22 これから
数日後、オルフェから手紙がきた。戸惑っているとエディが声をかけてきた。
「セラどうした?」
「にいさま……オルフェさまから、てがみがきたのですがどうすればいいのか……」
「ちっ……オルフェの奴……」
「にいさま?」
「何でも無いよ。手紙を読んで返事を書けば良いんじゃないかな」
「じょうずにかけるでしょうか……」
「上手に書かなくても良いんだよ?思った事、日常的な事を書くのも良いかもしれないね」
「やってみます」
こうしてオルフェとの文通が始まった。最初の頃は堅苦しくオルフェの質問に答えるだけだったが、何回もやり取りをしていくうちにこちらからも質問をしたり自分に起こった出来事も書くようになった。
◇ ◇ ◇
「最近楽しそうですね。殿下との手紙のやり取りは順調ですか?」
ローファスがそう言うと、セラは顔を綻ばせて笑顔で頷いた。
「はい!オルフェさまはものしりでいろんなことをしっているんです。わたしもはやくものしりになりたいです」
「そうですか」
セラの様子にローファスも笑顔になる。最近のセラは表情を良く見せるようになった。邸に来た頃は申し訳なさそうに俯いて顔が強張っていたが、今は柔らかい表情になり笑顔も見せてくれるようになった。
「セラも勉強がしたいですか?」
「えっ?」
「勉強をすれば殿下と同じ位物知りになりますよ」
自分も勉強すれば様々な事が分かるのだろうか。殿下みたいになれるのだろうか。そう思うとわくわくした。
「べんきょうしたいです」
「そうですか。実はですね七歳になると魔法学園に入学する決まりがあるんです。そこは身分を問わずに入る事が出来ます。勿論エディも春から入学予定ではあるんです」
「にいさまはそのがくえんというのにいってしまうのですか……」
「えぇ、全寮制なので邸に帰るのは休みの時だけですが……」
「そんな……にいさまにあまりあえなくなるなんて……でもやすみのひにはかえってくるのですよね」
「えぇ、エディの事ですから帰って来ると思いますよ。それに手紙を書けばエディも喜ぶと思いますよ?セラはどうしますか?陛下からは無理に学園に行かなくても良いという事でしたので、セラの気持ち次第ですね」
「わたし、しだい」
セラは少し悩んでいた。勉強はしたいがまだ大勢の居る所には行けないのでどうしようかと思った。
「春に入学する訳ではありませんし、後一年近くはあります。それまでに決めていけば良いです。大事なのはセラの気持ちです」
「……今の気持ちは学園へは行きたくありません。多くの人が居る場所は少し抵抗があります」
悲しそうな顔をするセラに優しい言葉をかける。
「大丈夫ですよ。そんな悲しい顔をしないで下さい。私はセラが自分の気持ちを言ってくれて嬉しいですよ。セラが行きたいと思えるようになったら行きましょう。私もセラが学園に行き多くの友人たちを作ってくれる事が私の喜びでもあります」
「はい」
ローファスと話をした後エディの許へと向かった。
「にいさま」
「セラ、どうした?」
「とうさまからききました。はるからがくえんにいくと……」
「セラ」
「わかっています。かならずいかなくてはならないのですよね……でもやすみのひにはかえってきますよね?てがみも……てがみもかきますのでへんじくださいね」
「勿論。セラは……学園にはあまり行きたいとは思わない?」
「はい……」
「そうか……では休みの日には殿下と共に来るね。友人も出来たら連れて来るよ。セラにも友人を作って欲しいしね」
寂しそうな顔をするセラの頭を優しく撫でた。勉強は嫌いで無いらしく毎日頑張って勉強をしていたのは知っていた。大勢の人が居る所が苦手なんだろう、一緒に居られる為には知らない人にも慣れて貰わなくてはならない。信頼出来る友人が出来たら連れて来ようと思った。
オルフェとも会ってセラは自分の気持ちを示した。話したらオルフェは何か考える素振りを見せたがすぐに笑顔を見せて頭を撫でた。それから春になるまでの間、一緒にお茶会や乗馬などを楽しんだ。
そして、また月日が流れ春がやって来た。




