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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第四章 名もなき竜編
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第77話

大変お待たせしました!


 サウファの願いを聞いたジェリダはふるふると首を振った。


「私は冒険者だけど、そこまで大きなことに首を突っ込みたくない。ただし、私やルベルにあいつらが手を出してくるなら別だけど」


「……それは」


「ま、とりあえず私は村に戻るね。黒竜もイアンとかいうやつもいなくなったし、飛竜(ワイバーン)は来ない可能性が高いけど、一日だけ滞在してから帰ることにする。サウファ、あなたはどうするの」


『私はもう人型になる力も残っていない。きっと村人たちにも私のかけた幻術の魔法も解けている。私の人の姿を見ても皆気づかないだろう。お前たちだけで帰るがいい。私はしばらくこの場所で力を蓄える』


「そう。わかった。行こっかルベル」


「はい。あの、ジェリダ様ここに来るまでにあった、村の人たちの遺品や遺骨を持って帰りましょう」


「ああ、そうだね。持って帰ってお墓を作らなきゃいけないね」


 二人はサウファに背を向け、元来た道を戻って行った。



◇◇◇



「あ! 冒険者のお姉ちゃんとお兄ちゃんだ!!」


 村に戻ってくると青い髪をした小さな少女が、おおきな声を上げて二人の帰りを喜んだ。その声を聞いてほかの村人たちもぞろぞろと出てくる。


「お帰り! 飛竜はどうにかなりそうかい?」


「わいばーんとたたかってきたの?」


 大人から子供まで二人の戻りを喜び、今日の収穫を聞いてくる。彼らの何人かはジェリダたちとともに村を出て行く姿を見ているはずだ。だが、誰もサウファについて聞いてこない。サウファが言ったとおり彼らにかけられていた魔法は解けているようだった。


 そんな村人たちを遠巻きにみている子供がいた。セリオだ。夕焼けのような瞳がじっとこちらを見ている。ジェリダがセリオの方に視線をやるとフイッと背を向けて去って行ってしまった。


「飛竜を操っていた元凶は退けました。飛竜は操られていただけで、魔法が解かれた後は遠くの山に飛んでいきました。それと、これが飛竜の隠れ家としていた場所にあったものです」


 ルベルは村人たちにあの場所に残っていた遺品を見せた。すると、村日たちは皆ハッとした表情になり、中には涙を流し出しす者もいた。


「おかあさんのブローチ・・・・・・」


 小さな少女がルベルの手から、水色のきれいな石をはめ込んだブローチをそっと手に取る。すると少女は大きな瞳からぽろぽろと大粒の涙を溢した。


「おかあさん…おかあさぁん」


 少女のすがりつくような泣き声がほかの村人たちの涙を誘う。皆、その場でぽろぽろと涙を流し出した。村人たちもそれぞれの家族の遺品を手に取り、涙を流した。両親、祖父母、兄弟、姉妹、友人。それぞれの大切な人たちに彼らは安らかな眠りを祈った。




 翌日、ジェリダとルベルは村を発った。早朝に出たにもかかわらず、村人たち全員が見送りをしてくれた。


「私たちは決してあなた方のことを忘れません。何かあるときは私たちがきっと力になります」


 セリオの面倒をみていたドリーンが村の代表としてそう言った。皆、ドリーンの言葉に強くうなづいていた。


簡単に別れの挨拶を二人はしてから、フルルに乗って一路、ホロルの町へ向かった。サウファが乗ってきていたフルルはルベルのフルルにつなぎ、併走させていた。


「セリオくん、見送りにいませんでしたね」


「ま、あの子はあの子で複雑な思いでもあるんじゃないの」


 あのセリオだけはサウファの存在を覚えていただろう。だが、彼は何も言わず、最後まで言葉を交わすこともなかった。


 村からもだいぶ離れ、そろそろ昼になるというとき近くに川があるのが見えた。


「ルベル、あそこで休憩にしようか」


「はい」


 川辺でフルルから降り、フルルに水をやる。二人は鞄から携帯食料を取り出し、食べ始めた。


「今日は天気もいいし、夜には雨の心配もないね」


「ええ。山の方では天気も急変しますが、このあたりなら大丈夫そうですね」


 そんな話をしていると、ぐううう、という空腹を知らせる腹の音が聞こえた。二人は顔を見合わせる。


「フルル?」


 ジェリダとルベルは今、食料を口にしている。腹が鳴るわけがない。消去法でフルルをみるが、フルルも現在進行形で草や二人が準備した餌を食べている。だが、もう一度ぐうううう、と先ほどよりも大きな腹の音がした。


 そのとき、ルベルが併走させていたフルルの腹のあたりがごそごそと動いた。そして、その腹からぴよっと緑色の毛束が見えた。


「まさか!」


 ルベルはハッとしてそのフルルの腹をのぞき込んだ。すると、そこにはなんと。セリオがフルルの腹にしがみついていたのだった。


「なんでこんな所に君がいるんだ!?」


 今まで、フルルのふかふかの毛に覆われてセリオの姿はすっかり隠されていたため、気がつかなかった。だが、生きていれば腹も空くわけで、空腹の音は隠しきれなかったようだ。


 見つかったセリオはもそもそとフルルの腹から出てくる。しがみつかれていたフルルは、セリオにもういいのかと言うように顔を寄せている。


「で、どうしてついてきたの。遊びでついてきたっていうなら・・・・・・」


「遊びなんかじゃない!」


 ジェリダが言葉を言い終わる前にセリオは叫んだ。


「俺は、力をつけたい! 人と竜の混血だからって何で俺たちは差別されなきゃいけない! 俺は、そんな奴らを見返すために冒険者になりたいんだ!」


「冒険者になってどうするの」


 ジェリダは静かに問いかける。セリオはジェリダの瞳をまっすぐに睨み付けながら。


「一番強い冒険者になって、俺の、俺たちの存在がすごいんだってほかの奴らに知らしめてやるんだ! 俺たちの存在に文句をつけさせないように!! だから! 俺を仲間に入れてください!」


 セリオは深々とジェリダに頭を下げた。


「・・・・・・・・・・・・」


「ジェリダ様…」


 ジェリダは腕を組んでセリオを見つめたまま動かない。セリオもずっと頭を下げたままだ。どうするのかと、ルベルが内心でハラハラとしていると、はあ、とジェリダは大きく息を吐き出した。


「わかった。いいよ」


「本当か!?」


 ぱっとセリオは顔を上げて、ジェリダをみる。その瞳はきらきらと輝いている。だが、直後、その頭にジェリダの拳骨が落とされた。


「ただし、それはあの村であんたの保護者であるドリーンさんが許可をしてから。このままあんたを連れ帰ったら、私たちは誘拐犯になる。仕方がないから、村連れて行ってあげる。そこで、自分だけで説得をするの。私たちは口を挟まない。許可が下りたなら仲間にしてあげる」


「わかった」


 セリオは素直にうなずいた。すると、少し気が抜けたのか、セリオの腹がぐうと鳴る。セリオは顔を赤くしてうつむいた。


「はい」


 ジェリダは鞄から携帯食をセリオにさしだす。差しだれたものを軽く頭を下げたセリオは受け取り、ハグハグと食べ始めた。


「いいんですか、ジェリダ様」


「いいよ。あの子はいい目をしてる。それに、あの子が本当に亜人の人々の地位を向上させるかもよ?」


 ジェリダの口元は少しだけ上がっていた。





 セリオが食べ終わると、今度はフルルの腹出はなく、背に乗せてもう一度村に戻った。村に着く頃には夕方にさしかかっていた。村には多くの火が焚かれ、村人がセリオの名前を呼びながら探し回っていた。


「すいませーん!」


 ジェリダが村の入り口で声を上げると、近くの村人が近くに来てくれた。そして、ジェリダたちの他にセリオの姿を見ると、大きな声を出した。


「セリオ!!!」


「なに、セリオが見つかったのか!?」


「どこだ、どこにいた!」


 探し回っていた村人たちが今朝と同じように、村の入り口に集まってくる。その人垣をかき分け、ドリーンがセリオの元に駆けてきた。


 セリオが地面に降りると、ドリーンは胸の中心でセリオを抱きしめた。


「セリオ!! またお前は勝手に村を出て行ったのかい!? どうしてそんなことを・・・・・・!」


「ドリーンおばさん、俺、冒険者になりたいんだ」


「は?」


 セリオの言葉にドリーンはセリオを胸から離し、正面から向き合う。村人たちもセリオの言葉を聞いて、驚いた顔をしている。


「俺、このまま竜の血が混じってるからって差別され続けて、みんなが傷ついていくのがいやなんだ。だから、俺が冒険者になって、一番強い冒険者になって俺たちのことを認めさせるんだ!」


「そんなこと…できるわけがない。あんたは村の中でも魔力が強いから、自分ならできると思ってるだけだよ。冒険者は命の危険だってあるんだよ?」


「そんなことない! 俺はできる! 俺が冒険者として活躍して、混血の俺が認められれば、みんなも堂々と町で買い物ができる日がきっと来る! 俺がそうしてみせる! だから、ドリーンおばさん。お願いします。この人たちと一緒に冒険者になるために、ついて行かせてください!」


 ジェリダにしたように、セリオは頭を下げた。村人たちの視線がドリーンに注がれる。ドリーンは難しい顔をして、目を彷徨わせている。彼女は血はつながっていなくても、セリオの保護者として、彼を守っていこうと決めていた。それが、こんなに早く自分の元を離れていくとは考えていなかった。


 ジェリダたちはセリオに言ったとおり、口を一切出さない。成り行きだけを見守っている。


しばらくの沈黙の後、ドリーンは意思を固めたのか、ぽんとセリオの両肩に手を乗せた。


「行っておいで。もう、あんたは子供じゃなく大人になるんだね。もっと、子供の時間を過ごさせてやりたかった。それができなくてごめんよ。冒険者になるなら、命だけは本当に、大切にするんだよ。いいね」


「うん!! ありがとう! ドリーンおばさん!」


 セリオはその小さな体でドリーンに抱きついた。しっかりと抱き留めたドリーンは優しくセリオの背を撫でる。そして、ジェリダの方をみた。


「どうか、この子をよろしくお願いします」


「はい」


 ジェリダはこくりと頷いた。





 あたりはもう暗くなっており、この暗さで森を抜けるのは危険だと判断し、その日は結局村に泊まることになった。


 ドリーンもセリオともう少し話したいことや、聞きたいこともあっただろう。


 翌日は先日と同じように早朝に村を出ることにした。再び村人たちは村の入り口に集まって見送りをしてくれた。


「じゃあね、セリオ。体には気をつけて。たまには帰っておいで」


「うん。いままでありがとうドリーンおばさん」


 二人は最後の抱擁を交わし、セリオはフルルにまたがった。


「では、皆さん、ありがとうございました」


 ルベルは村人たちに頭を下げ、三人は再びホロルの町を目指し始めた。




次回は年末年始のため、更新日は未定ですが、今回のように間はそんなに開かないと思います!

更新時間はいつも通り、21時にこうしんいたします!


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