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29 朝の時間

 翌日セラたちは起床を告げる鐘の音で目が覚めた。新入生たちは初日だけ二時間程、授業を遅らせられている。その理由は緊張して良く眠れず遅刻する者が多かったからだ。特に貴族の子たちは朝起こして貰う事が多かった為寝坊する者が多く居た。逆に平民の子たちは朝早くから親の仕事を手伝う事が多かった為遅刻する者は殆どいない。セラは邸では自分で起きれるようにしていた為慣れていた。エーゼルは朝庭の散歩をするのが日課らしく日が昇って三十分くらいで目が覚めるのだそうだ。ここでも園庭の場所を確認したら、明日からでも早速散歩をする予定だそうだ。


「セラおはよう」

「おはようございます」

「早く着替えて食堂に行こう!」


 急いで着替えて食堂へと向かう。途中慌ただしく走って行く子を見ながらゆっくり向かった。食堂に着くとガヤガヤと生徒たちで溢れていた。


「沢山人が居るわね……座れるかしら?」

「でも沢山人が居ますがちらほら座れる場所が結構残っていますよ?ほらあそことそちら……向こうも空いています」

「なら早く貰いに行こう」


 朝食を受け取る台まで行くと料理の小母さんが声を掛けてきた。


「おや?早いね。あんたたちはまだ始業時間じゃないだろ?」

「小母さん。何で分かるの?」

「そりゃあ分かるさ。新入生と上級生の違い位。長年ここに勤めて居ると自然と顔は覚えるものさ。まぁ名前までは全員覚えちゃいないが……一年もほぼ毎日顔を合わせて居ると簡単に覚える。まぁ慣れだわね」

「へぇ!すごいね」

「ふふん!そうだろ?さぁさ早く食べておいで。食べ終わった食器はあそこの台に置いておくれ。これは決まりだからね。ちゃんと自分で片付けないと上級生に注意されるから気を付けるんだよ」

「はーい」


 そうして二人で奥の隅の席に座り朝食を食べた。メニューはカリカリベーコンにスクランブルエッグ。綺麗に焼き目が付いたトーストだ。飲み物は種類が豊富で果実水、紅茶、コーヒーに牛乳など生徒の好みに合わせて置いてあった。


「う~ん、おいしい!」

「えぇとても!」

「このスクランブルエッグ、ふわふわでとろとろだよ~」

「私そんなに食べられないからこの量は嬉しいです」

「あの小母さん。なかなかやるわね。一人一人に素早く丁寧に量とか要らない物とか聞いてるんだもん」

「そうですね。あっ小母さんの名前を聞き忘れてしまいました……」

「今度聞けば良いよ」


 そして食べ終わると食器を小母さんに言われた台の上に置いた。すると食器が突然消えた。


「わっ!」

「えっ!」


 エーゼルと顔を見合わせ目を丸くして居ると後ろから声を掛けられた。


「ふふっ。最初は驚くわよねぇ。この台には魔法術式がかけてあってこうして台の上に置くと……術式が反応して食堂の洗い場まで転送されるのよ」


 後ろを振り返ると私たちよりも背が高い綺麗なお姉さんが立って居た。


「へぇさすが魔法学園……こういうのが沢山あるんだろうなぁ」

「凄いですね。他にもどんな物があるか楽しみですね」

「色んな便利な術式があるから楽しみにしていてね。ようこそ魔法学園へ!あなたたち新入生を私たち上級生は歓迎するわ。これから頑張ってね。……あら?もう時間だわ。ふふ、また会いましょうね」


 そう言うとお姉さんは講堂の方へと向かった。向かった方向は初等部の高学年の教室がある講堂だ。何年の先輩かは判らないがもう一度ゆっくりと話がしてみたいと思った。


「また話せると良いね」

「えぇ、今度はゆっくりと……」


 それから部屋に戻り授業の準備を始めた。二人で時間割を見ながら教科書を準備した。後は時間までゆっくり過ごした。始業まで後三十分になり部屋を出た。


「授業楽しみね」

「どんな授業か楽しみです」

「セラは魔法を使うのは初めて何だっけ?」

「はい。なので使えるのを楽しみにしてます」


 二人で初等部の低学年が通う講堂へと向かった。教室へ入るともう既に何人か机に座って居た。


「一番乗りかなって思ったけどもう登校している人は居たわね」

「みなさん早いですね」


 そして二人で席に着きホームルームが始まるまで話をしていた。始業五分前には全員席に着きホームルームが始まった。午前中はこの講堂の中を回り説明を受け、午後は魔法の適性検査を受ける事となった。


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