4 解放
光たちはマカロフが落とした袋の中の呪具を壊して消えていった。唖然と見つめる中、呪具が壊されたことによりマカロフは冷静さを失っていった。
「くそっ!どういうことだ!何故簡単に壊れるはずのない呪具が壊れるんだ!そうか……そうかお前がやったんだな!この死にぞこないめ!」
ガシャンッ!ガラガラガラガラッドスッ!
檻を風の魔術で飛ばされ牢の石壁に当たった。その衝撃で身体を打ったが痛みはもう感じなくなっていた。しかしマカロフに向かって「ざまぁみろ」と微笑むとその様子を見たマカロフはさらに激昂した。セラを檻から無理やり出すと何度も足で蹴飛ばした。
「お前の……お前のせいで!」
マカロフが再度魔力を練りこの場から逃げようとする。セラも同様に魔力を練る。セラのほうが早く魔力を練り終わり、拘束術をかけようとしたとき、上のほうから複数人の足音が聞こえてきた。
ドーンッ!
ドアが吹き飛ぶのと同時に十数人の人がなだれ込んで来た。
「マカロフっ!」
「っ!」
マカロフは一瞬はっとしたが、すぐに声をしたほうに向かって練っていた魔力を放出した。しかし彼らは予想していたのか放出された魔力を霧散させた。
「往生際が悪いぞマカロフ。お前がしてきたことは全て明るみになった。陛下はかなりご立腹だぞ。それ相応の罰が下される。覚悟しておくんだな。お前たち連れて行け!」
「はっ……離せ!俺はここで終わるわけがない!離せ!離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
叫び暴れながらマカロフは連れて行かれた。あっという間の出来事にぽかんとした。マカロフが連れて行かれる様子を見たセラは、安堵からか全身の力が抜けていった。
「おっ、おいっ!大丈夫かっ!」
近くに居た騎士が気づき近づいて来たが、眼だけで追うのが精一杯だった。騎士は少女に触れようとしたが、それに気づいたセラが力なく騎士の手を払いのけた。
「!」
「さわっちゃ……だ……め……です」
「何を言っている!早く治療を!」
「さわったら……じゅそ……うつっちゃ……います。……だめ……です」
その言葉を聴いた騎士は目を見開き驚いた後、すぐに少女を抱き寄せ近くに居た騎士に指示を出した。
「俺は今からこいつを老師の元に連れて行く!後のことはバレンの指示に従え!」
言うが早いか転移魔術を展開しセラと共に消えていった。
◇ ◇ ◇
「老師!」
「おぉ、アラン。久しぶりじゃの。そろそろ嫁さん貰わないのか?」
「老師。余計なお世話です。今はそんなことよりもこの子をお願いします」
「ん?これは……!ジェシカ!特別室の準備じゃ!」
呼ばれたジェシカは隣の部屋から出て来た。最初は「特別室?」何て考えていたジェシカだったが、バレンの抱えている少女を見るとすぐに準備に取り掛かった。
「どれ、ちょっと見せて貰うよ。お譲ちゃん」
触ろうとした老師にセラは力なく答えた。
「だ……め……じゅそ……うつ……ります」
呪詛は絶対に人にはうつらないが、呪詛によって侵された頭では考えることが出来なかった。
「大丈夫じゃ、呪詛はうつらんから安心せい」
「うつら……ない?」
「そうじゃ、今からお前さんの呪詛を解いてやるからの。だから安心して儂に任せるんじゃ」
「あぶな……い……」
「危なくないぞ?これでも儂は呪詛に詳しいんじゃ。少し眠ると良い。その間に全て終わっておるからの」
老師が少女の頭を撫でながら優しく微笑むと、セラそのまま瞼を閉じた。気を失った少女を見つめるとすぐに行動に移した。
「さて、始めるかの」
「お願いします。私は後処理がありますので、これで失礼します」
騎士はそう言うと出て行った。その後すぐにジェシカが少女を連れて隣の特別室へと老師と共に入って行った。
特別室の中は治療用の魔道具が沢山置いてあった。重傷者用に作られたその部屋は特別製で魔力を漏らさないようにしてあった。少女をすぐに治療台に乗せると自動的に魔力の補給を始めた。
「ここからが大変じゃぞ」
「分かってます」
老師と呼ばれた老人が様々な魔道具を用意し治療を始めた。
やっと話が進む……か?




