10.5 救いたいもの※ローファス視点(5)
「はぁ……例の子です。見ないで下さい。減るので」
「あぁその子かって、ひどくねーか!見るなって!」
「大きな声を出さないで下さい。セラが怖がっているでしょう。詳しい話は後できちんと話しますので、今は通して下さい」
「おっおう、分かった……」
不機嫌さを露わにしながらチェスターと別れると心配そうにもう良いのか聞いてきた。本当に優しい子だと思いながら、外へ出るとセラは感嘆の声を上げた。外の景色を楽しむようにキョロキョロと辺りを見渡していた。馬車の前に着くとセラを一旦下ろし先に馬車へと乗った。御者に抱えられたセラを受け取り、馬車の中の椅子に座るとその上にセラを乗せた。緊張した様子だったがすぐに安心したようだ。ガタゴトと進む馬車の窓からセラはずっと眺めていた。城下町の景色を見たセラは人の多さに驚いていた。生活に慣れてきたら連れて来てあげようと決めた。
馬車の中では様々な話をした。これからのこと、家族のことなどを話してあげた。真剣に話を聞き自分たちを受け入れようとしてくれているセラに微笑ましく思った。沢山のことを話していると、景色は変わり邸へと近づいて行った。
「ここが今日からあなたが住む家です。行きましょうか」
先に馬車から降りてセラを抱き抱えて降ろすとお礼を言われた。しかも先ほど養父様と呼んでくれるように言ったのを実行してくれている。これほど嬉しいことはない。
手を繋いで邸の中へ入ると使用人たちが出迎えて居た。二人が前に立ち後ろに残りの使用人が立って居た。
「お帰りなさいませ、旦那様。傍に居るお嬢様がセラ様ですか?」
「ええ。セラ、挨拶を」
「はっはじめまして……えっと、セラです。あのよろしくおねがいします」
緊張した面持ちで挨拶したセラに笑顔でお辞儀をする。
「よろしくお願いします。私はサミュエル・エトーと申します。こちらはエリー・ルトール。セラ様の侍女としてお傍に仕えさせて頂きます」
「エリー・ルトールです。セラ様、これからよろしくお願いします」
使用人との挨拶を済ませていると2階から賑やかな声が聞こえてきた。
「父上!お帰りなさい!その子が父上の言っていたセラですか!?」
「おかえりなさい!そのこがねえさまになるひとですか!?」
階段から勢い良く降りて来て、突然現れた二人に驚きセラは自分の後ろへと隠れてしまった。
「お前たち、セラが怖がっています。静かに来るように伝えたはずですよ」
「すみません父上……」
「ごめんなさい……」
二人が謝るとセラが陰からひょっこり顔を出した。
「おどろいてごめんなさい……セラです。あの……よろしくおねがいします」
「私のほうこそ驚かせてしまいすみません。私はエディー・ノルディス。これは私の弟のイアン・ノルディスです」
「イアンです。セラねえさま」
自分のことを見上げて様子を窺ってきたので笑顔を向けてあげると少し表情が和らいだようだ。子供たちと話をしていると使用人を連れて二階から妻のアデルが降りて来た。セラの傍まで来て膝をついて目線を合わせた。
「初めまして。ローファスの妻のアデルといいます。これからよろしくお願いしますね」
「あの……えっと……こちらこそよろしくおねがいします」
「ふふ、私のことも義母様と呼んで欲しいわ」
「はっはい。かあさま」
「あ~もうかわいいわ~!この歳の子が欲しかったのよ。ここには今いないけど一歳の娘のアリスも居るのよ。これから仲良くしてあげてね」
沢山の人に囲まれて居たせいか、少し困惑している様子だったが、少し慣れてきたのかセラの表情が柔らかくなった。それを見計らって次に進むことにした。
「では食事にしましょうか」
そう言うとセラを自室へと向かわせて準備を進めて貰った。




