19 会うべき人
「殿下にですか?」
「はい。あうべきだとおもうんです」
「そんな焦らなくても大丈夫ですよ」
「でも……」
「……分かりました。アデルやエディに伝えておきます。しかし先程も言った通り、焦らなくても良いんです。でもセラの気持ちも分かるので近々会えるようにしましょう」
ローファスの言葉で少し冷静になったセラは、そのまま頷き気長にその機会を待つことにした。
◇ ◇ ◇
「セラがそんなことを……」
ローファスの話を聞いたアデルは眉を顰めた。短い間でも一緒に暮らしていてセラの気持ちを分かっていたつもりであったが、ずっとそんなことを考えていたとは思わなかった。
「セラには焦らなくても良いとは言いましたが、やはり早いうちに会っても良いと思うんです。王妃様に連絡し殿下がお会いしてくれるかどうか聞いて貰えますか?」
「分かりました」
アデルは早速、王妃のアレーナ・ライト・ヒュードレインに手紙を書き、返事を待った。するとすぐにアレーナから返事が来た。息子もずっと会いたがっていたということだった。しかし今すぐにとはいかない。王妃にも政務があり、今は各地の教会に赴いて慈善事業をしていた。王都に帰って来るのは三か月後だった。なので、アレーナが王都に戻り次第日程を組むことにした。それまでにセラの淑女教育を進めることにした。
「セラ」
「かあさま」
「殿下にお会いしたいと聞きました」
「はい」
「実は王妃様に手紙を書いて、殿下に会えるかどうか聞いてみました」
「……おうひさまに」
「そしたら殿下もお会いしたいと言っていたそうです」
「!」
「ですが今王妃様は各地の孤児院へ訪問中ですので、今すぐ会うことは出来ません」
「そう……ですか……」
「三か月です」
「えっ……」
「王妃様が王都に戻って来られるのが三か月後です。それまでに淑女教育を完璧にしましょう。完璧といっても無理の無い範囲で、ですが」
「がんばります!」
その日から淑女教育に熱が入ることになった。様々な教育がおこなわれ、セラは年相応の貴族の娘へと変貌していった。初めのうちはスムーズにいかなかった所作も綺麗に出来るようになった。
「セラ、頑張っているね」
「にいさま」
「どう?調子は」
「はい、なんとかできるようになってきました。でもまだまだです」
今おこなっていた授業は動きの所作だった。陛下への謁見の際や他の貴族の家に訪問した際の挨拶の動きなどを確認していた。ぎこちなさは残るものの最初に比べれば綺麗に出来ている。
「とても綺麗に出来ているよ。自信を持って良いよ」
「でも……まだおじぎをするときにふらふらしちゃいます」
「そんなに根を詰めては良いものは出来ないよ。少し休憩をしてからまた始めては?」
「セラ様。エディ様の仰る通りですよ。ずっと休まずに練習をしているのです。少し休憩をしましょう」
「ね?休憩しよう。エリー早速だけど、紅茶を用意して貰える?」
「かしこまりました」
エリーは笑顔でお辞儀をし、紅茶を用意する為部屋を出た。エディはその様子を確認するとセラをソファーに座らせて休憩させた。セラはソファーの上で落ち着きなくそわそわしていた。邸に来てから四か月も経つと兄妹としての仲はグッと縮まっていた。
「セラは少し頑張り過ぎ。もっと休憩を入れないと」
「でも……」
「今でも十分立派だよ。他の令嬢と大差無いよ?私が保証する。私では自信が持てないかな……」
「そんなことありません!にいさまにほめられただけでもうれしいです」
「ならちゃんと休憩をすること。約束して」
「わかりました」
セラがエディと約束をするとエリーがお茶を持って入って来た。
「お待たせしました。紅茶をお持ちしました」
「良いタイミングだね。セラはケーキ何が良いかな?」
「わたしがえらんでもいいのですか?」
「もちろん」
暫くの間、エディとセラはケーキを楽しみながら紅茶を飲んだ。それからというもの休憩の間にはエディやイアンたちと楽しんだ。もちろん紅茶だけでなくボードゲームなどの遊びもした。
そして約束の時が訪れる。




