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ご飯の後は……?

飛び飛びになってしまいましたが更新いたします。飯テロから……?



 その日の食事はドミグラスソースのオムライスに始まり、続いて合挽き肉のハンバーグおろしポン酢載せ、そして白身魚の甘酢餡掛けから最後のデザートへ……。


 明子(めいこ)とみねの姉妹は戦争が始まる前に食べて以来、すっかり遠退いていた贅沢な食事を久々に味わい、身体中の隅々まで栄養が行き渡ったかのような満足感と充実感に満たされていた。


 「おねぇちゃん!みね、こんなにごちそうたべたの……ずーっと、ずーっとぶりだよ!だよねぇ?」


 「ほーんと!もうお腹一杯だよ……っ?」


 だが、そんな明子の言葉に(……本当にお腹一杯なの?)とでも言いたげな体で運ばれて来たのは、ガラスの器に盛り付けられ、白いホイップクリームが載ったワインレッドのゼリーだった。



 「これはね?ザクロから作ったお酢の入ったゼリーなんだけど……結構酸っぱいから、みねちゃん食べられるかな?」


 ハルカはそう言いながら、口直しに出すつもりで作ったデザートだけど……と前置きしながら二人の前にそっ……と置いた。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 (……うーん、ザクロ……美味しいのかなぁ?)


 明子はハルカの言葉を聞きながら、目の前に置かれた小さな容器の中に満ちた赤いゼリーと、白いホイップクリームのコントラストが眼を引くデザートを見ながら考えてしまった。


 彼女の住んでいた家の隣に植えてあった庭木の中に、毎年秋になると立派なザクロを実らせる木があったのだが、その家の住人は誰もそれを食べなかった。結果的にお裾分けもされずただ梢の先で鳥に(ついば)まれるのが関の山だった。


 そんな事を思い出しつつ、混ぜた方が酸っぱくないからね?と前置きするハルカに会釈して、添えられたスプーンでサクサクと天地をひっくり返すように混ぜてみる。


 濃い赤色のゼリーとホイップクリームの白が混ざり合い、独特なグラデーションへと変化したそれを、明子はゆっくりと口へと運び……



 「……すっ、ぱくない……うん……うんん……?」

 「ちょっとだけ……すっぱいかなぁ……でも、クリームあまいからおいしいよ♪」


 そう、ザクロ酢の酸味はホイップクリームの甘味で程好く緩和されて、キリリと舌の付け根に割り込むようにやって来る刺激は唾液の分泌を促進するのだが、けれども食欲を減退させる程ではなく……その酸味の奥にひっそりと佇む果実が持つコクが顔を見せ、酸味と甘味が中和し絡み合いながら一つに昇華するのである。


 ……しかし、そんな複雑な味わいを理解出来る程には明子もみねも老成している筈もなく、ただ甘酸っぱいゼリーだなぁ……と思いながらもスプーンは止まること無く、あっという間に食べ終わってしまった。



 「……あぁ……御馳走様ですぅ……」

 「……みね、もう()()()()()()()()……」


 明子は気がつけば途中で供されていたオレンジジュースの存在すら忘れ、ただひたすら食べに食べ、まるで叔父の家にあった美術と歴史の図鑑に載っていた《古代ローマの飽食の宴》みたいだなぁ……と彼女なりに評したのだった。



 「……さてと!今夜はイイもの見せてもらったから、この辺で帰ろうかなぁ?」


 フィルティはそう呟きながら、豊かな胸元を探って懐から革袋を取り出すと、通常の代金より少しだけ多めに足して会計しようとして、事態を飲み込めないビスケットが軽く動きを止めたのを見てハルカが笑いながら、


 「ビスちゃん!それはね……《次の会計で足りないヒトが居たら足しておいて》って意味なのよ?そーよね、フィルティさん!」


 「そっ!!今日は少~しだけ手持ちがあるから……それは置いておいて貰って、次に来た誰かか……まぁ、仕事しくじって懐が寒くなった自分かもしれないけどさ……そんな感じで少しだけ困ってる誰かを支えてあげる為に出したのよ?」


 「……効率的に考慮しますと、実に回りくどくて感傷的なだけの曖昧な慈善行為です。……しかし、感情回路が仄かに刺激され情報処理の速度が低下しますが、悪く有りません」


 抑揚を抑えた控え目な感想だったが、ビスケットは彼女なりにそう評価しながらお代を受け取り、入り口の扉までフィルティを見送ってから元の位置へと戻ってきた。


 「……ところでお主ら、風呂は好きかのぅ?」


 「……えっ?……ま、まぁ……好き、ですが……」

 「みねっ、おふろすきだよっ!!」


 「おぉっ!!それは良い!さればこれから共に参ろうではないか!!」


 ……ここまで余り言葉を発していなかったノジャが、突然二人に向かって問い掛けて、話が進み湯編みじゃ湯編みじゃ!と浮かれるノジャを眺めつつ、


 (……あれ?……うちにお風呂なんてあったかしら?)


 と、ハルカは独り疑問に思いつつ、ノジャに急かされて着替えや手拭いを支度し、店仕舞いもそこそこに《まほろば》を後にした。



 ……って、店の入り口から向かう所って……まさか!?



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 案の定……先に行くと言って扉をくぐったノジャが、邪悪な微笑みを浮かべながら大慌てしてる半裸のゴルお(?)さんを眺めている現場に鉢合わせして……


 「うわあぁっ!?……ノジャッ!!……それにハルカさんに……ちっちゃいハルカさんともの凄く小さなハルカさんッ!?どーしたのどーなってるの!?」


 ……まぁ、予想してたけど、そーなるよね……


 「ゴルダレオス!湯を借りにきたぞぃ!!……あ~、この者達は、ハルカに深く縁の有る者じゃ!」


 「はああああぁぁ……そうなんですかぁ……まぁ、お気兼ねなくどーそ……でもあんまり長湯すっとレミとかと鉢合わせしちゃうから、そこだけは気をつけて……」


 優しいゴルおさんにお風呂を使わせてもらい、私達は……って、私まで何で居るんだろうか……別にいいんだけどさ。



次回は……四才、八才、二十代、八百十二才の入浴です。

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