#5 対照
「ったく、ボクはいいと思うんだけどな。美唯一等。」
任務を完了したボクは日暮の正門をでて駅に向かう。すると、
「一等星。オレはその星を頂点と呼ぶ。」
先程の黒髪の男が話しかけてきたのだ。容姿はボクとほとんど変わらない。にしても論旨が意味不明だ。
「オレの名前は月輪。君のことはよく知ってるよ。芦花星匆一等だろ?」
「ああ」
「その美しい翼と牙。オレの本能を疼かせる。その存在がッ…!」
すると突然、月輪は目の色を変えて翼を現した。彼もナチュラルバイオリィなのか。ボクもそれに応えるように生物力を構えた。
「馳せるぜ。気管支。」
凄まじいスピードで突撃してきた。ボクは咄嗟に光剣を構え、ガードする。
「何の真似だ?」
「いい。実にいいよその生物力。今度は一緒に戦おう。オレも一等兵だぜ」
そう言うと月輪は去って行った。
一方、心勿は公言通りイキリアイドルに物申していた。これはきっと処女の嫉妬だろうから黙って見ているとしよう。
「今度星匆一等に近づいたら許さない」
黙って見ているのは止めにした。
「ほう?もしや彼氏さんだったとか?」
「いや違う。ボクは妹いるから女絡みいらん」
この決まり文句を使ったのは、今年初めてである。因みに一年前に中学の後輩からストーカーされたときも同じことを言った。
「だってさー!」
美唯一等の方がまだ物分かりがいいと思う。
「べ、別にそんな意味じゃないし。てかなんで星匆一等がいるのよ。帰ったんじゃないの?」
「お前ら連れて吉祥寺に戻るように言われたんだよ。行くぞ」
「「はーい。」」
やはりチビ二人はチョロいな。まるで飼い慣らされた柴犬のようだ。
今回の功績は間違いなくハリー一等と月輪一等だ。ボクは大して目立ってないし、他のメンバーも足引っ張り過ぎだ。
全員が吉祥寺の生物力研究所に戻ると、軍官もミーティングルームに入室した。そして長々しい状況報告を流して今日の仕事は終わり
「月輪、星匆、斗後、心勿、残れ。」
ワルイコトシタッケ。そして他は皆釈然として帰ってく。軍官はテーブルに体重を乗せる。女子二人が若干ビクッとするぐらいの威圧感だ。
「今日のMVP。昇進だ。」
ソノカオデイワレテモ。
「オレは特に何もしてないですが」
「rank9を単身で討伐したそうじゃないか。テメェと星匆一等はこれから高等兵だ。あとそこの女二人は一等兵。」
皆そわそわしてるけど、その分仕事も重くなるんだぜ。ボクは多分教育とかに回されるんだろうな。