ドリーム・ショップ
「…オーナー、お客さん来ませんけど」
重なった2人の声が響く。
「そうだねぇ。…月、星。誰か来たみたいだよ」
店のドアの鈴が鳴った。
「いらっしゃいませー」
「お客さんも来た事だし、自己紹介をしようか。僕は風夜昴。こっちの双子は、月と星。…あなたは?」
昴はドアの前にいる少女に話しかけた。
「あ…私は、鈴架空です。あの…ここは?ここはただの空き家だったはずなのに…」
「ここは、願いをかなえる店「夢&夢堂」です。この店は、何か願いがある人のみ入ることが出来ます。あなたも何か願いがあってここに来たのでしょう?」
動揺している空に昴は静かに言った。
「私…好きな人がいるんです。でも、その人は学校の人気者です。なので、私みたいな人には話しかけることもできないんです。だから、勇気を出して話しかけられるようになりたいんです」
空はみためからして、気が弱そうだった。
「そうですか」
昴は言った。
「オーナー、アレがいいと思いますけど?」
双子の月が言った。昴はうなずくと、店の奥へと姿を消した。
「あった。これだね?」
月はうなずいた。横で星もうなずく。
「空さん、このビンに入っている葉をお風呂にいれて入浴してください。次の日には勇気がわいてきて、話しかけれるようになりますよ。でも、あなたの気持ちも大切ですので、頑張ってくださいね」
「あ…ありがとうございます!」
「そうそう御代をもらわなければいけませんでした。御代は…あなたのかばんのキーホルダーでもいいですか?」
昴は空のかばんを見て聞いた。
「はい。どうぞ」
空はすぐに渡した。
「ありがとうございます。では、頑張ってくださいね」
空は、昴達にお辞儀をして店から出て行った。
空は家に向かって歩いていた。
「これ…ホントに聞くのかな?自分の気持ちが大事っていってはいたけど…
てか、これ紅葉の葉に似ているんだけど…?」
もらった葉をかばんから取り出しながら言った。
「まぁ、やってみよう!」
その日空は葉を入れて入浴した。
次の日。
空は学校に向かう途中その人に会った。
(勇気を出して!)
どこからか、そんな声が聞こえたような気がした。
「お、おはよう!!」
「はよー。て、同じクラスの鈴架さんじゃん。初めてだね、話しかけてくれたの。
これからはもっと話しかけてね」
その男の子は笑いながら言った。
「うん!」
(私…こんなに勇気出せたんだ…)
それ以来、空はその人に話しかけられるようになった。
「あーぁ、あの葉…もったいなかったなぁ…珍しい葉だったのに…」
星はしゃがんで床にクルクルと円を描いていた。
「まぁね。3ヶ月に一度しか取れない葉だから…」
月は窓の淵に座りながら言った。
「ふっふっふ。あんなに貴重な葉を渡すと思うかい?」
昴は静かに笑いながら二人を見た。
「まっ…まさか!」
月と星はそろって声をあげた。
「言ったでしょう?気持ちが大切だって。あれはただの紅葉の葉。
あの話も全部嘘」
「オーナー…いつか、やるだろうとは思っていたけど…」
月が昴の顔を見た。
「ホントにやるとは思って無かったよ」
星も昴の顔を見た。
「だって、もったいないんだもん。取りに行くの面倒だし」
「だってじゃない!」
月と星は二人そろって店に声を響かせた。
「落ち着いて、月、星。次のお客さんみたいだよ」
月と星はお客さんと聞いて静かになった。
「いらっしゃいませー!」
END