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ハルカ、身支度を整える(短時間で)。

やーっと更新に漕ぎ着けました。



 ……んふ♪ いやぁん……そうだけど……ん、んーっふぅ……♪




 意味有り気に悶えつつ、ハルカがコタツの中で寝返りを打つ。そして徐々に目覚めに近くなり、やがて意識が覚醒し、うっすらと瞼を開けていった。



 「……ふぁ、あれ? ……あー、そっか……店で寝たんだ……んー、もふもふぅ♪……もふ……も、ふぅっ!?」


 コタツの中で丸くなっていた身体を伸ばそうとすると、やけに温かい。いや、それどころか、かなり暑いと言ってよい。その原因を探ろうとして身体を動かすと、裸足の足裏を何故か、サワサワと微細な毛が蠢いて刺激した。


 「ひぁっ!? な、何よこれ……あー、そーゆー事か……」


 その正体は……




 「うにゃ……ふわあああぁ!!……あーよ~寝たわぁ……。ん? おはよーハルカちゃあん……♪」


 欠伸しながらハルカに挨拶する、犬耳な居候のフィオーラの尻尾だった。



 二人が潜り込んでいたのはかなり大きめのコタツだったが、ハルカ、フィオーラ、そして彼女の柔らかでフワフワな九本の尻尾が充満し、早朝の冷えきった店内とは真逆な汗ばむ程の熱気を帯びていた。



 まぁ、端的に言えば【女性二人(内一人は犬耳)とモフモフだらけ】のコタツだ。健全な男子なら鼻血モノだろう。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 取り敢えず目覚めたハルカは手短に朝の身仕度を済ませると、期待に眼を輝かせるフィオーラを宥めつつ朝食作りを始める。


 昨日の夜に店の一品(相変わらずスナックにはメニューらしい物は無い)の残り物の唐揚げを出し汁に浮かべ、炒めた玉ねぎを投入して一煮立ちさせてから味を確認し、最後に溶き卵を流し込んで蓋をする。


 次は敷かれていたキャベツの千切りと油抜きした油揚げ(何故かフィオーラのテンションが上昇)をサッと茹でて味噌と簡易ダシ(パック入りのイリコ粉末)で味噌汁にし、炊飯器から炊きたてのご飯(寝る前の仕込みは忘れない)を取り分けてから、唐揚げの玉子とじを鍋ごと運んでコタツの上に配膳した。


 待ちきれなくて切なげな表情のフィオーラに苦笑しつつ(フィオーラのお椀は軽く三人分はあるが)二人が食べようとした瞬間、表の扉を叩く音が響いた。



 二人は顔を見合わせながら、誰だろうと思いつつ無言でハルカが店内を横切り扉に向かい、


 「すみませーん、今はまだ開店前なんですが……ほぁっ!?」

 「こちらこそ済みませんね……こんな朝早くに……」


 声を掛けながら扉をそっと開けて外を窺うと、そこにはきっちりと髭を剃り、髪を撫で付けてコートを纏ったキタカワ氏が申し訳無さそうに立っていたのだ。


 「いや……あの……どーしたんですか……?」

 「うん? いや……ビスケットさんが【ハルカさんが呼んでいるから来て欲しい】って今朝方やって来まして……行き違いになってました?」

 「ビスケットがそんな事を言って……いえ……そ、そういえば朝御飯は召し上がって来たんですか?」

 「いや、それが……」


 そんな二人のやり取りを横目に、フィオーラはビスケットが呼びに行ったくだりを聞いた瞬間、勢い良く目の前の朝食に食らい付いた!!


 いただきますっ!!……はむはむかつかつかっかっかっ、ごくん……むっしゃむしゃむしゃかっかっかっ……


 軽快なリズムとスピードでモリモリと食べ進めながら、一旦箸を止めて考えてから、


 「はーるーかー、ご飯足りなくなっちゃうかもしれないからさ~、二人で外で食べてくれば~?」


 躊躇うこと無くハルカの分まで猛烈な勢いで喰らいつつ、玄関の二人に向かって声を掛けた。


 「えっ!?……もう、何やってんのよ……ホント、酒とご飯に関しては貪欲だわね……」

 「あ……もしハルカさんがよかったら、朝ごはん、外でご一緒しませんか?」

 「ご……ご一緒!?そそそそれは畏れ多くて申し訳ないけど……」


 ハルカはやや戸惑いながら、フィオーラの方を振り返ったのだが、


 「ハイ、ごちそさまでした!!」


 我関せずと言わんばかりに叫びながら素早く膳を掴んで洗い場に運び、ちゃっちゃと片付けを始めるフィオーラのふわふわな尻尾を見つめてから決意し、



 「……それじゃ、済みませんが五分だけお時間ください!! あとフィオーラさん! キタカワさんにお茶出しといてッ!!」


 ハルカはそう叫びながらロッカールーム代わりの備品室に駆け込み、慌てながらも黙々と着替えを始めた。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 よいしょと寝間着のジャージを脱ぎ捨ててから、手早くワイシャツを着てタートルネックの黒いセーターを被り、首を出しながら掛けてあった黒いスラックスを穿いた。


 (……うーん、我ながら地味だ……)


 色気の無い青で統一された下着の上から衣服を身に付けつつ、何故かそう評しながら暫し考え込み、一瞬だけ替えの下着が無かったかと思い……




 (……はぁっ!? 何考えてるのよ私!! 朝御飯食べに行くだけじゃん!!)


 ハッと慌てながら我に帰り、備品室の壁に掛けられた鏡を使って口紅(淡いパールピンク)だけ塗って、


 「おっ! お待たせしましたぁ!!」


 叫びながら店内に飛び込んだハルカは、丁度お茶に手を付けたキタカワに向かって駆け寄ると、


 「……ウチのビスケットに振り回されて……おまけに私まで、ホント申し訳無いです……」

 「いや、気にしなくて構いませんよ? 独り身だからこせ、誰かと出歩く機会もあれば楽しいですし、それに……」


 そう言いながら片手に持った細長い包みを持ち上げて、


 「後でこれ、ハルカさんに見て貰って、感想聞きたかったし……丁度よかったんですよ」

 「じゃ、じゃあ早速……って、何なんですか? それって……」


 二人はそう言葉を掛け合いながら、店内を横切ると扉を開けて出て行った。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 「……ほわあああぁ……! 平和だねぇ……♪」


 少しの間を明けてから、コタツの中に潜り込んでいたフィオーラがもそもそと外に出ながら座り込み、伸びをしてから部屋の片隅に顔を向けて、


 「ビスケットちゃん、よーやったわ!! お疲れ様~♪」

 「……やれやれ、ステルス迷彩を見破れるのは、貴女とキタカワ氏だけですよ、全く……」


 そう呟きながらジワジワと足元から姿を現したビスケットは、呆れたように手を挙げながら足音を立てずに店内を横切り、フィオーラの前まで進むとパンプスを脱いでコタツの中へと足を入れた。


 「へ~、それって凄い事なの? 私だって勿論姿は見えてないけど、何となくそこに居るみたいな感じはしてたんだよね~」

 「貴女が魔力とか仰有る不可思議な物で世界を認識しているのは存じておりますが……キタカワ氏は私が脇をすり抜けようとした時、少しだけ脇に避けましたからね。きっと判っていたと思いますが」

 「ふーん、成る程ねぇ……まー、それはともかく……」


 ビスケットと話していたフィオーラはそこで言葉を区切り、


 「……ハルカちゃん、上手くいくといーわねぇ♪」


 そう結論付けてから、楽しそうに二人が消えた扉を眺めながらコタツの中に沈んでいった。



ゆっくり進行ですが、次回もお楽しみに!

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