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18 謝罪

 セラはローファスと共に国王陛下の執務室の前に居た。非公式の為、謁見の間で会うことは控えて貰った。緊張しているセラに対して頭を撫で気持ちを落ち着かせた。


「陛下、ローファスです」

「入れ」

「失礼致します」


 短い会話で執務室へと入ると窓際の中央に陛下が座っていた。


「すまないな。そこに座って少し待っていてくれ」


 忙しいのか、テーブルの上に積まれた書類を片付けている様子だった。ローファスは「分かりました」と返事をすると、部屋の中央にある長椅子にセラと共に座った。待っていると侍女が入って来て、紅茶とお菓子を置いた。セラが好きだと言っていたミルクティーにキャラメルを混ぜた甘い紅茶を出してくれた。


「ありがとうございます」


 侍女が優しく笑うと部屋から出て行った。紅茶はぬるま湯でセラにも飲めるよう配慮されていた。お菓子と紅茶を楽しんでいると、ようやく仕事が一段落したのか、執務机から立ちこちらへ向かってき来た。改めて椅子から立ち上がって陛下に向き直った。


「来て貰ってすまないな」

「本当ですよ。早く終わらせて下さい」

「お前は私を何だと思っているんだ」

「この国の王でいつも逃げ出す迷惑な人」

「お前ははっきり言いすぎだ。その通りだがな」

「きちんとして下さいよ」


 王様に対してそんな態度をして良いのかとハラハラしていたが、いつもそんなやり取りをしているのか、二人とも気にした様子は無かった。


「どうした?あぁ……君は何も知らなかったな。私とローファスは幼馴染でな。何でも言い合える仲なんだ。私の数少ない友人であり、心を許せる相手でもある。まぁ人前ではこんな態度は取らんがな」

「当たり前です。人前でする訳が無いでしょう」


 二人は本当に友人なんだろう。仲がとても良さそうだった。


「では改めて、私がこの国の国王をしておるアーレン・ライト・ヒュードレインだ」


 アーレンが挨拶をするとセラは深々と頭を下げた。


「セラです。おうたいしでんかにじゅそをかけてすみませんでした。いかなるばつも、うけいれます」


 国王であるアーレンに呼び出されたことでセラは覚悟をしていた。どんな事情であれ罪は罪だからだ。覚悟を持って臨んでいた。その様子を見守っていたアーレンは「ふむ」と顔に手を当て考える素振りを見せた。


「そうだな」


 アーレンにそう言われ、身体が強張る。しかし次の言葉を聞いた瞬間、驚きに目を見開いた。


「お咎めなしだな」

「えっ……」

「君に罰は与えない。確かに呪詛を我が息子にかけられたがお前はそれを助けてくれた。それだけでも十分功績と言える」

「ダメです!でんかをたすけるためとはいえ、くるしませてしまいました!それだけでも、」

「なら、こうしよう。君は私の管轄に置く。貴族は七歳になると魔法学院に入学が決められている。そこに入学すること。そして、君が犯してきた罪を人の為に今度は使って欲しい。それが君への罰だ」


 アーレンが話し終えるとセラは驚きを隠せなかった。罰を罰とも言えないもので良いのかと思っていると、ローファスがセラの頭を撫で微笑んだ。まだ戸惑いはあるものの、これで良いのだと無理矢理納得した。


「……わかりました」

「納得するには時間がかかるでしょうが、陛下がこう言っているんです。これからは人の為に魔術を使っていきましょう」

「はい」

「セラ、次は私の息子も連れて来るからその時は納得するまで言い合えば良いさ。ローファスの息子と私の息子は仲が良い。良い仲介役としても期待しているよ」

「陛下……まだ子供に対して何を言っているんですか」

「良いじゃないか。子供は子供同士で解決したほうが良い」

「まったく……」


 呆れながらローファスはアーレンに向けて言うと深いお辞儀をし、セラの手を引いて部屋を出ようとした。手を引かれたセラはローファスの手を一度離して、アーレンに向けてお辞儀をすると再びローファスの手を取った。それを確認したローファスは今度こそ部屋を出た。




◇ ◇ ◇




「疲れたでしょう。今日はこのまま帰りましょう」

「だいじょうぶです。あの……」

「どうしました?」

「にいさまが、でんかとなかがいいってほんとですか?」

「えぇ。私と陛下もそうなのですが、妻と王妃も仲が良くてその関係で子供たちも仲良くして貰っているんです」

「……あうことってできますか?」

「えっ?」

「でんかと……」


 セラは真剣な表情でローファスに話しかけた。


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