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夢の先

いつもの時間に書き終えなかったので、こんな時間に更新します。朝早いですが宜しくです。



 ……決心はしたけれど、手元にある夢見の御守りを触りながら……自分に問い掛けてみる。


 ……お前は本当に、忘れた過去を思い出したいのか?そしてその過去を思い出した時、後戻り出来なかったとしたら、それでも後悔しないと誓えるのか? ……と。



 勿論、答えなんて、無いけれど。





✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「ハルカ! ハルカ! はよ布団を掛けるのじゃ!」


 広々としたベッドに横たわり、手足をばたつかせながら要求する幼女(812才)は、お気に入りの【ハートキャッシュ☆ばるもあ♪】のプリント入りパジャマドレスに着替えて直ぐに寝ようとしていたので、がっしり脇抱えにしながら洗面所へと連行してから歯磨き(ごうもん)してやった。


 それから抱え上げて寝室へと運び、ベッドへと投げ込んでやると跳ねて転がりキャーキャーはしゃいで喜んでいた。ドMだったのか?


 そんな戯れから布団を被せろと要求してきたので、しっかり顔まで被せてから、


 「……最近は飲み過ぎ食べ過ぎ寝なさ過ぎだったから、今夜はしっかり寝てもらうからね? はぁ~、まったくもう……ほら! 寝冷えするから腹巻きしなさい!」


 「うむぅ……ハルカは細かいのぅ……そんなでは嫁の貰い手を探すのも一苦労じゃぞ?」


 ……なんて言い返してくるし……いちいち細かいのはどっちよ?


 ……けれど、基本性能は幼女だから、布団被せて五分もするとスヤスヤ寝息を立てる訳で……。




 「……これで酒癖悪くなきゃ、カワイイんだけどさ……」


 そんなことを言いながら額に懸かった前髪を払い、眠るノジャを眺めてみる。


 やや広くて形のよいおでこ、長く柔らかい黒髪は絡まないように束ねて二房にして両端に分けてあり、すっ……と筆で描いたようにしっかりとしながら細く伸びる眉にすっと形良い鼻筋……そしてツン、と桃色の唇……。


 もし、このまま成長したら間違いなく異性の願望を一纏めにした、理想的な容姿そのものに違いない顔立ちだろう……でも、



 「……ふみゅ……ハルカぁ、はよ妾に卵とじを寄越せ……なのじゃ……」


 ……寝ている時まで食い物の事を寝言で呟くし、




 「……そこはぁ……でりけーとな所じゃぞ……肉まんの裏側はぁ……」


 ……言いながらボリボリと脇腹掻きつつ、掛け布団を足で蹴っ飛ばし、




 「……妾は……イチゴはさいごに食べるしゅぎなのじゃあ……」


 ……つーか、コイツってば食い物の事しか喋ってない!たまに口元をモグモグさせてるのは、夢の中で何か食べている夢なんだろーか?




 仕方がないので足元に蹴り飛ばした布団を掴んで掛けてやると、モゴモゴ言いながら満足げにニコニコしてる。と言うか、物凄くニコニコしてる……。



 「……ホントはコイツ、起きてるんじゃないの?」


 私はそう呟きながら、むにぃ……と力の抜けたノジャのほっぺたを引っ張ってみる。柔らかなお餅みたいにむにゅ~と伸びた真っ白な肌が美味しそう……


 「……むにゃ?……ふぶぅ……すぴぃ~、ふぶぅ……」


 起きるかな?と思う反応だったけど、されるがまま状態で寝息を立ててる。起きない。それじゃ、いただきま~す♪


 ……はむっ、とほっぺたに甘噛みしてみると、ほんのり塩味の柔らかお餅さん……って、私は何してるんだろ……?


 でも……ノジャの良く伸び~るほっぺたが悪いんだよ、ホント。


 ……それにしても、もちもちしてて……白くて……フワフワで……





 ……でも、指先に触る夢見の御守りのカサリ、とした感触が…………


 ………………

 …………

 ……








 ぽたん、ぽたん、ぽたん、ぽたん、…………


 カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、…………





 ……っ!?



 ……ここ、何処っ!?


 ……雨垂れの音?




 ……いや、違う……()()()()()()()()()()()なんて、寝室で聞こえる訳ないじゃん!



 それにあの秒刻みの音……時計の音!……ノジャの生活圏には時計は無い!!


 ……じゃ、現世に舞い戻ってきたの?……いつの間に?




 ……、……!?……か、身体が動かない……金縛り?


 ……ううん、違うわ……この感じ、()()()()()





 ……()()()()()()()()()()()()()()()




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 冷静になってみると、音は聞こえるし、ゆっくりと眼を開ければ……うん、天井も暗闇の中でもうっすらと見える。


 見覚えの有る木目調の合板に、木枠の継ぎ目……蛍光灯の形も記憶と同じ。


 ……ここ、あの頃住んでいた、私の部屋だ。


 ……でも、周りの住人とも交流無かったし、仕事と恋愛に忙しかったから、住民票確保の為と、時々仮眠する為に戻る場所……だったな。




 そう……管理栄養士の資格を取る為に試験受けてて、やっと合格して……仕事見つけて……それで……


 付き合ってた彼に、突然……振られたんだ。



 ……私の一方的な理由で彼を振り回して、散々はぐらかし続けて……やっと同棲出来るようになったから、一緒に住もうって話をしたら……




 【……君とは一緒に暮らさない。新しく好きな人が出来たから……】


 ……そう言われた時、嘘でしょ? って信じられなかった。だって五年間も付き合ってて、お互いに両親が居ない事も判ってて、ややこしい人間関係も希薄だったから、それがいいんだよね、って理解してた筈なのに……


 ……新しい相手が、私の職場の後輩で、両親が居て持ち家で一人娘で可愛くて愛嬌があって……時々《新しく彼氏が出来た》ってのろけられてて「あら? よかったじゃない! 今度紹介してよ~?」と言ったら微妙な顔されて……




 ……「年上だから結構フケて見えるよ?」って言われて……私より彼が一才だけ年下だったから……遠回しにオバサン扱いされたみたいでショックで……




 ……全部、全部……もう、嫌になって……


 ……死にたくなって……浴びる程お酒飲んで……水も食べ物も口にしないで……




 ……そう、力が入らない……身体が動かないこの感じ、あの時と全く同じ……粘膜が乾燥して呼吸が苦しくなってきて、冬でも無いのに唇がひび割れて切れて血が出て……


 ……寒くて寒くて、お腹が空いて……喉が渇いて悔しくて口惜しくて……惨めで悲しくて……死にたくて、死にたくて……





  【……お主、そんなに死にたいのか?】


 ……そんな時、幻聴が聞こえたのか?と、思ったんだ。




暫くの間、ハルカの記憶を辿るお話が続きます。それでは次回もお楽しみに!

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