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21.5 愛しきもの※オルフェ視点 (2)

「ご報告します。殿下に呪詛をかけるよう指示した者を捕らえました。もう心配はいりません」

「魔術師の方はどうなった?」

「今は老師が治療中です」

「治療?」

「はい。呪詛返しで体力が消耗し危険な状態ですので、今老師が自ら治療に当たられています」


 もっと詳しく聞くと、呪詛返しに遭ったのは幼い少女だという事だった。そんな少女が自分に呪詛をかけたとは信じられなかった。ただでさえ呪詛は扱いが難しい。一歩間違えれば自分だけでなく周りの人まで巻き添えにしてしまう事さえある。そんな危険な真似をするとは到底思えなかった。


「そうか……実際に会ってみたいものだな……」


 そう呟き、国王陛下の執務室へと向かった。




◇ ◇ ◇




「父上、入ります」


 中へ入るとアーレンが書類の整理をしていた。


「オルフェ、身体はもう大丈夫なのか?」

「大丈夫です。ご心配かけました」

「無理はするなよ。少しでも違和感があればすぐに言うんだぞ」

「はい」


 呪詛が消えた日から一週間が経ち、犯人も無事捕まったのでこうして出歩く事が許された。


「で、今日はどうしたんだ。私に何か用があるから来たのだろう?」

「はい、実は術者について教えて頂きたいと思いまして……」

「術者か……」

「お願いします」

「ふむ……まぁ、お前も当事者ではあるから聞いても問題は無いか……だが、この事は他言無用だ。話せばいくらお前でも罰しなくてはならない」

「分かりました。肝に銘じます」


 こうしてアーレンは、ぽつりぽつりとゆっくり話し始めた。一時間程で話し終えるとアーレンは他の執務の為部屋から出て行った。残されたオルフェも自分の部屋へと戻った。


「まさか、女の子だったとは……」

「そうですね……しかも呪詛返しもその者だという事にも驚きです」


 側近であるコレルもその場に居て話を聞いており、驚きを隠せないでいた。


「あぁ老師の治療も上手くいき、今は眠っているそうだが順調に回復していると聞いたし、目覚めて落ち着いてきたら会う機会を設けたい。その時は宜しく頼む」

「勿論です」


 それから彼女が目覚めたと報告があったが、老師とその助手のジェシカ以外は怯えてしまい隅の方にずっと居るという事だった。その為実際に会う事はまだまだ時間が掛かりそうだった。その後も執務に他国への訪問など忙しい日々が続いたが、数か月後経ったある日、王妃でオルフェの母であるアレーナから少女から会いたいという旨を聞き、会う時までに全ての用事を急いで終わらせた。




◇ ◇ ◇




「やっと会える」


 この日をどれだけ楽しみにしていたかロティリアガーデンでその時をアレーナと共に待って居た。その時アレーナの侍女と共にアレーナの友人のアデルその息子エディ、そしてその後ろに隠れてこちらの様子を窺っている少女がやって来た。


「アデル!待って居たわ!」

「王妃様、ご無沙汰しております」

「もう、いつも通り呼び捨てで構わないわ」

「ふふ、相変わらずね。アレーナ紹介するわね。エディには会ったことがあるわよね?この子が手紙に書いていたセラよ。セラ、この方がこの国の王妃アレーナ様よ」

「はじめまして。セラです」


 可愛らしい声で可愛らしいカーテシーを見せたセラに二人は驚きを見せた。


—–この短期間でここまでとは……それにこの俺がこんな気持ちになるとは……


「ふふ、可愛らしいカーテシーね。将来がとても楽しみだわ!これからよろしくね、セラちゃん」

「よろしくおねがいします」

「で、こっちが私の息子の」

「オルフェ・ライト・ヒュードレイン。はじめまして、セラ嬢」

「っ……はじめ……まして……」


 緊張した様子で自己紹介をした様子を見て愛しさが込み上がった。


「そんなに緊張しなくても良いよって言っても難しいか……私のことはオルフェと名前で呼んで欲しいな」

「そんな!おそれおおいです」

「私が良いって言っているんだ。是非ともセラ嬢には名前で呼んで貰いたい」

「でんか……ですが……」

「オルフェ」

「で……」

「オ・ル・フェ」

「オルフェさ、ま……」

「うん」


 自分の名前を呼んで欲しくて無理やり呼ばせると、エディにセラに近づかないように言われ注意され軽い口喧嘩になるとアレーナに注意をされた。その様子を見ていたセラは二人の様子に笑顔を見せた。それから五人でお茶会を楽しんだ。


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