第85話
ショーラについて行くと、先ほどの大通りに出てきた。
「この道を進んでいくと俺の知り合いの店があるんだ。あんまし愛想のないじいさんだけど、帽子作りは上手いんだぜ」
ショーラは頭の後ろに腕を組み、軽快な足取りで進んでいく。周りは服や野菜、果物に武器などを売る店ばかりになってきた。ジェリダは自身の耳に集中して、何か有益は噂はないかと探る。
『シュヒラの婆さんがこの前なくなったんだとさ』
『俺今度、ザフルに結婚を申し込むんだ』
『あー明日も仕事かー。あのクソ親父ほんとにこき使うんだよなー』
知り合いと話す声、ぼやき、店に呼び込む声、様々な声が聞こえてきて頭がぐるぐると回りそうだ。だが、戦に関する話しは聞こえない。
(こんなところで話す様なのはいないか・・・・・・。いるとすればこの町の情報屋なんかが集まるところだろうけど、私が言っても聞けないか)
「着いたぞ! おーい、ターヒルじいさーん。お客連れてきたぞ―」
ジェリダが何か戦に関する情報が聞けそうな場所を思案していると、ショーラの知り合いの店に着いたらしい。ショーラはタヒールという人物を大きな声で呼ぶ。
その店は確かに帽子がいくつも置いてあった。つばが着いたものから球を半分にしたような帽子など、色も形も様々だった。店は露天になっており、店の奥で帽子を作っている人物がいた。
「何だ、ショーラか。どうぞお客人、好きなのを選びな」
ターヒルという店主はかなりの高齢のようだった。髪は全て白くなり、垂れ下がったまぶたで目の半分が塞がっているように見えた。だが、ジェリダ達を見て声を掛ける辺り、目は見えてはいるようだった。
「どれがいい、セリオ」
「色がたくさんあるから悩むな~」
このカラル国の人々が来ている服と似たような色合いの帽子が多く、とてもカラフルだ。うーんとセリオが店の帽子を見て悩んでいると、一点で目を止めた。
「あれがいい!」
そう言ってセリオが指さした帽子は色のついたほかの帽子と違い、素材である藁の色を残したものだった。少し短いつばがつており、日差しから守ってくれるだろう。
「ああ、それは色を後でつけようと思って残してあったんだが、このままがいいのか?」
どうやら仕上げがまだの帽子だったらしい。ターヒルはセリオが指さした帽子を手に取り、頭にかぶせてくれる。
「うん、大きさもちょうどじゃな。作りかけだ。そのまま持って行けばいい。金は取らんよ」
「え、でもそれじゃ爺ちゃんが損するんじゃ…」
セリオがそう言うと、コツンと軽くセリオの頭に拳を押し込む。
「小さいのがそんなことを気にするもんじゃない。こういうときはありがとうと、素直に言えばいいんだ」
「あ、ありがとうございます…」
「うんうん」
ターヒルはそのしわしわの目をさらにしわくちゃにして微笑んだ。ジェリダもルベルもターヒルに礼を言った。
「じじいのお節介だ。礼はいらんよ」
そう言ってターヒルは店の奥に戻って行く。
「よかったな。これで倒れる心配もなくなったか。あ、自分たちが泊まる宿の場所とか分かってるか?」
「はい。大丈夫です。色々とありがとうございました」
ジェリダはよそ行きの顔でショーラに礼を言った。
「そうか。ならよかった。だが、今度はあんな路地を通ろうとしないこと。いいな。それじゃ」
ショーラはそう言って去って行った。ショーラには宿が決まっていると行ったが、まだなので、今度こそ宿を探しに歩き出した。
大通りに面した宿屋に入り、三人部屋を借りることができた。部屋に案内され、一息つくと、ルベルがジェリダに話しかける。
「あのショーラさん、いい人でしたね」
「そうだね。でも、あの名前も性別も偽りだった」
「え?」
ジェリダはあのショーラが屋根の上から飛び降りてきたとき、素早くステータスを見ていた。
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名前 シャラーラ・タバ
職業 王族
種族 人間
年齢 15歳
称号 第21王女
LV 29
HP 426
MP 411
《スキル》
剣術 LV 4
護身術 LV 6
体術 LV 5
《固有スキル》
なし
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「勝手に男の方だとばかり思っていました……」
「ショーラは女だったのか!?」
ルベルもセリオもそれぞれ驚いていた。
「ですが、どうして王女という身分の方が男装をして、しかも男と偽っていたのでしょう?」
「王族の酔狂なのか、何か目的があるのかは分からない。まあ、それなりの理由はあるんでしょうけど、私達には関係ないし」
王族は変わり者が多いなと思いながらジェリダはベッドの上に寝そべる。
「流石にちょっと疲れた…。ルベル、セリオ、今日はもう自由にしよう。私は寝るから起こさないで…」
ジェリダはそう言って鞄と靴をおろし、もぞもぞと布団の中に潜り込んでいく。そして、数秒で規則正しい寝息が聞こえてきた。
「やはり、ずっと多忙で疲れていたか。セリオ、とりあえず荷物の整理をしよう。それが終わったらそうだな…外に出て観光でもしようか。これだと多分、ジェリダ様は明日まで起きないはずだから、夜は外にでも食べに行こう」
「分かった!」
「しーっ」
セリオははっとして口を押さえる。そしてそっとジェリダの様子をかがうが、特に起きたような様子はない。
ジェリダを起こさないように気をつけながら、二人は動き始めた。
次は少し開けて、3月16日21時です。




