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10.5 救いたいもの※ローファス視点(2)

 一週間後、少女が目を覚ましたと報告があった。目覚めた直後、自分が何故助けられたのか戸惑いを見せていたという。自分が裁かれることに覚悟をしていたのだ。だが、この一週間の間に協議し少女に罪は無いという結論に至った。中には異論を唱える者もいたが少女がおこなっていた罪は罪とは呼べるものではなかった。


 例えば呪具。呪具にも様々な種類があるが、国から作ることを認められなければ、作ってはいけないことになっている。違法に作った者は、作ったことが分からないように隠蔽の魔法をかけられているが、少女が作ったものはそれがかけられておらず逆に誰が作ったか、どこから売られているかさえ分かるようにされていた。


 また、突然死んだ男たちが居たがその者たちは貴族の顔に変えられており調べてみると、密輸集団だったり闇オークションを束ねるものだったりと犯罪を犯した者たちが殺されていた。一方で死んでいた男たちの変えられていた顔の貴族たちは領地で静かに目立たずに暮らしていた。話を聞くと誰だか知らないが命を狙われていると教えて貰ったそうだ。暫くの間、隠れて暮らすように助言を受け、半信半疑だったがその後すぐに自分の顔をした人物が死んだと聞かされ驚いたと口々に言った。その為、本当の犯人が捕まるまでの間静かに暮らしていたそうだ。


 自分が裁かれ死んでしまう可能性があったのにも係わらず、そのことを我々に伝えてきたことは評価すべきだと、異論を唱えてきた貴族全てを黙らせた。


 その中で誰がこの少女を保護するか悩ませた。本来なら少女は孤児である為、孤児院や修道院にある年齢まで入れられるが、少女の場合、魔力が強く武術にも優れていると分かった為、また利用されない為に貴族の誰かが保護することになったのだ。


「誰が保護します?」

「私が!」

「いえ、私が保護します!」

「あなたじゃ無理だ!私が!」


 ローファスが聞くと誰もが少女を保護すると言ってきた。明らかに利用しようとする考えが目に見えて分かったので不快に感じた。それは陛下も同じだったらしく顔を顰めていた。


「これでは埒が明かない。ローファス、お前が保護しろ。お前なら信用出来る」


 大臣や他の貴族たちはそれを聞き渋い顔をした。先ほどの行動で陛下に信用はしていないと言われたようなものだからだ。貴族たちが頭を下げて項垂れている間にローファスは応えた。


「分かりました。しかし私にも家族が居りますので説明をして了解を得られたら改めてお受けします」

「良い返事を期待している」

「はい」


 結論が出たことでその日の会議は終了した。みな肩を落としながら次々に部屋から出て行った。


「お前に任せてしまって悪いな」


 自分も部屋から出て行こうとした時陛下がポツリと言った。一旦足を止め、陛下に向き直る。


「平気ですよ。あなたの無茶ぶりは今に始まったことでは無いでしょう。それに利用しようと目論む奴らばかりで不快でしたからね。そんな人たちに預けるくらいなら私が保護しますよ。ですが、良いのですか?あの者たちに否定的なことを言って」

「構わないさ。あいつらもこれで自分の立場を分かっただろうさ。しかし、お前がそんなに感情を表すなんて珍しいな」

「失礼ですね。私だって怒ることくらいあります」

「今のお前を見たら、他の者は驚くであろうな」


 陛下がクククと笑いながら言った。その様子に呆れながら部屋から出て行った。




◇ ◇ ◇




 邸に戻ると妻と子供たちに出迎えられた。


「父上、お帰りなさい」

「おかえりなさい」

「ただいま帰りました。しっかりと勉強はしていましたか?」

「「はい!」」

「ローファス様、お帰りなさい。あら?良いことでもあったのですか?」


 アデルの言葉に一瞬驚いた後フッと笑った。


「さすがアデルですね。夕食の後、話があるので私の部屋に来て貰えますか?エディ、イアン。二人にも関係ある話です」


 三人は不思議そうに顔を見合わせた。


「お話ですか?それに子供たちまで……」

「えぇ、大事な話ですので必ず来て下さい」

「分かりました。あなたたちも良いですね?」

「「はい」」


 そして夕食を食べる為に食堂へと向かった。

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