10.5 救いたいもの※ローファス視点(6)
セラを先に自室に向かわせた後アデルが口を開いた。
「無事に着いて良かったわ。問題はありませんでしたか?」
「えぇ問題は無いのですが、やはりまだ緊張は解けないですね……一緒に居ればだんだんと慣れてくれるとは思うのですが……」
「そうですわね……私たちに気を使いすぎて体調を崩さなければ良いのですが……エディ、イアン、今の話聞いていましたね?無理に誘ってはいけませんよ。セラの意思が優先です。分りましたね?」
「「はい!」」
「それでは私たちも準備をしましょうか。いつもより少し時間を遅らせますよ。時間がかかるでしょうから」
そう言うとそれぞれ着替える為に自室へと向かった。
◇ ◇ ◇
食堂で暫く待っているとセラが薄いピンク色のドレスを着て入って来た。
「セラ。そのドレスとっても似合っていますよ。アデルに頼んで正解でしたね。私の隣に来て下さい。今日はセラの為に料理人が腕によりをかけて作ったそうです。きっと気に入りますよ」
自分の隣へと促し座らせた。セラが座るとすぐに料理が運ばれてきた。
「セラ様、どうぞお召し上がり下さい」
料理人が自ら配膳をすると、セラは目を輝かせて運ばれてきた料理を見ていた。我が家の料理人は自らの料理に誇りを持っている為、他家では使用人に配膳を任せるところ料理人自ら配膳までをおこなう。
「セラ。今日はマナーを気にせず食べなさい。これはフォークと言ってこうして刺して食べるんですよ。これからゆっくりマナーを覚えていけば良いですよ。今日のところは使ったことのあるフォークとスプーンだけで良いですよ」
「はっ……はい!」
気にしているだろうマナーのことを、気にせずに食べられるように好きなように食べさせることにした。セラは嬉しそうに食べ始めた。とても美味しいのだろう食べている間ずっと笑顔だった。この日の料理はセラの為に作られた。まだ回復したばかりでずっとお粥しか食べてこなかったセラに対して、いつも私たちが食べている食事では重すぎるということだった。老師に相談し、料理長とずっと滋養があり尚且つ、お腹に優しいものが良いとずっと議論していた。綿密に練られたメニューは成功した。沢山食べたせいかセラがウトウトし始めた。それに気づくとセラを抱き抱えた。
「旦那様……私が……」
「いや、大丈夫だ。後は頼む。セラ部屋に行きましょうか。今日は色々ありましたからね」
「セラ、おやすみなさい。また、明日」
「ねえさま、あしたいっぱいあそびましょうね!」
「おやすみなさい……」
家族への挨拶を終えたセラは身体をローファスへと預けた。信頼してくれていることに嬉しさが込み上げる。
「今日は楽しかったですか?」
「はい……」
「明日もありますから、今日はゆっくり休んで下さい」
部屋にはすでにエリーがおり、セラが寝る準備を進めていた。寝る前にセラに浄化魔法をかける。本来ならお風呂に入って貰いたいが老師の許しが出ていないので、代わりに魔法で清潔にしてあげる。その後エリーに任せて部屋を出た。部屋を出るとアデルが扉の前で待って居た。
「ローファス様、少しよろしいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。私の執務室へ行きましょうか」
執務室へ向かうとサミュエルに紅茶を出して貰った。アデルが紅茶を一口飲み一息ついた。
「セラのことだったのですが……大丈夫だったでしょうか……私たちの接し方はどこかいけないところがあったでしょうか」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。セラも落ち着いていましたし、受け入れてくれていると思いますよ」
「それなら良いのですが……」
「それと暫くの間、セラも一緒に私と城へ行きます。まだ慣れていないので、邸にずっと居させるとストレスが溜まってしまうというのもありますが、体調がまだ万全ではないので老師のもとに通うというのが一番の理由ですね」
「ではあまり一緒に居られないのですね……」
「そんなことありませんよ?午後には帰って来ますので。陛下にも許しは得ています」
「本当ですか!では色々と準備をしないといけませんね」
アデルが嬉しそうに話し計画を練っているようだった。そのまま部屋を出るアデルを見送ると自分も明日のことについて考える。セラの負担が心配であったが今日の様子を見る限りは大丈夫かと思った。後は明日にならないと分からない。期待と不安を抱きながら明日へと胸を膨らませた。




