11話 《傲慢の天使》ゴクナ
───神々の失敗作
───ピキッ
背筋の凍る音がした。
「俺が……なんで、俺が……神々の失敗作……?」
「神の類いの魔法を有しているからと言っている。」
昔から普通に育ってきた。
特別頭が言い訳でも(むしろ悪い方)、特別力が強いわけでも、特別足が速いわけでも無かった。
そのリュウクが、神のみぞ知るはずの魔法の使い手。
そして────────神々の失敗作
「それで、あなたは一体何者?神々の失敗作とかなぜ知っているの?そんな話聞いた事ない。あなたの妄言に付き合ってる暇はないのよ。リュウクくんもこんなやつの話を鵜呑みにしないの。時間編集?そんなのある訳ない。あったとしても何属性よ?」
「私は《傲慢の天使》ゴクナ。《傲慢の神》に仕えし者。天使だから知っている。何が神々の間で起きたのかを。時間編集もこの目で見た。」
「ちょ、ちょっと待て。時間を巻き戻したんなら、お前の記憶も巻き戻ってんじゃないのか?」
「時間編集は全ての時間を巻き戻してる訳じゃ……いや、質問はここまで。ここは私が自分で作った即席部屋だし、無理やり地上と繋いでるからそろそろ崩れる。またいつかトドメ差しに来る。
─────神々の失敗作」
《傲慢の天使》ゴクナがそう言い終えた瞬間、屋敷の前に戻った。
ちょうど帰ってきた時と同じ場所。
そして日がまだ沈んでない。
沈みかけたままだ。
と、言うことは……
「どうしたの、リュウクくん?少し疲れた顔してるね。お風呂先に入って休憩してていいよ。」
そう言って屋敷の門を開き中へ入って行った。
「リュウクくん?ほんとに大丈夫??調子悪いなら病院行く?」
「い、いやいや!全然大丈夫!!!」
ほんとに体に異常はない。
だが、色々ありすぎた。
そもそもレレは記憶にないのだろうか?
「あのー、レレ。屋敷に着くまでに何か大きな事はあったのか……?」
「?何のこと?ほんとに疲れちゃってる?」
やっぱりさっきの事は記憶にないらしい。
どういう事か、さっぱり分かんない。
リュウクはさっきあった事は言わない事にした。
何故か口にしてはならない気がしたのだ。
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レレに言われるがままお風呂に入り夕食までの時間、自分の部屋でゆっくりする事にした。
考えなきゃ行けないことが多すぎる。
まず、新しくでてきたワード《天使》だ。
出てきた少女は自身のことを《傲慢の天使》と名乗った。
傲慢……傲慢と聞いてリュウクが出てくるのはひとつしかない。
『七つの大罪』だ。
ラノベでは結構たくさんの作品に出てくるのでリュウクはそれを知っていた。
そして大体『七つの大罪』と関連付けられるキャラはチートキャラや、狂人が多い。
リュウクは頭を抱えた。
「俺はチート狂人キャラに追いかけられるのか……」
そんなアホな発言をしながらひとつ閃いた。
「待てよ……そんな奴らが追いかけてくるくらい凄い魔法が使えるなら、そいつら撃退可能じゃね?しかもよくよく考えたら時間編集って元々神しか使えなかったって《傲慢の天使》が言ってたじゃん??俺ほぼ神じゃん!!」
そう言ってアホな発言に間抜けな発言を重ねていると、
コンコンッ
「ヘルターです。ちょっといいですか?」
「はい。どうぞ。」
「失礼します。」
礼儀正しい挨拶とともにヘルターが俺の部屋に入ってきた。
なんの用だろう?
「先程のつぶやき少し聞こえておりました。」
「……え?マジか…恥ずかしい…」
そう言ってリュウクは顔を両手で覆った。
あれ?それだけ?
「そんな事知らせるために来たわけじゃないよね?」
「もちろんです。聞こえてきた言葉の中に聞き捨てならない言葉がありまして。」
「……それは?」
「《傲慢の天使》です。あなたがなぜ、《天使》について知っておられるのですか?」
「……」
リュウクは黙り込んでしまった。
別に隠しとけとか言われた訳でもなく、言おうと思えば普通に言えることなのに《天使》の事は口に出しずらいのだ。
何となくだが。
「答えによっては今後のレミア様への接触は禁止となりますよ?」
「え?!?!」
「普通なら《天使》ではなく《悪魔》ではないですか?少なくとも王都ではそう認識されているのが普通です。あなたがなぜ《天使》と言ったのかわからない限りはやましい事を隠していると見なします。」
《悪魔》?
少なくともリュウクは、異世界に来てからその単語を聞いてない。
「あのー、《悪魔》ってなんですか?俺が会ったのは《天使》って名乗ってたんだけど。」
「《天使》天使に会った?!?!どこで!!いつ!!」
突然大きな声で質問攻めされ驚きを隠せないリュウク。
何に驚いてるんだ?
「…そうか……あいつら生きてたんだな……」
「?」
「なんでか知らんがリュウクには何かしらの事情で……」
「お、おい。口調もおかしいし、明らかに動揺してるぞ。落ち着け。」
「……はい。申し訳ございません。以後、こんな事は無いように注意しますのでお許しを。」
「よし。落ち着いたな。で、何が聞きたかったんだっけ?」
「いえ、もう大丈夫です。」
そのままヘルターがドアノブに手をかけた。
「俺から一つ質問。」
「……な、なんでしょうか……?」
「……」
数秒の時が流れる。
正直、どうしてあんなに《天使》に会ったと言っただけで動揺したのかとか、《悪魔》ってなんなのかとか色々聞きたいことはあったが今は辞めておいてあげることにした。
代わりになんでもない質問を。
「《天使》……じゃ、なかった。《悪魔》?はさ、全部で7人?それも、《傲慢》、《怠惰》、《憤怒》、《嫉妬》、《強欲》《色欲》、《暴食》の7人?」
「…………はぁ。半分正解半分間違いと言っておきましょう。事の真相はまた近いうちに。」
そう言って、ヘルターは部屋を後にした。
リュウクには今のヘルターになにか危険なものを感じていた。