23 春になり
春になり動物たちが活動を始め、多くの花が咲き始めた。今日はエディが学園へ入学の日。朝早くに目を覚ましエディの許へと向かった。
「にいさま、おはようございます。きょうからですよね?」
「おはようセラ。そんな寂しい顔しないで。手紙も書きますから。イアンとアリスの事お願いしますね」
そう言うとエディは馬車に乗り込み邸から出て行った。馬車が見えなくなるまで見送っていた。
「いっちゃった……」
馬車が見えなくなった後も暫く佇んで居ると、後ろからイアンが走って来た。
「ねえさま、にいさまはもういってしまったのですか?」
「さきほどいってしまいました。」
「そうですか……ぼくもあいさつしたかったです。でもてがみはかいてくれるっていっていましたよね」
「えぇ、そんなにさみしくおもわなくてもだいじょうぶなんですよね……」
「ねえさまにはぼくがついてますから」
頼もしく言うイアンにセラは笑顔を向け頭を撫でた。それからは二人で居る事が増えていった。セラはいつもとは違う生活に不安を抱いていた為、イアンと共に居る事で気を紛らわせていた。しかしエディやオルフェからの手紙が毎日のように届き、贈り物も貰っていた為寂しさは減っていった。
「ねえさま!こんどのやすみににいさまがかえってきますよ」
「たのしみですね。でんかもくるそうですよ?それとがくえんのゆうじんたちも……」
「ねえさまはにいさまのともだちにあうのはいやなのですか?」
「そうではないんですが……ふあんで……わたしなんかがあってもいいのかなって……」
「もちろんですよ!ねえさまにともだちをしょうかいしたいんですよ」
そしてあっという間にエディたちが帰って来る日になった。
◇ ◇ ◇
「りょうりちょうありがとうございます」
「お嬢様のお願いなら、このステファン聞きますよ。お重に沢山詰めましたから皆さんで食べて下さいね」
「はい」
お重を料理長から受け取り玄関先まで持っていくとエディがもう着いていた。
「にいさま!」
「セラ!ただいま!それお弁当だね。私が持つよ」
「いえ、わたしがもちます。……ほかのみなさんは?」
「一度家に帰ってから来るそうだよ。先に行って待ってようか」
そう言うとエディはすぐに荷物を置いて馬車に乗り込んだ。馬車に乗り暫く進むと広い草原に出た。馬車から降りると春の花が咲き乱れていた。
「わぁ!」
「良かった綺麗に咲いているね」
初めて見る花々に見とれながら歩いた。暫く歩くと大きな桜の木の下まで来た。
「立派な桜の木ですね」
「さくら?」
「この木の花が桜と言うんだ。東部の島国の花でずっと昔友好の証として譲渡したらしい。今では何処でも見ることが出来るんだ。でもここまで立派なのは私も初めてだな」
大きな桜の木の下にシートを広げ持ってきたお弁当を置いた。桜を眺めながら、春の陽気を感じていると遠くの方から賑やかな声が聞こえてきた。
「お待たせ。セラ久しぶり」
「おひさしぶりです。いつもおてがみありがとうございます」
「こちらこそ」
久しぶりに会うオルフェだが手紙のやり取りもあり、そこまで久しぶりに感じられなかった。
「ちょっと、俺たちに紹介してくれるんじゃなかったの?」
後ろから抗議の声がが聞こえオルフェの陰から様子を窺うと男女三人が立って居た。
「私たちにも紹介して下さいな」
「そうだよ。今日はそれが目的だろ?」
他の二人もセラを紹介しろと催促した。
「うるさい。本当ならお前たちに紹介する必要なんて嫌なんだ」
「そんな事言うなよ~。俺はソルト、ソルト・キャスレイ。宜しく!」
「私はユリア・リュカス」
「僕はアヴァン・ルフル」
ソルトは燃えるような赤い髪に赤い瞳をしている。エディやオルフェよりも少し背が高い。その横に居る水色の長い髪に蒼い瞳をしたユリカとソルトより暗い赤い髪に朱色の瞳のアヴァンも続けて自己紹介をした。
「はじめまして、セラです。よろしくおねがいします」
淑女の礼をすると三人は感嘆の声を上げた。
「短期間で覚えたとは思えないくらい完璧だわ」
「ほんとうですか?」
「えぇ、侯爵令嬢の私が言うんだから間違いないわ。自信を持って。あなたはもう公爵令嬢なのだから」
「ありがとうございます」
自分とは違い本物の令嬢に認められて少し自信が付いた。




