王様と王様ゲーム!!
「王様ゲームをやるのじゃッ!!」
「……あの、俺って王様なんだけど一応……ねぇ、聞いてます?」
ノジャが高らかに宣言し、傍らのゴルダレオス王が冷ややかな視線を向けながら手を振って彼女の気を引こうと努力してたけど、諦めて手を下げちゃいました……。
「王様ゲーム? ……王様が居るのに、ですか……?」
傍らのフィルティさんが怪訝な顔をしているけれど、そりゃ彼女の言い分はもっともだよね……
「何ですかそれは? ……王様……いや、そこにおわす方は本物の王様なんですよ? そんなお方を蔑ろにするなど正気の沙汰ではありません……」
アミラリアさんの皮肉たっぷりな言葉に、私も同意しときます……それはともかく……
……ノジャ、あんた飲み過ぎなんじゃない?
「キャハハハハハハハッ!! さー始めるのじゃ!!」
一際高いテンションのノジャは、全く気にせずに割り箸を振り回してます。うーん、通常営業だなぁ。
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……ちなみにノジャにせがまれて古本屋で手に入れた「決定版! パーティーゲーム大全集(合コン編)・平成14年発行」と言う有りがちな表紙の本を翻訳させられながら教えたので、子供向けのゲームが皆無なのはご愛敬……あはは。
さて、割り箸の後ろに1から4までの数字を書き込み、最後の一本には赤い印を入れてある(私が全部作ったんだよなぁ……)。それをゴショゴショとコップの中でかき回しながら各自が掴む訳で……何で私までやらされてるんだろう?
「何じゃハルカ? 不満でもあるのか?」
「……あのさ、私が混ざったら誰がお酒のお代わりを出すんですか?」
おぉ!! 気付かなかったのじゃ! ……じゃないでしょうに。
……一旦厨房に戻った私はトレンチにお酒を載せて、次々と渡してあげます。
えーっと、ノジャはハイボール、ガチの王様はウーロンハイで、アミラリアさんとフィルティさんは巨峰サワー……って、二人とも馴染むの早くない?
「じゃ、ゲームの前に乾杯~なのじゃ!!」
「うぃ~!!」
「か、乾杯!」
「乾杯!……ほぅ♪」
ノジャ以外の三人は、何となくヤケになってる気配が……さて、そんな面々がさっきの割り箸チョイスからの……
「……いっせ~の、せっ!!」
①→アミラリア
②→ノジャ
③→フィルティ
「……あっ!俺が王様……だと!?」
王様が王様ゲット!! したけれど……
「ん~、どうしたらいいんだろ……」
やっぱり……困ってますね。いきなり命令権貰ってもそう簡単に決められる筈が……「それじゃ①と③、ポッ○ーゲーム!!」……は、はぁ~ッ!?
見ると王様、何やらカードみたいなものを読み上げて御満悦! ……どうやらノジャがババ抜きよろしく用意したカードを引かせてみたらしいけど……、
「ほりゃ! ①と③は早ようこれの両端から同時に食べるのじゃ!」
ノジャが指先に摘まんだ棒状チョコビスケットをプラプラ振ると、アミラリアさんとフィルティさんの二人が困惑しながら仕方なさそうに向き合って……「何をしとる! くわえたら眼を瞑るんじゃ!!」
「ハイッ!? そ、そんな……」
「……ゲームなのよ、そう……ゲームなんだから……」
暫くモジモジしていた二人だったけど、いきなりフィルティさんが立ち上がり、私のそばまで駆けてきて、ヒソヒソ声で耳打ちしてきます。
(すいません! ……一番強いお酒をくださいッ!!)
(は、はい……それじゃ、ヴォトカでいいですか?)
(……それでいいです!!)
手渡した火が点きそうなアルコール度数のショットグラスを一気に煽り、
「……くうううぅ~!! よっしゃあ~ッ!!」
……と、気合いを入れて向かい合った椅子に腰掛けて、フィルティさんは○ッキーをくわえながらフンフン、フン!! とアミラリアさんを手招きしてます。さっきまでと何か違う気がしてなりません……。
「それじゃ、開始なのじゃ!!」
「ボリポリッ!! (フィルティ)」「ふみゃあ!!あぐぐぐぅ~!! (アミラリア)」「ポリむちゅッ!! (フィルティ)」「ふぅ!!むぐぅ!! (アミラリア)」
……はい、想像通りに勢い良く食べ進めたフィルティさんが、遠慮がちにくわえたアミラリアさんの唇に勢い良く噛みつきました……何なんです、これ?
「……俺、ポッキ○を見る度にこの映像を思い出すのかなぁ……?」
王様がそう言いながらハイボール飲んでますが、異世界には間違いなく無いでしょ? ○ッキー。
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……二回目は、勢い良く引き抜いたフィルティさんが王様で、アミラリアさんと王様が【お酒当てゲーム】。
「が、ガムシロップ入り水とヴォトカを見た目だけで判断しろってのか? 出来るかそんなもん!!」
とか言いながらも、男らしくがっしりと掴んだコップを持ち上げて、傍らのアリタリアさんに眼で(……それじゃ、先に逝って待ってるぜ?)と告げてから、腰に手を当てて中身を一気に……いや、負けじとアミラリアさんもゴクゴク……!
「うおっ!? ……せ、セーフッ!!」
「ふぶぅっ!! ……の、喉が焼けるぅ……」
各々がそんな言葉を発しながら、一杯目をクリア……いや、このゲーム、二杯のどちらかがヴォトカだから、必ず一人はきっつ~い高濃度アルコールが直撃するのかぁ……うわぁ。
「……ぶふっ! ぐぅあっ!! やばいよ絶対コレぇ!!」
「甘い……甘いわぁ……ウフフ♪」
……ゴルさん直撃、でもアミラリアさんもかなり壊れて来てる……こうして一度目は回避出来たゴルさんだったけど、二度目は撃沈。
三回目……各々が目配せしていた二回目迄とは違い、フニャフニャしながらアミラリアさんは吸い寄せられるようにグラスを掴み、躊躇無く煽ってます。
「……甘い、でも何故かホッと出来ない自分が居る……」
「くうううぅ~!! いじでんじよぅくあたぁ!!」
ああ、アミラリアさん直撃轟沈!! 既にへべれけだった所に過酷な追い討ちです……椅子からずり落ちて、紺色のローブも着崩れて太股丸出し……何故かそのまんま手を伸ばしてゴルさんのエプロンを奪い取るとグルグル身体を回転させて、くるまっちゃいました。
結局この後、酔いが極限まで到達したアミラリアさんがゴルさんの手拭いを奪おうとし始めたので、私が止めて今回はお開きに……。
「いやあああぁ!! わたちぃ、おーちゃまのてにゅぐいぃ、ほしいぃのぉ~!!(ゴロゴロゴロゴロ……)」
「いやいやいやいやっ!! 全員女性の前で全裸は無理! 絶対に無理っ!!」
アミラリアさんが横たわったまま、ゴルさんの手拭いに掴まってローリング奪取(身体を横回転させて物を奪う方法・ワニが肉を食い千切る際に良くやる)を始めたので、みんなで引き剥がしてから、後日集金に伺うと伝えて、全員お見送りいたしました。
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「……はぁ、疲れました……」
つい口から溜め息が漏れちゃうけれど、ゴルさんはフィルティさんと二人でアミラリアさんを担ぎ、自分の城へと帰っていきました。フィルティさんも王都に戻れてホッとしたみたい。担がれて行きながらアミラリアさんは満足そうに手足を振り回して嬉しそうでした。……少しは気が晴れたかな?
ひとまずテーブルを片付けようと洗い物を纏めていると、ベルは鳴らなかったのに扉が開いたような気がして、視線を入り口に向けたけれど誰も居ない。変だなぁと思いながらノジャはどこに? と見回して見ると、
「……勝手に入ってごめんなさいね?」
……カウンター席の端に、一人の女性が居た。軍服みたいな格好してるけど、お酒飲む所だから怖いヒトじゃないのは判る。でも、まるでソコに最初から居たかのように当たり前のように座っていた……でも、何なんだろう……
(……この方……ノジャみたいに違う世界のヒトみたい……)
「ここ、スナックよね? ……だったら、ビール頂ける?」
短めのカールした髪の毛が、まるでマッシュルームみたいなその人は、目元が見えないままで私に注文してきたけれど……、
……こんな時にノジャったら何処に行ったのやら?
続きをよろしくお願いします!!




