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#3 隠密

国家は残酷だ。具体的に言うと、あの後ボク達は合格として解放されたが能力不足により害獣を倒せじまいの対策兵達は如何せんまだ戦闘中だそうだ。しかしとはいえ、もう夕方7時だな。

「ねぇ」

やっと目を覚ましたか、心勿。

「私を助けたのはその…自分の意思なの?」

「違う。君を助けたんじゃなくてボクにとって都合の悪い害獣を倒したんだ。」

「じゃあ私を担いでる必要なんかないよね?さっさと下ろしてくれん?」

たしかにその必要はなかった。これは無償のサービスだからな。だが、

「あのな」

「?」

「たしかにボクが君を担ぐ必要はない。でもボクのサービスを君が拒否する権限もないだろ。結局足引っ張ったのも勝手に適当な予測してボクの目の前で無様なもん見せやがったのも心勿じゃないか!別の分野で君が優秀なのは分かるけど、せめて人間として最低限のモラリティぐらいは思慮に入れろよ!このクズ!」

少し口調を強めてしまったが、仕方ない。

「じゃあもう好きにしてよ!」

「ああそうするよ。覚悟してろモブ」

ボクはそう言い放ち、担いでいた心勿を下ろして走り去った。もう何も考えたくない。心勿が涙を浮かべていたのを、ボクは今すぐにでも忘れたい。


「合計750円となります。お買い上げ有難うございます。」

吉祥寺駅構内のとあるコンビニで、缶コーヒーを5本ぐらい購入する。いつもはそんな馬鹿みたいなことしないのに。


公園口の改札を通り、青梅方面の中央特快へと駆け込む。

「よっ!」

バッタリ湊と遭遇する。

「あれ?元気ないな。なんかあったのか?」

「いや、ちょっと勉強疲れ」

もちろん、湊にもこのことは黙秘だ。これは国家の企業秘密だからな。

「そっか。何かあったら絶対言えよ!お前ほんと弱虫なんだからオレがいないとダメだもん。」

「ほんとありがと!ボク達友達だもんね」

「当たり前だろ!一緒に帰ろうぜ」

しかし、どうして地元からかなり離れた吉祥寺にたまたま湊がいたんだろうか。まぁ偶然だろうな。


ボク達の地元とは立川である。因みに、国防省には対策兵管理用として住所ケータイ番号職業を報告している。

「んじゃ、明日体育だから着替え忘れんなよ!」

着替え…。

「ん?どうしたんだ?」

「いや、何でもない!忘れないから安心しろ!お前も忘れんなよ!」

「オレが忘れる訳ないだろっ!」

湊とは手を振って別れた。ボクは澄ました顔で帰宅する。


帰ってシャワーを浴びて食卓を囲み夕飯を食べる。この日常の一つ一つが儚く感じるのだ。

「…明日は体育か。運動は大切だよな。」

ベッドに就いて、ゆっくり眠った。


…翌朝、やけに騒がしいテレビの音でボクは目覚めた。

「にーちゃん、今日休校だって。なんか外部侵略…?がきて標的をにーちゃんの学校に定めたらしいよ?」

日暮を襲撃するのか、害獣!

「にーちゃん?」

「友達と話してくる」

と真っ赤な嘘を付き、身支度をして家を飛びだす。すると、ボクのスマホから突然着信メロディが鳴る。国防省からだ。

『まず芦花君には、おめでとうを言いたい。君は今日から一等兵だ。二等兵の冥土君とパーティを組んでもらう。』

「もしや今から出撃?」

『その通り。早速研究所に来て頂きたい。交通費は支給する。』

「了解です」

電話を切り、至急吉祥寺に向かう。


研究所には、昨日の約半数ぐらいの対策兵が集まった。その中には昨日の小学生の女の子もいたのだ。

軍官が入室する。

「さて、紛れもない本番だ。相手は数匹の軍団。訓練の経験を生かし、一掃してほしい。また、今日集まって頂いたのは昨日の最終試験の際に上級の戦闘を見せた者だけだ。期待している。」

ナチュラルバイオリィもいるのか。

「武器は対戦車ライフル、地雷、レールガン、光剣、クロスボウガンなど、様々なものを用意している。好きな物を持ってけ。以上、目的地は都立日暮高等学校。」

さて、ライトソードを手に取り行くか。


ボク達は流れて乗車する。無論、私服だから誰にも気づかれない。

「何?」

「お前とパーティなんだよ。文句ある?」

「別に」

相変わらず、犬猿の仲だ。それに心勿の服装は全く変わらないのだ。人格を表している。

「実は日暮ってとこ、ボクが通ってるとこなんだ。」

「ふーん。まぁまぁ頭いいのね。」

もう少し反応が欲しい。

「芦花のおにーちゃん、一等なの?」

例の小学生だ。

「ああ、そうだよ。」

「すごいなー。一等兵って今4人しかいないんだよ?」

それは初耳だ。

「斗後ちゃん、そいつスケベだから気をつけて。人の裸見てヘラヘラしてる奴だし」

「スケベ?」

勝手に話が進んでいるが、全くヘラヘラしていない。どうでもいいからほっとくか。

「芦花のおにーちゃんはそんな人には見えない。」

「そうなのねー。」

どうでもいい。これから戦争だというのに、この有様なのはまずくないか?


あからさまな登場というよりは校庭でボク達を待ち構えているようだ。ボクは一番奥の赤いドラゴンのような害獣を相手することにした。必然的に二等兵の心勿もそいつの相手だ。

「お前ら、俺の名前はハリー。これより一等兵の俺が指揮をとる。」

何故か知らんが拍手が起こる。

「まず、標的を決めたパーティは先に出撃。決まっていないのは俺と一番強そうなそこの仮面害獣を殺るぞ!」

なるほど、たしかに強そうだな。

「心勿、赤いドラゴン行くぞ」

「あれは初速型のナチュラルバイオリィには不向き…」

「黙れ二等!行くぞ」

「…」

因みに心勿の指摘はあながち間違っていない。しかし、逆に赤いドラゴン以外の害獣は心勿のスピード重視のスタイルに不向きなのだ。と軽く説明して納得させた。


さぁ勝負だ害獣、そして国家。

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