表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/54

命名はいつも閃きで!

書き終わったので即更新!



 「……あ、お客様ですか?いらっしゃいませ!!」


 私が扉に向かって近付くと、相手は奥から顔を覗かせてこちらを窺うようにして、それから直ぐにスタスタと店内へと進んで来た……と言うか、


 「……お客様、つまり経済活動を行う知性体ですね?了解しました。私は連結思考体の外部ユニット。この扉はワームホームで繋がっているのですね、なかなか興味深い」


 ……周囲を見回しながらやって来たその人は、光沢感溢れるピッチピチの紫色のボディスーツで、身体のラインが丸判り!立派な二つのドームみたいなお胸にクイッと上がったお尻。顔立ちはどことなく子供っぽいけど、髪型は……お椀みたいなショートヘアーで髪の色は蛍光グリーンですよ!すっごくサイバーちっくな感じ!!


 「ここは貴女の経済活動を行う施設ですか?そうですか。それではデータ収集を始めます。らしくない言動及び行動を見受けましたら御遠慮無く修正してください」


 「はぁ?はぁ……それじゃ、こちらにどうぞ!」


 「おお!よく参られたのぅ!妾はここの主人(あるじ)のノジャなのじゃ!」


 「主人?つまりこの施設の管理者ですか?そうですか。それではデータ収集を始めます」



 ……何なんだろ、この人、物凄く堅苦しい……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 そのお客様は律儀に背筋を伸ばして椅子に腰掛けると、真っ直ぐ正面を見たまま微動だにしません……つーか、まばたきもしてないんですけど……?


 「何じゃ?緊張しとるのか?まぁ妾のように美しく知性溢れる超常的な存在を前にすれば致し方ないのぅ!!」


 「それでは早速体験を……や、これは失敬、私は大切な事を失念しておりました。ここは何を行う施設ですか?」


 「何を行う?決まっておろう!ここは異世界スナック!食べて飲んで日常を忘れて明日の活力を取り戻す場所なのじゃ!」


 「……エネルギースタンドとデリート機能と回生エネルギー補給設備ですか?そうですか判りました」



 そう言いながら首を左右にゆっくりと動かして、真正面を向いて一言、


 「それではエネルギー摂取を……何故でしょう、妙に情動回路が刺激されます……頭部前面体表温度上昇率25%です」


 言いながらやおら立ち上がってスーツのお腹の辺りをペロンと剥いて、真っ白いお腹の真ん中にあるソケット……いや、そこに有るのは普通ならおへそでしょ!?


 「はて?そなたの(へそ)はまた変わった形じゃのう!穴が二つ開いとるぞ?」


 ノジャが物珍しそうに近付いて指で突っついた瞬間!!


 「あばばばばばばばばばばばーーッ!?」


 バリバリッ!と稲妻が光ってノジャの姿が包まれちゃった!!


 「あ、失礼いたしました、緊急用スタンガン機能が作動したままでした。それとソケットの防水蓋を忘れてました」


 そー言うと、ゴソゴソと胸の谷間から二本の棒が付いた円いコインみたいなのを取り出して、


 「……あふん♪……装着完了いたしました。これで宇宙触手に捕らえられてもヌルヌルローション的な物質が侵入するのを未然に防げます。防水機能も万全です」


 「何なんじゃそちは!!……まったく、死ぬかと思うたぞ!?」


 ケホッ、と黒い煙を口から吐きながら、迷惑そうにノジャが言うけれど……アンタなんで死なないのよ?


 「……失礼いたしました。折角の艶々ストレートがボンバヘッ!になってしまわれましたね、非常にアートな装いで御座います」


 「ノジャ!あなたの頭、完璧なアフロよ!スゴいダンシングヒロインだよ!……てか、なんでパーマ頭になってるの?」


 「ふむ……(頭をわしゃわしゃと触りながら)どうやらこれはこれで悪くないかもしれんのぅ!イメージチェンジじゃな!」



 ……ふっわふわなアフロヘアーのノジャ改めモジャは満足そうに頭を揺らしながら、私に向かってビールで乾杯じゃ!と高らかに宣言した。……何でそーなるの?



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……それではお客様のご来店を祝して……乾杯なのじゃ!」

 「……乾杯……ですか?」


 二人は向かい合いながらカチンッ☆とジョッキを重ねて、モジャじゃないノジャはぐびぐびと流し込むのだけど、


 「……これを摂取するのがこの施設の流儀なんですね、了解しました(カパッ!!)」


 手にしたジョッキを暫く眺めた後、その人は口をカパッと開けて……開けてって!?殆ど後頭部まで口が開いたんですけど!!



  ……じゃぼ~っ!!


 「……炭水化物、水分、不純物……これが【ビール】ですか。大変貴重なデータが得られました」


 一滴残さず流し込んで、コトリとジョッキを置いて、またピシッと姿勢を崩さずノジャを見ています。勿論ノジャのジョッキはまだ空になってませんが。



 「……ぷふぁ~♪って、おおお!!お主、随分と早飲みじゃのう!これは負けていられん!次はハイボールじゃ!」


 「はいはい……ハイボールですねっ、と!……そちらも同じで良いですか?」


 「……承諾いたしました。当方も同じで構いません」



  カパッ!……ざば~っ!!



 「……炭水化物、水分、炭酸、不純物。成る程、実に貴重なデータ収集になります」


 「……くうううぅ~♪って、もう飲み終わったのか!?もちっと味わって飲まぬか!」


 「アンタが言いなさんな……それじゃ、お料理を出しますね?」


 私は二人にそう告げると厨房へと向かい、あらかじめ大皿に載せて蒸しておいた魚をテーブルへと運んで、


 「……まだ完成じゃないから、食べちゃダメよ?」


 「見れば判るわ!妾はそこまで意地汚くないのじゃ!」


 言葉の割りにはフォークとナイフを手に持って待ち構えてるじゃないの?全く……まぁ、それはさておき、山盛りの香味野菜(千切りネギとショウガ、セロリ)をワサワサと載っけて、そこに醤油と調味料をかけてから……


 「さぁ!熱いから離れててね!……あ、それ!」


 「な、何じゃ?ジュージューいって跳ねとるぞ!!」


 「……この高温の液体は……油ですか?」


 そう!正解!!これで完成!!


 「……出来ました!お魚(たぶんスズキ科?)の香味油掛け!!油が熱いから気を付けて召し上がれ♪」


 まぁ、ちゃんと取り分けてあげますからご心配なく!よいしょよいしょとフォークとスプーンで身を骨から外して、まだ熱々の油が染み込んだ香味野菜を載せてノジャとお客様のお皿に……これでよしっ、と!


 「おお!旨そうなのじゃ!……それでは早速いただきますのじゃ……はむっ!」

 「……それでは摂取を…………ふむ、いただきますのじゃ」


 二人は各々のお皿に載った魚の白身と香味野菜を一緒に口へと運び……


 「……むぅ!!もめはもいしいっ!!……ぷはっ!ハルカ!旨いぞよ!」


 「……もぐもぐ、成る程……香味油ですか……この調味料と混ざった物に浸しながら食べる訳ですね。味わいが増して良いですね」


 何食べても旨い旨いしか言わないノジャよりは、こっちの新しいお客様の方が少しは判ってるみたいね?まぁ、普通に食べてれば判るだろうけどね。


 「このサカナと言う蛋白質は、蒸す事によって繊維質が咀嚼する事で容易に解れて良いです。調理法に由来するのですか?素晴らしい調理技術が見てとれます。実に興味深いです」


 お客様はそう言うと、躊躇わずにパクパクと食べ進めています。それにしても真正面を向いたまま、ひたすら食べてます。


 「……その、美味しいですか?」


 「……これですか?味覚センサーを蹂躙する程に複雑な味、そして鼻腔を突き抜けるような深淵なる香気。知性体外部ユニットとして生を受けて初めてで御座います」


 「……知性体?ええっと……お客様はロボットですか?」


 私が戸惑いながらお客様に尋ねると、一瞬固まってから突然、ギギギ……と軋み音を立てそうな動きでゆっくりとこちらを見て、


 【……私は独立知性体。決してロボットでは有りません。ロボットなどと言う非独立性機械と同じ扱い等は愚弄に等しいのです】


 ……この方、明らかに怒ってます。鈍感な私でもはっきり判ります。


 「も、申し訳有りませんでしたっ!!非礼お詫びいたします!」


 私が即座に腰を折って頭を下げると、お客様はこちらの頭にポン、と手を載せながら、 


 「……気に病む事は御座いません。当方は生産されて、未だ三十分程度の未熟な独立知性体です。相互理解しながらデータ収集に努めていきましょう」


 ……何か同情っぽい事を言われたみたいだけど……正直良く判らない言い方です。


 「さて、相互理解の為に初対面の相手から情報収集致しましょう。そちらの呼称を伺っても宜しいですか?」


 「え?あ、あぁ……私はハルカ、ここの調理を担当してます。こっちはノジャ……見た目は子供ですが……」

 「はい、存じてます。肉体年齢と言語及び声帯分析でおおよその推定は出来ています」


 ……あ、そーゆー見方すれば判るのか……流石は、えーっと……ガイノイドってゆーの?


 「……で、あなたのお名前は?」


 「……当方は固有名称が御座いません。勿論、連結思考体からは独立している為、同様の呼称はお避けください」


 「なんじゃ?お主は名前がないのか?やりにくいのぅ……それでは妾が付けてやろう……今からそなたは【ビスケット】と名乗るが良いぞ!」


 ノジャが戸棚の方を眺めながら、バシッと指差して高らかに宣言……なのはいーけどさ、アンタが眺めてるソレ……おやつのココナツビスケットの空き箱だよね?



 「了解致しました。只今から当方の呼称は【ビスケット】と致しましょう。これからも宜しくお願い致します……♪」


 ペコリと頭を下げながら、ビスケット(仮)が私に向かって表情を和らげながら微笑んでくれました。すごいなぁ……ガイノイドってすっごく自然な笑い方出来るんだねぇ……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……で、ビスケットよ。一応聞いておくが、持ち合わせはあるのか?」


 「……持ち合わせ、ですか?……太古の経済活動に於ける貨幣を用いた行動の一つですね。理解しました。しかし残念ながらそのような物は持っていません」


 「……ビスケットよ!それならばジャンプしてみ?」


 「ノジャねぇ……止めなさいってそーゆー下衆な事を言うのは……ってビスケットもジャンプしないの!」


 「……?……了解しました」


 お客様だと思ったら、無一文のガイノイド様でした……まぁ、働いて稼いでくれればオッケーかな?……ただ、ガイノイドって、何が出来るのかな?




 

前回のお話の途中に有った(※)に注釈を付け忘れてました。加筆いたしましたのでこの場にてお知らせいたします。それではまた次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ