表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

後輩クン、踏ん張る!

異世界スナック、その不思議な環境に専門家のメスが入る!!(素面のうちはね)



 「……いせ、かい……すなっく?……アミラリアさん、これは……いや、まさかこれが、【同時多発転移門】なんですかっ!?」

 「あ~、フンボルト君……レポート読んでなかった?あれ、もう解決済みなのよ……公表してなかったけど……」


 アミラリアはしれっと白状したが、フンボルトにとっては正に青天の霹靂だった。……何せ、魔力量を膨大に消費する【異界の門】同士を強制的に繋げて運用する【転移門】を同時期に幾つも発生させた上、機密事項であったが王の居住区画にまで出現させたのである。


 もし、それが何らかの害意を持った、物騒な連中による戦略目的だったなら、容易く攻め込まれていたかもしれないのだ。「未知の魔族による侵略か!?」と当初は近衛兵が大挙して取り囲み、王は「いーかげん嫌になるんだけど!!」と何日間も湯槽に浸かれずウンザリだったそうだ。


 「で、その扉がコレ……って、君、聞いてる?」

 「らっ!?あ、はい……いや、その……何で()()()()()()()()()()()()のかなぁ、って不思議で……」


 そんなこと……、と言いながらアミラリアはコホん、と判り易く咳払いを一つしてから、


 「……先輩として説明してあげるわ……この扉や看板には【視認発動因子】の魔導呪印が懸けられているのよ。つまり、文字が読めない、じゃなくて《知識として文字を記憶していない》子供とかじゃない限り必ず発動する仕組み……よ」

 「な、なるほど!って、つまり……この字が呪印で出来てる訳じゃないんですね?」

 「そう、看板や扉全体に見えないように施されていて、全体を視認した瞬間だけ発動、視認した者から微量の魔力を吸収して実行される仕組み……よ?」


 (……って、私が施したわけじゃないんだけど……)と思いながら答えたアミラリアが、沈黙したフンボルトの方を見やると……、



 「す、凄いですっ!!やっぱり先輩は聡明ですねっ!!自分はてっきり字に呪印を施してあるのかと思ってました!!」

 「そ、そうよ?間違え易いから気を付けてね……あはは……」


 まるで投げた棒を取って戻ったイヌのように、キラキラと輝かんばかりの表情を見せるフンボルト、そして対称的にその彼から放射されるキラメキ波に当てられて、やや影を濃くするアミラリアだった……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 ……ごくり、と生唾を飲み込みながら、フンボルトがドアノブに手を伸ばす。


 「一瞬だけ身体が乗っ取られて……勝手に動かされるけど、それはこの扉が対象者を選択する為に発生する、魔導の発動条件の一つだから身を委ねてね?」

 「……はい、判りました……」


 これまでに何度も扉を開いてきたアミラリアが、腕組みしながら見守る中、フンボルトが掴んだドアノブを掴みドアマットに足を載せた瞬間、


 ……ぐうぅんっ!!……と、全身から魔力が吸い取られる脱力感と同時に、自分の意思を離れて握力とは無関係にドアノブを掴む手が離れなくなり、独りでに踏み出す足に戸惑いを覚えて振り向いたそこには……


 《……()()()()()()()()()()()


 と言わんばかりに、慈愛の籠った眼差しを向ける、アミラリアの笑顔が有って……フンボルトは……


 「せ、先輩っ!!……俺、先にいきますぅ~っ!!」


 ……何故か意味深な言葉を残しながら、一足先に【まほろば】の扉を潜ったのだった……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 フンボルトが扉を潜って落下する浮遊感が終わった後に、最初に感じたのは毛足の短い、しかし柔らかなカーペットの刺激だった。地に伏して頬を当てて感じたフワフワとした感触が、意識を拡散させて全身の感覚を取り戻す切っ掛けとなり、そして次に感じたのは……


 ……柔らかな重みと、身に添う温もり。そして……忘れる筈も無い【甘く芳しい香り】……その組み合わせが導く答えは、フンボルトの意識を一気に覚醒させていく!!


 「……あっ!?……あの、先輩……()()()()()()()()()()()()()()()

 「……あ、ゴメンね!?……いっつも独りでしか来ないから、誰かの後から続いて入るとどうなるか知らなかったわ……」


 彼の背中から身を起こしつつ、わざわざ背に腰掛ける姿勢になってから、よいしょと立ち上がり振り向いて、


 「クッション代わりに使ってゴメン!……でも、フンボルト君も私みたいな美人に乗って貰ったんだから内心嬉しかったんじゃない?」

 「そ、そんなこと!!……や、止めてくださいよッ!!否定しても肯定しても気まずくなっちゃうような事を言うのは!!」


 からかうアミラリアに、やや赤くなりながら必死に取り繕うフンボルト。そんなやり取りをしてからパッと立ち上がり、先に立って歩き出しながら次に待ち構える扉を目指し、


 「全く……そんなこと言える訳無いじゃないですか……」


 独り言を呟きながら、顔の火照りが退くのを願いつつ、次の扉のドアノブを掴んだ。



……作者の脳内では今回のお話の結末は出来上がっていますが……実は執筆していくうちに内容が変化(人物の発言のニュアンスを修正していくうちに変わっていく!)する事もあります。正に言霊じゃなくて字霊?ではまた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ