラが悩んで居るとセラも話しかけた。
「あの私からもお願いします。大事な話ではあるのは分かるのですが……」
セラからもお願いされてベラは暫く悩んだ後口を開いた。
「分かりました。ですがエーゼルさんには防音の魔法をかけさせて頂きます」
「分かりました」
話はまとまりセラとエーゼルはベラと一緒に職員室へ向かった。




