17 謁見
まだ頭がぼうっとする中、目が覚めた。周りを見渡すと、近くに水差しが置いてあったのでコップに注いで飲んだ。飲み終えると扉を開く音がした。
「セラちゃん、起きてたのね!良かった!気分はどう?」
ジェシカが果物を持って部屋に入って来た。
「あぁ……うぅ……」
「うーん……声が出ないか。ちょっと喉見せてね。……あぁ、喉がやっぱり腫れているわね。暫くはお話ししちゃダメよ。余計喉が腫れちゃうから……安静にね」
「う……あ……」
喉が痛いのか苦しそうに顔を顰めた。そんなセラの様子を見てジェシカは早く治るように願った。ジェシカが剝いた果物を食べていると、その数分後アトスたちも入って来て、セラの体調を確認し邸に戻ることを許された。
「嬢ちゃん。帰る前に確認したいことがあるんだが良いか?」
トレアはセラに問い掛けるとセラはこくんと頷いた。
「喋れないとこ悪いな。首輪のことでちょっと聞きたいんだが、もしかして一度首輪を替えられたんじゃないか?」
セラは過去を思い出すように首を傾げると、何か思い出したように書く素振りを見せた。すぐに書くものを出してセラに渡すと、ゆっくりと書き始めた。書き終わるとトレアに渡した。そこに書かれたものは、予想通り首輪を替えられていたことが書かれていた。但し一つ違っていたことは、一度ではなく何度も替えられたことだった。このことからセラを実験体にして、奴隷の首輪を作成していた可能性があることが分かった。
「なるほど、分かった。嬢ちゃんありがとな。これでもっと情報が得られる。嬢ちゃんのおかげだ。喉早く治ると良いな、またな嬢ちゃん」
そう言うとトレアは訓練場へと向かって行った。
「では行きましょうか」
「ローファス、明日セラを連れてもう一度来ておくれ。今日安静にしておれば、治っとるとは思うが、一応診せに来ておくれ」
「分かりました。セラ、ほんの少しだけ我慢ですよ」
セラはこくんと頷き邸へと戻った。
◇ ◇ ◇
次の日、アトスの下を訪ねセラの状態を確認して貰うと体調は戻っているということだった。
「セラ声を出しても大丈夫じゃ。どうじゃ調子のほうは」
「……えーっと、まだちょっと喉が痛いです」
「ふむ……ちょっと喉を診せて貰うぞ。あーまだ喉が腫れとるの……じゃが、少し喋る分には問題無いの。どれ治療をするから少し触るの」
そう言うと、早速セラの喉の部分に手を当て魔力を込めた。セラはその手からじんわりと温かくなるのを感じながらじっとしていた。治療が終わると喉の痛みは消えていた。凄いなと思いながら喉を触っていると知らない人物が入って来た。
「失礼します。少しお時間良いでしょうか」
「何じゃ?」
「陛下がセラ様の体調がよろしければお会いしたいと……」
「駄目です」
「……とうさま?」
間髪入れずに返答したローファスに対して心配そうに窺うと優しい笑顔でセラの頭を撫でた。
「体調は大丈夫ですが急な話です。会うのは構いませんが、今日は駄目です。折角体調が良くなったところに陛下に会うのは酷な話です。日を改めて会いに行きますのでお引き取り下さい」
男性は顔を顰め、その後苦笑いをしながら答えた。
「……陛下も『絶対あいつは今日会ってくれないだろうから、その場で日取りを決めてこい』と仰っていました」
「全くあの人は……分かりました。では来週のこの時間でよろしいですか?」
「大丈夫です。陛下にその時間、空けておくように致します」
予定が決まった所でその人は出て行った。勝手に話を進めてしまったことに、申し訳なかったのかローファスは困った顔をしてセラに向き直った。
「勝手に決めてしまいすみません。話をしていた通り来週陛下に会いに行くことになります」
「だいじょうぶです。いつかあわないといけないとおもっていたので……」
「そんな緊張せんでも大丈夫じゃよ。陛下はそんな悪い人でもないしの」
そして一週間経ち、陛下への謁見を迎えた。




