12 散策
門を潜り抜けると素晴らしい薔薇が咲き乱れていた。ロティリアガーデンは魔法で空間一帯が、気温も一定に保たれており四季折々の花々が咲いていた。
「すごくきれい!」
「ここは普段は限られた人しか入ることが出来ないのですがセラはいつでも入ることが出来ますよ」
「いつでも?」
「ええ、昼間ならいつでも入ることが出来ます。このペンダントをあげますね。セラが認めた付き添いの一人まで入ることが出来ます。今回はセラの保護者として私が付き添いという形ですね」
「またきてもいいですか?」
「構いませんよ」
暫らく二人で薔薇の庭園を歩いて回った。赤や黄色に白様々な種類の薔薇はセラを楽しませた。暫く薔薇のアーチがあるところを歩いていると人が蹲っていた。
「なにをしているのですか?」
セラが声をかけたことに驚いたのだろう顔を勢いよく顔を上げ、目を見開いた。
「うん?見りゃ分かるだろ薔薇の手入れをしてんだ」
「どうして、ていれしているのですか?」
「はっ?」
「あっ……とつぜんごめんなさい。わたしセラといいます。あの……すわってなにしているのかと、おもいましたので……」
最初は驚いていた庭師だったが、いつも来る貴族とは違うと思ったのか今度は丁寧に答えた。
「たまに手入れしねぇと、この庭は駄目になっちまうんだ。だから俺たち庭師がこうして手入れをして、綺麗に花が咲くように保ってんだ。おっと名前を言ってなかった。俺はここの庭を任されているディラン・ガランってんだ。ん?お前さんは宰相様じゃねぇか何でこんなとこに……」
「昨日セラと家族になりまして、今は城の中を回っているところなんです。ディランさんは相変わらずですね」
「そうか……噂の子はこの子かい。なるほどな。この嬢ちゃんならいつでも歓迎だ」
ディランはセラににこっと笑いかけると庭の手入れの仕方を教えた。またここへ来て手伝いをする約束もした。
「そろそろ行きましょうか。老師の下に行こうと思うのですがどうですか?」
「アトスさまにあえるんですか?ジェシカさまにも?」
「会えますよ。では行きましょうか」
「あぁ待ってくれ。アトスに会うなら持っていって貰いたいものがある」
そう言うと急いで何処かに向かうと小さな瓶を数本入れた籠を渡した。
「後で向かおうと思っていたんだが丁度良い。持っていってくれ。嬢ちゃん、お使い頼まれてくれるか?」
「わかりました。なかみはなんですか?」
「すまんな。それは教えられん。まぁアトスに俺からだって言えば分かるから。じゃ頼んだぞ」
一体どんなものなのかセラはわくわくしたが、アトスに会えばそれが分かるかもと思い先を急ぐことにした。
「またてつだいにきます」
「あぁ、お前さんならいつでも歓迎だ」
来た道を戻り、門を通ると先程とは違う衛兵が立って居た。衛兵がこちらに向かって、にこっと笑ったのでセラも笑顔で返し挨拶もした。たった一日だけだが、人と多く接したことでセラの戸惑いも無くなっていた。城内へと入りアトスが居る部屋へと向かう。部屋の前まで来ると病室とは違う場所だった。扉を叩くと中から返事があった。
「失礼します。老師、セラを連れて来ました」
「おぉ、セラ。昨日は良く寝れたかの?」
「はい!」
「ほほ、顔色も良いの。辛くなったらすぐにローファスに言うんじゃぞ」
「はい」
「どれ少しローファスと話すことがあるから、ジェシカとチェスでもしておいてくれ」
そう言うとジェシカを呼び部屋の隣へと向かった。先ほどの部屋よりも小さく仮眠が出来るようにベッドが置いてあった。部屋の中心に小さいテーブルがありそこにチェス盤を置いた。早速ジェシカとチェスで勝負をする。
「まだ一日しか経ってないけど、宰相様の邸はどうだった?」
「みなさんとてもいいひとたちばかりでした。おいしいしょくじもいただきました」
「そっか、良かった。ちょっと心配だったの」
チェスの駒を並べ終え勝負を始める。駒を進めながら話をする。主にこの国のことを中心に聞いていき、セラは知識を深めていった。暫くしてからアトスとローファスが部屋に入って来た。二人もチェス盤を覗き込み勝負の行方を見守った。
「まけちゃった……」
残念そうに顔をしかめたセラにアトスが話しかけた。
「いやいや負けてしまったがな、良い勝負だったと思うぞ?力の差は殆どないからの。次はセラが勝つと思うぞ」
「ちょっ!老師!私そんな弱くないです!」
「セラは才能あるからの。もうお主と殆ど同じ強さじゃぞ?もっと強くなりたいなら、もうちぃっと考えて駒を動かすことじゃな。お前はいつも勘で動かすことがあるからの。分りやすいんじゃ」
「ぐぐぐ……」
ジェシカが悔しそうに老師を睨み付けた後、今度はセラに向けて笑顔を向けた。
「次も私が勝つからね。まだまだ私には勝てないわよ」
「つぎはかてるようにします」
楽しそうに次もチェスをする約束をした。




