2 呪詛
シリアス展開続きます
「ころす?」
マカロフの言葉にセラは驚いた。今までは呪具や横領などの証拠の隠滅、人の記憶操作など様々な事をしてきた。間接的にだが人を殺した事もある。だが直接殺せという指示は今回が初めてだった。
「そうだ、目障りな奴がいる。そいつを殺してもらう。死んだらこちらが利益をもたらしてくれるからな」
そう言うとマカロフは、ポケットから写真を取り出した。そこに写っていたのはとても綺麗な男の子だった。目は鮮やかで吸い込まれそうな青。髪は金色で日に反射しているのかとてもキラキラしていて眩しかった。
「なぜころすのですか?」
「お前が知る必要のない事だ。お前はただ俺の命令に従っていれば良い」
セラはそのまま黙って俯いた。マカロフの願いを叶えればここから出られる。だけど写真に写っている男の子を殺すのは嫌だと思った。
「……どうやってころすのですか?まほうぐですか?それともまじゅつでですか?」
「魔術だ。だが、ただ殺してしまったら足がつくからな。呪詛をこいつにかけてもらう。じわじわと体力を衰えさせて衰弱死が妥当だな。殺せるだろう?これくらい」
「……はい」
呪詛とは魔術における難易度が高い部類に入る術だ。失敗すれば我が身に返り呪詛を跳ね返される恐れもある為、滅多な事では魔術師は呪詛をおこなわない。難易度が理由だけでなく、その術者のリスクの方が大きいからだ。
「じゃあ早く術をおこなえ。失敗は許されないからな。終わったら呼べ。俺はこの部屋の外にいる。終わるまで出られないと思え」
バタン
マカロフが出て行くとセラはどうしようかと考えた。この美しい少年を救う方法はないか、自分が今殺す事が出来なくても、他の者に頼んでしまうかもしれない。そうなると結局死んでしまう。
暫く考えたのち、漸く結論を出した。
「どうせ、しんでしまうなら……しんでしまうなら、このおとこのこのためにしにたいな……」
そう呟くと扉まで近づき近くにいるマカロフに話しかける。
「あの……」
「なんだ?終わったのか?」
「まだ……です……」
「何だと?話しかける暇があったら、さっさと終わらせろ!」
「ざ……ざいりょうがないとできないです……」
「あっ?ちっ、仕方ないな……分かった。取りに行くぞ」
部屋から出して貰うと材料がある部屋へと向かった。この部屋はマカロフが集めた希少な材料が保管されていた。
「揃ったら、すぐに戻るぞ」
材料を揃えるのを手伝う気のないマカロフは部屋の入口の扉にもたれ掛かった。セラは丁寧に一つ一つ籠の中に入れていった。
「あの……」
「何だ?終わったのか?」
「まだです……あの……あとひとつ……あのおとこのこの、なにか……みにつけているものとかありませんか?あとそれだけですので……」
おどおどしながらも、マカロフに尋ねると「ふむ」といった様子で手に顎を添えて考えていた。
「それが必要なのか?」
「はい……ないとできません……」
暫く考えていたマカロフだったが、仕方ないといった様子で口を開いた。
「分かった。だが今すぐにはない。これから行って来るから、お前はあの部屋へ戻れ。準備くらいは出来るだろう?俺が戻るまでの間、準備を終わらせておけ。逃げようとも思うなよ」
そう言いながらまた腕をひかれ元の部屋へと連れて行かれた。部屋に着くとマカロフは影からカラスを出した。カラスは傍にある椅子の所に止まり、私を赤い目で見ていた。カラスを出したあとマカロフは出て行った。セラはすぐに呪詛をかけられる準備をした。
カエルの卵、トカゲの尻尾、牛や羊の腸に、狼の牙、ドラゴンの爪など持ってきた材料を乳鉢で混ぜ合わせる。粉末状になったらそこに動物の血を少しずつ入れさらに混ぜ合わせる。とろとろになるまで混ぜ続ける。とろとろになったら瓶に入れ、闇属性の魔力を込める。瓶の中が混り気のない透明な色に変わったら出来上がりだ。
「できた」
あとはマカロフが戻ればすぐにでも始められる状態だ。「ギャーギャー」とマカロフが出したカラスが鳴き始めた。戻って来たのだろうか?マカロフに気づかれない様にアレをおこなうには大変な事だがやってみなくては分からない。
ガチャ
「出来ているな。これが殺す奴の物だ。失敗はするなよ」
渡されたのは白いハンカチだった。ハンカチを渡すとマカロフはすぐに部屋から出て行った。いつの間にかカラスもいなくなっていた。渡されたハンカチをよく見るとR・Dと刺繍がされている。
「たすかるといいな」
そんな思いを込めながら魔方陣を展開した。