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21.5 愛しきもの※オルフェ視点

 俺はオルフェ・ライト・ヒュードレイン。この国の王太子だ。セラとのお茶会が終わり母上と別れた後、足早に父上が居る執務室へと向かっていた。向かうまでの間、数か月前のことを思い出していた。


 数か月前、俺は突然の胸を訴え倒れた。近くに居た俺の側近がベッドまで急いで運んで行き魔法医療団を呼んだ。医療師はオルフェの身体を調べると慌て出した。


「これは!すぐにサラン所長と……あと老師も呼んで下さい!私では治すことが出来ません」

「どういうことだ?」

「殿下は……殿下は呪われています」

「何っ!」


 金髪で金の瞳である側近のコレル急いでサランと老師を呼びに行った。他の者も陛下と王妃に伝えるべく部屋を出て行った。数分後、先にサランと老師が部屋に入りオルフェの様子を診ていた。診察している所に陛下と王妃が来た。


「オルフェの様子は?」

「サランどうじゃ?」

「間違いありません。呪術がかけられています。それも並大抵の者ではかけられないものです」

「解けそうかの?」

「難しいですね……複雑に術が組まれており、下手に解呪しようとすると余計に殿下を苦しめてしまう恐れがあります」

「そんな……ではオルフェはずっと苦しんだままなのですか!?」


 王妃のアレーナが膝から崩れ落ち顔を覆った。それを国王陛下のアーレンはそっと肩に手を乗せた。


「父上、母上……」

「「オルフェっ!」」

「大……丈夫ですよ。すぐに良くなります」


 あまり心配をかけないよう強がりを見せるが、やはり親だからだろうか、そんな強がりも通用せずアーレンは苦笑を浮かべていた。アレーナも困った顔をしている。


「すぐに術の解明をしろ。手段は(えら)ばない。必要なものがあればすぐに揃えさせる。術者の解明も同時に行うんだ」

「了解しました」


 しかし三日経っても状況が変わることが無かった。その間にもオルフェの容体は悪くなるばかりだった。


「ぐっ……うっ……あ゛……」

「殿下!」

「だい……じょう……ぶだ……」

「老師、殿下の容体はどうなのですか」

「まずいの……このままだと、いずれ死んでしまう。呪詛の出所も解明もまだじゃ……打つ手無しかの」


 そう話している間にもオルフェの顔色は悪くなっていく。


「はっはっはっ……」

「いかん!サラン、すぐに薬の準備じゃ!」

「っ……」


 オルフェの容体が急に悪くなり、急いで処置をしようと慌ただしく動いていると異変が起きた。


「ぐっ……ぐあ……あ……」


 オルフェが胸を抑えながら苦しみ出したかと思うと、身体から黒い靄が出始めた。


「これは!」

「なんじゃ?」


 口々に驚きの声を上げ靄が立ち昇るのを見守った。暫くすると黒い靄は外へと出て行った。僅かに部屋の中に残っていた黒い靄は一か所に集まり結晶になってその場に落ちた。その様子を老師をはじめとする騎士やメイドたちが唖然と見つめる中、サランが一早く正気を取り戻しオルフェの(もと)へと駆け寄った。


「……呪詛が消えている。殿下の様子も落ち着いていますね。もう大丈夫でしょう」

「サランこれを見てみ」

「それは……さっきの結晶ですね?」

「そうじゃ」

「老師、それをこちらへ」


 その声に振り返ると長髪の金髪をなびかせ白衣を纏った女性が立って居た。


「カトレアか。なら任せたぞ」

「お任せ下さい。呪詛の元となるものが揃っているのですぐに出所が分かると思いますよ」


 そう言うとすぐに部屋から出て行った。そして今後のことを考えこの場に居る全員に箝口令を出し殿下は死んだということにした。それぞれが演技の為バタバタと部屋から出て行き、尚且つ噂も流した。噂は数日の間に城中に広まり貴族の間でも噂されるようになった。その反対にオルフェは徐々に回復していき今では起き上がれるようになった。


「オルフェ、具合はどうですか?」

「大丈夫ですよ母上」


 オルフェのことを心配し毎日のように看病に訪れていたアレーナの顔にも安堵の様子が見て取れた。


「無理はいけませんからね?具合が悪くなったらすぐに言うんですよ?」

「母上も、犯人が捕まるまでは私のことは亡き者として扱って下さいよ?」

「いくら犯人を捕まえる為とはいえ、あなたが死んだことにするのは嫌だわ……もうすぐ捕まるとは言うけれど耐えられないわ」

「なら母上も部屋に居てはどうです?私が亡くなって落ち込んでると思わせて置けば、犯人のぼろも出てくると思いますよ?」

「そうね……そうするわ……誰かと会ってしまったら、私のほうが先にぼろを出してしまいそうだから」


 そんな話をしていると慌ただしい音が聞こえてきた。


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