表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/54

バトル・オブ・異世界料理!!



 「……あ、はじめまして、フィルティって言います。中央都市の自由民で冒険者やってます」


 「……こちらこそはじめまして。クュビラレス・アミラリア……ゴルダレオス公国の王立魔導士団員……まぁ、いわゆる宮仕えですが」

 


 ややぎこちなく始まった自己紹介に、即座に茶々を入れたのは誰でもないノジャだった。


 「かたーい! 固いのじゃ!! もっとこうフレンドリーでアットホームな感じで笑うのじゃ!! ニャハハハハハ~♪ って具合にじゃ!!」


 「「に、ニャハハハハハ~♪(?)」」


 うん、傍らから見てて痛々しい……フィルティさんもアミラリアさんも……困惑したまま笑うように強要されてるし、アミラリアさんに至っては素面でしょうに……。


 「うむ! 上出来じゃ! それでは改めて……乾杯なのじゃ!」


 「……えええっ! ……の、飲まなきゃダメなんですかっ!?」


 私に目配せするノジャを見て、仕方なくジョッキを手渡すと私とノジャの顔を交互にみるアミラリアさん……ゴメンね、ノジャったら【素面では仲良しになれないのじゃ!】と頑なに信じてる飲酒至上主義者だからさ……。


 「……判りましたよ、もう……いただきます!」


 渋々といった風情でジョッキに口を付け、少しづつ飲み始めたアミラリアさんだったが、次第に勢いが増して……あ、あれ?




 「……っ! ……ふあああぁ~っ!! ……凄いわ……これ、クセになりそう!!」


 ……嗚呼、何てことでしょうか……また、此処に【酒に負けてしまった】罪人(とがびと)が一人生まれてしまいました……。


 ……とか他人事みたいに思いながら、私は新しいジョッキに七割までビールを注いでから、泡を流し込んで盛り上がった箇所をバターナイフで削ってから、泡が落ち着くのを待ち、再度ビールを注いでから運んだ。



 「……お待たせしました、空いたジョッキをお下げしますね?」


 「……あ、すいません……でもこれ、冷たいのに飲みやすいし……何なんですかコレ?」


 新しいビールを受け取ると、アミラリアさんは私の方を見ながら、今度は味わうようにゆっくりとジョッキを持ち上げて流し込み、嬉しそうに質問してくる。


 「これはビールって言うお酒。まぁ、そんなに度数高くないから、飲み過ぎなければ問題ないし、食欲増進効果もあるから最初に飲むにはうってつけなお酒かな?(……商売的な意味で)」




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 「へぇ~!アミラリアさんって二十歳で王宮魔導士やってるんだ!凄いじゃない!?」


 フィルティさんの言葉に恥ずかしそうにしながら、でもアミラリアさんも満更でもなさそうに、はにかみながら答えてる。


 「う~ん、王宮って言っても中央都市より人口が少ない国だし……まぁ、争い事も今はないから平和にやってられるわよね~」


 二人とも既に何杯も飲んでいるから、何となく()()()()()()()()で語り合っていた。



 ……おぉ? 何だか急にスナックらしくなってきたんじゃない? うんうん……って、そう言えばノジャは?


 「……何をキョロキョロしているんじゃ? 妾は【十番】(→飲食業でトイレの隠語)に行っていたのじゃ!」


 店のおしぼりで手をフキフキしながら奥から現れたノジャ。と言うか何故に業界用語を知ってるの?


 「はいはい判りました……じゃ、たまには従業員らしく働いてくださいね?」


 言いながら手に持ったトレンチ(配膳用のお盆)を差し出すと、ノジャが拗ねたように口を尖らせながら、


 「嫌じゃ~! 妾は働いたら負けだと思うておるんじゃ~!!」


 「あなたは経営者なんだから、それらしくたまには仕事もやりなさいよ! うちは飲み放題なんだからクラブと違って自腹で飲んでるのと変わらないのよ?」


 「……うむ? ハルカよ、クラブって何じゃ?」


 つい口に出してしまった言葉に反応するノジャだったが、私は知らんぷりすることに決めた。……クラブのボトルチャージ方式を真似したら……ノジャが店中の酒瓶を全て空にしてしまいそうだったから……。


 「ノジャは知らなくていいのよ……さぁ、次の料理を持っていってキチンと職務を全うしてください経営者様!」


 ポン、と背中を軽く叩いて送り出すと、不満げな顔ながらトレンチの上に載った皿の中身が気になったらしく、いそいそと小走りでテーブルまで駆け寄ると、


 「……お待たせなのじゃ! ……これは、これは……ハルカ~何なんじゃこれは?」


 ……アホか……全く。私はまほろばの実質的なオーナー兼マスコット及び看板娘兼お運び係の頭の悪さに呆れ返りながら、ちゃんと説明する為に厨房から顔を出して、



 「……もぅ、その位見れば判るでしょう……お酒のお伴の大定番! モツの味噌煮込みよ! ……って、あ~そうか……知ってる訳無いか……」


 恥ずかしながら、目の前で鳩が豆鉄砲を食らったような顔の三人と目が合い、初めて自分の失態を自覚したのよね……うん、異世界の住人に『モツ』も『味噌煮込み』も理解出来る訳ないか?


 でも、私も何となく意地って訳じゃないけど……ちゃんと作った自信作を理解して欲しかったから、キッチリかっちり説明することにした。



 「……あっと、まずモツってのは……うん、牛やブタの内臓……つまり、お肉以外の部位……うーん、そう!()()()()()()()()()()()()()()()()、なんだけど、一手間かけて下ごしらえすれば美味しく食べられて……」


 ……あー、退()いてる退いてる三人とも【あらやだ野蛮人が此処に居るわよ?】的な顔で見てるわね、そしてナチュラルに向こう側に居るノジャをつねってやりたい……アンタは私の身内じゃないの!?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ