8話 会議
会議が始まった。
どんな事をするのだろうと思っていると食事をレレが運んできた。
「はい、リュウクくんのご飯ですよ。」
「おお!ありがとう。」
今日のお昼は鮭みたいな魚の塩焼きとゲルスープ(レレ達の故郷の伝統の食べ物らしい)と惣菜がその他諸々だ。
あ、いや、そんなことはどうでもよかった。
「なぁ、会議って……」
「では、今から会議を始めます。」
俺の声を遮るようにヘルターが会議の開始を宣言する。
「議題はもう分かりますね?ララ様、議題をお願いします。」
「まず、グレルーチ団に何故この場所が分かったのか。
それも、屋敷には隠密魔法がかかっているのに攻めてこれた理由も。」
「その、隠密魔法がかかってるのは普通見えないのか?」
「隠密魔法がかけてあれば普通は透明化して見えないはずなの。
この屋敷の場合見えるのはレミア様が許可した人だけのはずよ。」
「つまり屋敷がここにあるとはっきりした自信を持った上で来たわけかきたわけか…」
自信がなければ見えない門を蹴飛ばして、大声を張りあげることもない。
「そういえば、レミアはレレ達がクーダと戦ってる間どうしてたんだ?」
「私が嫌な予感を感じた時は大抵当たるから地下の異次元室にこもらされていたのよ。」
そうレミアが不満そうに言った。
まぁ、確かにレミアは外にいない方が安全だ。
と、なると……
「じゃあ、ヘルターはどこ行ってたんだよ?」
「私はレミア様の部屋の前で警備をしておりました。」
「レミアは異次元室って、とこで守られてたんだろ?
こっちは状況的にキツかったんだから、戦いに参加してくれても良かったと思うんだが……」
「そもそも、僕はそこまで強くないから参加した所であまり意味のないことだったと思いますよ。」
「え?この国で1位、2位、とか言ってなかったか?」
「魔法無しの剣術大会で優勝した事はあるけれど相手に魔法を使われたら……そこまで期待出来ないですね……」
「? ヘルターも魔法を使えば……」
そこまで言って気がついた。
まさか、ヘルターは……
「僕は無属性です。」
「ええぇぇぇ!!!!!!」
これには驚いた。
女王の騎士が無属性だぞ?
流石に頼りなさすぎなのでは……
「ヘルターはもし魔法が使えたら歴史上最強の騎士になっただろうにと惜しまれるほど剣の腕が凄いの。」
「なるほど……」
突然入ったレミアの説明に驚きつつ、その説明を受けて納得するリュウク。
「それで、話が脱線しましたが……何故ここが分かったのかが、分からないと今後ここも安全とは言えなくなりますね。」
「場所移すべきかなぁ……」
何故相手が分かったのか。
それにおいては謎が多いが俺はある仮説を出した。
「なんで分かったのかは分かんないけど、何となく関係ありそうな事柄に心当たりがある……」
「なに?リュウク。言いなさい。」
「恐らく王都で襲われた時に、あの雑魚たちがレミア自身に何か印になるものを付けたんじゃないのか?」
「その可能性はありますね。調べておきます。」
そう答えてくれたのはヘルターだ。
「では、そろそろ食事を始めましょう。」
そうして食事が始まったのであった。
そうして、テキトーにおしゃべりしながら楽しく腹いっぱい食べた俺は、すぐ自分の部屋のベッドに行き寝転んだ。
途中、「たらふく食べた後寝るとシーウになるわよ。」と言われ、「『たらふく』って久々に聞いたなぁ。」と、適当に返してきたが大丈夫だろうか?
そんなことを考えながら、2つの大切なことを考えていた。
ひとつは俺の魔法についてだ。
これまで考える時間がなかったが、俺は確かに魔法を使ったはずなのだ。
魔力切れになって、あの天国的な所へ送り込まれたのがその証明だ。
でも魔法を使ったという実感がまずない。
どころか、魔法は本来その魔法の名前を言わなきゃ発動しないらしい。
《ブラック・アロー》って感じで。
まだまだ謎が多いが、今の所これ以上考えてもしょうがない。
もうひとつは『職業』だ。
あの時。あの時、俺は何も出来なかった。
ただ、ただ、後ろから見守る事しか出来なかった。
次、ああいう事がもう起きないとは限らない。
その時のために、その時1人でも少しでも助けられるような戦力になれたら。
そう思い、少しでも早く職業につきたいリュウクであった。
基本的に職業は無限にあり、何を選んでも良い。
無属性で、あっても。
ただ、魔法が生かせる職業が多いので対等に渡り合うのはまず無理らしいが。
なので、魔法があんま関係ない職業としてスナイパー、剣士、銃士、忍者が一般らしいが……
「剣に炎纏われたり、忍者で隠密魔法使われたりしたら、全然かなわないよな……」
1人で、そう頭を悩ませていると、
「リュウクくん、入っていい?」
「お、おお。いいぞ、何にもしてないし。」
「いつもはなんかしてるんですか?!」
そう言っていきよいよく入って来たのはレレだ。
どうしたんだと、部屋に来た趣旨を聞くと
「いや、食事中のリュウクくんが何か思い詰めてるように見えたので、心配になって……」
「そんなに俺の事見ててくれたん?やだなぁ〜嬉しみぃ〜。」
「と、ルルが。」
「ルルかい!!」
ツッコミを入れ終わって一息ついてから、
「レレ。結構近いうちに俺、職業につきたいんだ。いざっ!っていう時にさ、何も出来ないのは心苦しいじゃん?だからさ、職業選びの時は付き合ってくれよな。」
「分かったよ。レレはリュウクくんの先生ですから。」
まだ先生なのかと思いながら、快く答えてくれたレレに感謝した。
って事で。
「ちょっと、職業について詳しく教えて貰っていい?」
「もちろんです。何かな?リュウクくん。」
完全に先生モードに入ったレレ。
ちなみにわかっていると思うが、レレは先生モードに入った時、敬語になる。
覚えておくように。(なんでや。)
「職業ついたら魔法覚えます、みたいな夢の職業はないよね?」
「魔法は無理ですが『戦技』や『マジック』なら……」
「戦技!?マジック?!」
「はい。『戦技』は剣士、剣術士などが覚えることか出来たと思います。
『マジック』は奇術師、道化師などが覚えられるかと。」
「それって、どんな感じのやつか詳しく教えて欲しいんだけど。」
魔法に近いものが習得できるなら一刻も早く習得するべきだ。
そうすればレミアを守ることも、メイド達の僅かながらも戦力に加担出来るだろう。
(そして、剣士と剣術士は何が違うのだろうか。)
「『戦技』というのは、剣を使った技の事を指します。例えば【戦技 剣舞】は舞うように相手に攻撃し、相手の一撃必殺を回避するのに使えます。さらに、相手が自分を捉えることが難しくなるので、こちらの攻撃が当たりやすくなります。
こんな感じで、自分に優位な戦況に持っていくのに書かせないのが、『戦技』『マジック』含む、『技』の存在なのです。」
「おぉ……それはいち早く覚えるべきだな……
『マジック』についても知ってたら教えて欲しい。他のものも何か知ってたら、知ってる分だけでいいから教えてくれないか?」
「『マジック』については詳しく知らないんですが、【トランプカッター】とか、【仕込み芸】とかが得意だと聞いています。
その他については…ギルドに行って直接聞いた方が信用性も高いし詳しく聞けますよ。」
「オーケー!ありがとう、レレ。」
「大したことないよ。」
「で、早速何だが職業につきたい。一緒に来てくれ。」
「今から?!?!
……全く、リュウクくんは仕方の無い人です。」
そう微笑みながらギルドへの同行を約束してくれた。