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10.5 救いたいもの※ローファス視点(4)

「てい……あん?」


 不安そうに尋ねるセラにジェシカが助けるように言葉をつづけた。


「セラちゃんのこれからのことですよね?提案って何ですか?」


 そう言われセラに近づきセラの目線に合わせ腰を下ろした。


「提案というのはですね、私と家族になりませんか?」

「あら!」

「か……ぞく?」

「はい」


 笑顔でそう答えると途端にセラは戸惑いを見せた。明らかに自分を卑下にするような感じが見受けられた。


「でも、わたしとかぞくになったって……なにもできませんし……どれいでしたし……」

「君は奴隷ではありません。奴隷制度は数百年前に廃止されているんです。もし君を買ったマカロフのように奴隷をもっていたなら、重い刑を科せられるのですよ」


 そう説明しても実感が湧かないようだった。


「でも……」


 と渋るセラにこうなる可能性を感じていた為別な提案もしてみた。


「なら一週間お試しという形でどうですか?」

「おためし?」

「ええ、お試しです。それで嫌であれば、私たちと家族になるのを止めて頂いて大丈夫です。ですが私だけじゃなく私の家族も楽しみにしているんですよ?どうですか?お試し期間ということで私たちと家族になってみませんか?」

「いい……んですか?」

「もちろんですよ。私はセラと共に一緒に居たいです」


 優しく諭すように微笑みながら言うとセラはポロポロと涙を流していた。


「セラ。泣きたいときは思い切り泣いて良いんですよ……」

「えっ……?」


 涙を流していたことに気づいていなかったのだろう。自分が涙を流していたことに気づくと声を抑えながらも泣き始めた。セラの頭を抱え込むように抱きしめた。身じろかれたが、それ以上に強く抱きしめ背中をあやすように叩くと、ローファスの袖を掴み今度は思い切り大声で泣いた。暫くして落ち着きを取り戻したセラは涙を拭いてローファスに向き直った。


「ほんとにいいんですか?」

「もちろん」

「ローファス……少し焦りすぎじゃぞ……セラ、そんなに慌てなくて良いんじゃぞ?無理に家族にならんでも、ここにずっと居ても良いんじゃ」


 老師が余計なことを言ったせいでセラが考え込んでしまった。セラの気持ちを優先するつもりはあるが諦めるつもりはなかった。セラは少し考えたのち家族になりたいと言ってくれた。一応期間限定の家族ではあるがずっと一緒に居たいと思えるようにしたいと思っている。老師の勧めでセラの気持ちを整理する時間が必要ということで三日後迎えに来ることになった。


「では三日後に迎えに来ますね。それまで老師たちと話をすれば良いですよ」


 そう言うと病室を後にした。セラはまだ不安そうにするものの一歩踏み出そうとする勇気が見受けられた。セラと共に一緒に暮らしていけるのも時間の問題だと思った。無意識に頬を緩ませながら自分の邸へと足を進めた。




◇ ◇ ◇




 三日後、迎えに行くとセラはチェスを楽しんでいた。楽しそうに老師と打っていたので終わるまで待っていた。結果はセラの負けだった。無理もない老師はチェスの名手と言われるほど腕が立っていた。悔しそうに話す様子にここをまだ離れたくはないのではと思った。


「セラ……今日迎えに行くと言いましたが、止めても大丈夫ですよ?」

「だいじょうぶです……いきます……」


 大丈夫と答えてくれてとても嬉しく思った。セラの手を引き扉を出る。扉が閉まるまで老師たちに手を振っていたので待っていた。手を振るのを止めたセラはキョロキョロと見渡すと目を輝かせて嬉しそうにしていた。


「それでは行きましょうか」


 声をかけてセラの手を引いて歩いていると、不意に裾を引かれたのを感じセラを見ると体を縮こませていた。さっきまで嬉しそうにしていた顔から血の気が引いていた。周りを見渡すとメイドや騎士たち、さらには登城している貴族たちがこちらを見ていた。それに気づくとすぐに空間から小さいローブを取り出すとセラに被せた。セラにローブを被せると抱き上げてそのまま廊下を歩いた。しかし人の目がまだ気になるのか、自分の胸に頭を押し付けて震えていた。急いで馬車まで向かおうとした時、前から声をかけられた。


「ローファスじゃないか!こんな所で何してんだ?」


 そこに居たのは第二魔法騎士団団長のチェスターだった。


「チェスター……あなたこそ何しているんですか。今は勤務中だったと思うのですが……」

「アランに用事があって、その帰りだったんだがな。そしたら前からお前が歩いて来るのが見えて珍しいと思って話しかけたんだが……そのフードの子は何だ?」


 興味が自分が抱えていたセラに向き苛立った。

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