5話 最悪の訪問者
外に出ると、もうすっかり暗くなっていた。
「もう暗いな。早く屋敷にかえらないと。」
「そうだよね。早く帰りましょ?」
「おう。」
そうして、歩いているうちに俺は今日の出来事に考えを巡らせていた。
何しろまだこの世界にきて1日目だ。
もしかしたら、今日寝て明日起きたら家に戻っているかもしれない。
地球とこの世界を行き来する感じかもしれない。(なんかの映画みたいな。)
これが夢の可能性も、捨て切ってはない。
ふと、夢ならもうこの子達に会えなくなるのかと言う考えが横切った。
レミア、レレ、ララ、ルル。
みんないい子達だから会えなくなるとなれば少し寂しいな、と思った。
いや、待て、今のところ可能性的には多分明日もこの世界だ。
明日からも一緒なら変に切なくなるんじゃない。色々話しにくくなるわ。
「あの…。リュウクくん?」
「ん?」
「やっぱり自分が無属性って事で落ち込んでる?」
「んー、全く落ち込んでないと言えば嘘になるけど、なんかジョブ?か何かにつけば、戦闘スキル身につけられるんだろ?」
「うん。その通りだよ。」
この世界には、魔法がなくてもつけるジョブって言うのがあるらしい。
種類は無限で、魔法いらずのジョブで、代表的なのはスナイパー、剣士、銃士、忍者等だそうだ。
「何かしらついておきたいねー。そしたら安心していれる。」
「また後日、ギルドで手続きしよう。屋敷、着いたよー。」
「だなー。」
屋敷のお風呂を借り、着替えも済ました俺は、この先どうなるのだろうと考えながらベッドに寝転んだ。
正直、この世界で魔法が使えないのは明らかに生きていくのが難しいくらい致命的弱点だ。
現代日本みたいな平和な国でも時代でもないため、戦争も多々あるらしい。
そうして色々考えていると、今日はたくさんの衝撃的出来事が多すぎたせいか、すぐ眠ってしまった。
次の日、朝起きるとララが俺の部屋にいた。
それも、寝ている俺のすぐ隣に椅子を置いて座っている。
何事?!と驚いていると、
「やっと起きたわね。朝起きておはようの挨拶もないのかしら?」
「なぜか俺のめっちゃ近くにおらっしゃるからびっくりしたんだよ。
おはよう。
で、なんで俺の部屋で俺のすぐ隣にいんのか聞いていい?」
「やだ。」
「ほへぇ?」
てっきり教えてもらえると思っていたので呆けた声が出てしまった。
「うそよ。レミア様が不穏を感じ取ったの。」
「嘘かよ。レミアが?そんなことを出来るのか?」
「レミア様の危機感知能力はすごいのよ。なんか嫌な事が起きそうって言う時は絶対近いうちに起きるの。」
「それって魔法じゃないのか…?」
「そんな魔法ないわよ。そもそも何属性に入るの?その魔法。」
「そうだよな…属性関係無さすぎるもんな…」
そこまで言って、俺は気づいた。
レミアは無属性だ。
だが、誰にも魔力はある。
無属性では意味が無いのに。
……。
ここまで言って気づかないだろうか?
恐らく無属性魔法はまだこの世界で発見されてない魔法なのではないだろうか?
レミアの場合、危険察知?とか?
俺はあくまで仮説だが可能性はあると考えた。
俺にも魔法があるかもしれない期待が出てきた。
まぁ、それは今は置いとくとして。
「で、ララは俺を守るために来てくれたのか?なんて…」
「え?あ、いや、別にお前が無属性だから心配してとかじゃないぞ?」
あ、これ、ツンデレって奴??
かわいいなぁ…
「そんな、照れなくていいんだぞぉ?」
「何馬鹿なこと言ってるの?あなたは、ここに来て今日で二日目。レミア様が不穏を感じたんだから、あなたを警戒するのは普通の事よ。」
「確かにそうかも知れないけどさぁ…」
ちょっと凹むぜ。 なんて事を話していると、
ダァーーーーーーーーーン!!!!!
すざましい音がなった。
どうやら、屋敷の門が破壊されたらしい。
「様子を見て来るわ。ここで待ってなさい。」
「いいや、俺も行く。足手まといにはならない。だから……いいか?」
「……好きにしなさい。」
ララと走って外に出た。
門の方から歩いて来ているのは、誰だろうか。
「友達じゃぁないよな。」
「全然知らない人よ。当たり前じゃない。」
「と、するとあの人は…強盗?」
「わからないわ。でも、怪しいようなら殺す。」
「完璧怪しいな。」
そうしていると、3人いる男達のうちのリーダーらしき人が声を張り上げた。
「ここがレミア王女のお屋敷かー?」
「そうだったらなんだって言うんだー?」
次の瞬間、20メートルくらいあったはずの距離を一瞬で移動してきた。
今は目の前だ。
「?!?!」
「俺はレグルーチ軍幹部のクーダだ。王女を殺しにきた。」
「レグルーチ軍……聞いたことあるわ。王都でちょこちょこ犯罪犯してるグループね。」
「って、事で王女様出して貰えるかなぁ〜?」
「あなたバカ?お前なんかに、ビビるほど私は弱くないわよ。」
おいバカ!相手に火付けてどうすんだよ!
「面白い…そう来なくっちゃ♪」
その時、屋敷の3階から、ルルが飛び降りてきた。
いや、ヤバいだろ。
「大丈夫か?!?!」
「大丈夫ですので早く離れてください、リュウク様。」
「お、おう…」
そして俺は遠くへ離れた……訳でなく少し離れた所の木に隠れた。
そうして、戦闘が始まった。
まずララが先行攻撃を仕掛けた。
《ウィンドウ・ショック》
ブォーーーーーーーーーーーーン!!!!
すごい衝撃がクーダに炸裂した。
《ファイヤー》
《ウィンドウ・ウィンドウ》
「「!!」」
これまで後ろで見ていた男2人が、魔法を彼女達に向けて放った。
見た感じ、そこまで強そうではない。
低級魔法と言ったところか。
とはいえ、当たってしまったララは多少ダメージを受けたようだ。
「くっ!」
「まだ行けるわね?ララ。」
「大丈夫よ。」
その時、土煙の中から声が聞こえた。
「はっはっはっ!!
お前達まさかこの程度の魔法しか撃てないの??」
「!!! 《ウィンドウ・ショック》は中級、下手したら上級魔法よ!?」
「こいつ、只者ではないわね…」
「まぁこの俺がかわせなかった発動時間の速さは褒めてやろう。
俺の番だ…」
《ブラック・アロー》
無数の矢が奴の上に出現した。
「っ!!あれは!」
「準超級の魔法も使えるのか…」
無数の矢は彼女達に襲いかかる。
「ルル!頼むよ!」
「わかった。いくよ!」
《ランド・シールド》
「!! なんと、防御魔法が使えるとは!
……お前、超級だろ。」
「察しがいい…とは言わないわ。
防御魔法の使える人のほとんどが超級だものね。
謝るのなら今のうちよ?」
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今のやり取りの少し前のリュウク。
「おい、てめぇ、魔法使えねぇのかぁ?」
「いや、こいつ、俺の溝内に飛び蹴りしやがったやつだ!」
「よし、殺すか。」
「え……ひ、人違いですよぉー。もぉーやだなぁー。」
必死にこの場から離れようとするが見逃してくれるはずもない。
俺は走り出した。
「よし、死ねえぇぇ!!!」
そういって、1人の男が手持ちの剣を投げてきた。
《ウィンドウ》
風魔法に乗ってきた剣はみるみる加速し、俺の体に追いついた。
その時、