四名様御来店(うち二人少女?)
たまーに幼女(ロリBBA)の定義が曖昧な我がスナック小説ですが、10~14才程度の見た目、と脳内変換してください。今夜のお客様はそんな感じ。ちなみに稲村某作品でのガチ幼女は前出したみね(四才)がテンプレートです。
仕込みの手順は非常に多い。野菜の水洗いから始まり、魚なら下拵え、肉なら筋切りに部位分け。献立に合わせてそうした下準備が必要であり、それは必要な事なのであるが……同時に手間の掛かる事でもある。今までは全てハルカが一人で仕込みを担当していたが、ビスケットがやって来てくれたので予想外に捗り助かっている。
「ふぅ……ありがとね、ビスケットちゃん」
「いえ、この程度の反復運動は問題有りません」
ハルカはビスケットを労うと、傍らに山積みされた野菜の入ったボールを手にし、流しから調理台へと運んだ。
「……ただ、何故ビスケットちゃんの格好、ビキニとエプロン姿なの?」
「さて?このような姿が殿方ウケすると判断し、適切な容姿に変貌させました」
怪訝な顔のハルカへ事も無げに告げるビスケットだったが、何故かハルカは表情を軟化させることなく、
「……でもおかしいなぁ……ここにそんな格好を見せるような人なんて居る筈も……って、ちょっと待った!!ビスちゃん、最近私の部屋を掃除とかしたの!?」
「えぇ、先日様々な冊子を整理致しました。私は優秀な思考体ですから全ての冊子を整理して個別にジャンル分けしタグを付けて分類しました。TSに価値観逆転世界モノに強制奉仕モノにそれに」
「ビスちゃん!!それは分類とか全然必要ないのっ!!だから絶対に触らなくていいの!!判った!?」
慌てるハルカに涼しい顔で返すビスケットだが、次の言葉を聞いた瞬間、表情を凍り付かせた。
「はい、畏まりました。しかし何故に寝台のマットレス下に、記載事項が著しく偏った書籍が仕舞われていたのでしょうか。それとその更に奥に……」
「ストーップ!!ストーップ、ビスキィ!!あなたは……しばらく、私の部屋にぃ……は・い・ら・な・く・て……いいから……ね?」
「了解致しました。特殊な形状の何がしかはそのままにしておきましたが、洗浄消毒は私の機能の高周波洗浄(※①)で行いましたので問題なしと判断しましたが、宜しかったでしょうか?」
「……あー、そうですか……ありがとうございますぅ……」
それから暫く後、ハルカの様子を見にきたノジャはキビキビと動くビスケットと、ノロノロと死んだ魚の眼差しで動くハルカを見比べて、
(ははぁ~ん、ハルカめ……何やらビスケットに何かされたようじゃのう!)
……と、妙に嬉しげな表情を浮かべてから席に付き、迎え酒を煽った。
(※①)高周波洗浄→稲村作品の様々な人型機械に何故か標準装備されている機能。水に手を浸して高周波を出す事により、綺麗サッパリ!裏技として霧吹きを噴霧し水分を表面に付けて、高周波を利用して細菌やバクテリアの表面細胞膜を破壊、殺菌する手段もある。……何の為にある機能なんでしょうねぇ?
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……それから暫く経ち、漸く立ち直ったハルカはとりあえず早めの夕食にしようとノジャに声を掛けた瞬間、店の入口のベルが鳴った。
……チリリリリリリ……リン。
「ほうほぅ!!ここが【まほろば】か!成る程のぅ!」
「へ~、アンティークでもないしクラシックでもない内装ねぇ♪」
「……あ~、帰りてぇ……」
「ゼルダ様!私の甲冑でも通り抜けられるんですね!!とても凄いです!」
店の入口が開き、店内へドヤドヤと雪崩れ込むようにお客様……が、いや、果たしてお客様なのか?
「ノジャ!久しいのぅ!変わりはないか?」
純白のドレスに真っ赤な靴、指先から肩まで白いレースで覆われその出で立ちは正に【高貴】を顕す少女が、動く度に金髪を優雅に舞わせながらやって来る。
「おぉ!ゼルダ!よう参られたな!それにヴァリトラも!今夜は首はキチンと繋がっておるか?」
ゼルダと呼ばれる少女(きっとノジャと同類だろうが)に近づきながら、横に並ぶ銀色の甲冑武者に手を触れ、確かめるように物騒な事を言うノジャに、
「これはこれはノジャ様!お久し振りでございますヴァリトラの事を覚えていて下さって恐悦至極です首は勿論繋がっております何せこうして馳せ参じるに当たり無礼粗相になりますからね!」
……カパッ、と面当てを上げると、中から意外にも若く可愛らしい年頃の女性が顔を覗かせるが……鎧のサイズと姿から相当な巨躯は明白で、背丈の有るハルカの頭ですら肩にやっと届くかどうかであるが。あと早口だ。
そんな二人とは全くかけ離れた容姿の三人目の少女は、こともあろうかタンクトップにオーバーオールのラフな格好で、やや短めの髪の毛は明るいブラウン。ただ見たこともない髪留めを二つ付けていて、それが昆虫の複眼のような独特の光沢を放っている。
「いやぁ~新しいお店っていいねぇ~♪お、さっすがノジャちゃんのお店だ~本格的な真鍮のサーバーだぁ!カッコイイよねぇ!……お?お嬢ちゃん早速一杯もらえるかな?」
呼ばれたハルカは一瞬固まってしまったが、気を取り直してジョッキを添えてサーバーを操作し、慣れた手つきで泡をカットしてから席に着いたその少女(に見えるが)の前に置くと、
「おぉ!レベル高いねぇ!泡につまよーじ立ちそうじゃない?上手上手!!お先!……、……、……くうううぅ~ッ♪堪んないねぇっ!!」
早速ジョッキを傾けると一気に三分の一を流し込み、微細を極めた泡を口に付けながら嬉しそうに微笑んだ。
「……ん?ここ、酒を出す店か?だったら【モルト】をくんないか?」
四人目の女性はハルカと同じ背丈だったが、燃え立つような朱髪と整った顔立ちは正に《大人の女》の色香を漂わせていて、簡素な白いシャツと黒いスラックスは男性的な清潔感を与えているのだけど……
「【モルト】ですか?……あいにくとウチは大手ビールの扱いはちょっと……」
「ハルカよ!こやつの【モルト】とはシングルモルトの事じゃ!棚の右端にボウモアがあるじゃろ?」
スナックらしからぬ棚のラインナップから、埃一つ無い瓶の一つを手に取ると、カウンターに陣取ったその客の前に立ちながら、
「ロックにしますか?それとも……」
「折角の酒を水で溺れさせる必要ないだろ?氷だけでいいよ」
尋ねればハスキーな声でそう答えたので、ロックグラスに丸く削った透明な氷を入れて、ゆっくりと纏わせるように静かに注いでいく。
「ありがと…………、……、悪くないね。ハルカってんの?私はデフネ・デ・ロイ。まぁ……デフネでいいよ?」
その女性はそう言うと、マイペースに腰の煙草入れからキセルと煙草を取り出すと、ハルカに目配せして灰皿を受け取り、
「ギル、火をお願い」
(はいはい判りました……お嬢さん、失礼致しますよ?)
頭の中に響く落ち着いた男の声が断った瞬間、雁首の煙草に火が点き、一拍置いて口許から紫煙が吐き出された。
「……今更だけど、まさかここ禁煙じゃないよね?」
「灰皿有りますから……御心配なく……」
調理場と店内に付いた換気扇のスイッチを確認しつつ、一見すると普通の……いや、相当な美人の部類に入るデフネと名乗る女性の腰には、朱塗りの鞘に納まった長剣が提げられていて、
「……これかい?見たことないだろ?……コイツはギルガメッシュ。コッチの世界にあるかは知らないけど……【魔剣】って奴だよ」
ハルカの知らない世界の常識を、世間話の基準であっけらかんと告げてくれたのだった。
そんな一同を迎えながら、ノジャや残されたゼルダとヴァリトラに近寄りつつ、ハルカの頭の中は危機を察知し、アラームが鳴り続けていた……
(なんだろう……何なんだろう、このヒト達、全然普通じゃない!!)
コイツら、何者?とハルカと同様に思われた皆様すいません。ゼルダ→旧作から度々出てるロリBBA、?→超時空戦艦辺り、ヴァリトラ→ゼルダのお供、デフネ→研ぎ師と魔剣の準レギュラー、です。次回は彼女達を迎えながら異世界幼女論に……なるかなぁ?




