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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第五章 カラル国編
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第82話


 レントの父親は三人の前の椅子に腰かける。だが、かなりの高身長だからか、座っていても威圧感のようなものが大きく感じた。


 目元は彫が深く、三白眼なせいか厳しい表情をしているように見える。口と顎に髭を生やしているが短く綺麗に整えている。


「ピオも元気そうで何よりだ。お前が専門とする鉱物の方、調子はどうだ」


「ええ、元気にレントの面倒見てます。鉱物の方は…まあ、ぼちぼちですかね」


「おい、余計なこと言うなよ」


 レントがかなり会うのを嫌がっているので、かなり厳しい言葉からかけられるのかと思えば、そうではなく。以外にも普通の父親といった会話から始まったことに、ジェリダはやや驚いていた。


 そして、レントとピオに軽く言葉を交わしたレントの父親はその視線をジェリダに向けた。


「ほったらかしにしてすまない。私はディオン。君がこの二人とともにポーションづくりをしていたジェリダさんだね。君のうわさは王都にも届いている。最年少でAランク冒険者になった少女がいるとね」


 ジェリダの名前は王都だけでなく、地方の冒険者も知るところとなっている。Aランク冒険者というのはなかなか誕生するものではない。それがまだ十代の少女となれば噂は駆け巡るというものだろう。


「噂は噂です。で、今日はどうして呼ばれたのでしょうか」


 ジェリダは単刀直入にディオンに問いかける。ディオンは特に気分を害した風もなく口を開いた。


「いや、私はただ見てみたかった。私の家の者は一人で実績を上げなくてはならない。まだ小規模ではあるが、こちらが作成しているポーションよりも質のいいものを安く売っている。それでも私は十分な実績だと思う」


 レントは父親から発せられた言葉が意外すぎて驚いた表情をしている。レントは今回の呼び出しはポーション販売の邪魔をしたとでもいわれるのかと思っていたのだ。


「今、君たちの売っているポーションはホロルの冒険者ギルドでも売っているそうじゃないか。冒険者の評判もいい。そこは何か思惑でもあるのかね?」


 こくりと、ジェリダは頷いた。


「私は冒険者ギルドと錬金術ギルドは協力し合うべきだと思っています。錬金術ギルドが組織内で技術の秘匿を一番にしているのはわかります。ですが、ここ最近は魔物の発生率や強さが上がってきていると聞きます。

 錬金術ギルドの技術を冒険者の者と共有または活用できれば、冒険者がより戦いやすくなり、錬金術ギルドにも利益は生まれます」


 ジェリダはそう言い切った。その真剣なまなざしにディオンはやや目を見張る。


「その言い切り方、冒険者ギルドのお使いでもしているのかと思っていたが、そういうわけではなさそうだな。それは君自身の考えだろう?」


「はい。私はレントにポーションの話を持ち込んだ時から、冒険者ギルドと錬金術ギルドは手を取り合うべきだと考えていましたから」


「ふふふ、なら、こうやって私に会うのも予定の内だったと?」


「いずれはこうなるのを望んではいました。予定より早かったですが」


「なるほど、だが、大きな問題があるのは君もわかっているだろう?」


 ディオンはスッと空気を変えた。先ほどまでの穏やかな空気は一瞬で去り、鋭い空気が流れる。


 ディオンの言っている大きな問題、それは冒険者ギルドと錬金術ギルドは深い確執があるということだろう。ほとんどは錬金術ギルドが頑なに技術を秘密にしたがったのが原因ではあるが、長年の溝だ。そう簡単には埋まらない。


「錬金術ギルドと冒険者ギルドの溝の深さは知っています。ですが、私のように協力しあうことも簡単にできた。そして、生産性も上がった。ですが、心配はいらないと思います。その溝は近々、埋めざるを得なくなるかと思います」


「ほう。その根拠は」


「今はお話しできません。でも、溝は埋まります。必ず」


 しばらくディオンはジェリダの真意を探るように黙っていたが、ふうと息をついた。そして、レントの方を見やった。


「レント、いいパートナーを見つけたな。お前たちは我が錬金術ギルドと冒険者ギルドを結ぶ懸け橋になるかもしれないな」


 そういってディオンは立ち上がる。それに倣って三人も立ち上がった。


「話ができてよかった。君が言っていた言葉、実現することを私も望むよ。レント、ピオ、またこちらに戻ってきてゆっくり話をしよう」


 そう言ってディオンはレントとピオの頭をわしゃりと撫でた。


「では、私は打ち合わせがあるので失礼する。レント、元気でな」


 ディオンは部屋を出て行った。残された五人はしばらくディオンが去っていった方を見ていたが、最初に口を開いたのはレントだった。


「けっ、なーにが元気でな、だよ。ったく。ほら、もう用事は済んだし帰ろうぜ」


 レントは出口の方へ向かう。そんなレントの様子にピオはにまにまと楽しそうな顔をする。そして、隣にいたジェリダにこそっと声をかける。


「あれね、レントお父さんに褒めてもらって嬉しいんだよ。素直じゃないけど、耳が少し赤くなってるでしょ」


 言われてみてみれば、もう背中を見せているレントの耳はうっすらと赤くなっている。もしかしたら顔も少し赤くなっているのかもしれない。


「ピオ! なんか余計なこと言ってないだろうな!」


「言ってないよ~」


 飄々とした返事を返し、ピオはレントの後に続く。ジェリダはずっと立っていた二人を振り返る。


「足疲れてない? 大丈夫?」


「ええ、俺は大丈夫です。セリオは……」


「俺も平気だ!」


 強がってはいるものの、セリオはやはり疲れたのだろう。表情に疲労と、よくわからない話を聞いた気疲れが見て取れた。


「今は宿に戻って休もうか。少ししたらお昼だし、外で食べよう」


「はい」


「俺は肉がいい! です!」


「はいはい」


 ご飯の話になると急に元気になるところはまだまだ子供だなと思いつつ、ジェリダたちも応接間を出た。


 あの騒々しい所を過ぎ、外に出る。やはり外に出ると防音の技術を施しているのか、まったく中の喧騒は聞こえなかった。


「じゃあ俺たちの用事は済んだわけだが、ジェリダたちはまだ王都に用があるんだろ?」


「王城にちょっとね。もうすぐに帰るの?」


「僕はちょっとこの辺の店を見て回りたいかな~。レントも見てみたい店あるでしょ?」


「ああ。俺たちは今日買い物なんかを済ませて、明日の朝には帰る。お前が冒険者ギルドと錬金術ギルドの懸け橋にしたいポーションの作成なんかもしないとだしな」


 もうこの時にはレントの耳は元の色になっていた。ジェリダは照れているレントの表情が見れずやや残念だった。


「なら、お昼はバラバラにした方がいいか。私たちはちょっといつ帰れるか分からないから、またしばらくポーションのことは一任するかも」


「あーはいはい。Aランク冒険者様は忙しいもんな。了解」


「じゃ、ここで解散ね」


 一つ目の用事は済んだ。それぞれ解散して、目的の場所に向かう。ジェリダたちは歩いて宿に戻り、一息つくこととなった。




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