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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第四章 名もなき竜編
72/88

第72話

ホントにお待たせしました!


今回は長めです。楽しんでいただけたらm(_ _)m


 その日は村長が物置にしていたという場所をみんなで一緒に片付けてもらい、当分の寝泊まりの場所として使わせてもらうことになった。


 この村にる客が来るという概念がないので、宿などはない。誰の家にも空き室がなかったため、この場所を借りている。


 家の中にはまだ生活感があり、人によっては不快感や不安感があるだろうが、三人とも気にせず食事の準備をしていた。


 村人たちはジェリダたちをもてなしたいと言ってきたが、ただでさえ食料は少ないのだからと丁寧に断っておいた。食料は自分たちで持ってきたものでもしばらくは大丈夫だろう。いざとなれば周辺で狩りもできる。


 三人で夕食を囲んでいる時、ジェリダはサウファに朝方の少年の事を尋ねてみた。


「ねえサウファ、今朝のあの男の子は両親を殺されたんだよね。あの子は今、誰と一緒にいるの?」


「ああ……、あの子はセリオって言って両親を飛竜(ワイバーン)に殺されたんです。今は面倒見のいいドリーンおばさんが面倒を見てくれてるみたいで」


 サウファの言うドリーンおばさんという女性は顔などはパッと見ても人間なのだが、両足にのみ先祖の血が出ているそうで、黄色い鱗の足なのだという。足だけならばブーツで隠せばいいので、ごく稀に街へ降りて食料や薬、せそれから子どもたちのお菓子を買ってくるのだという。


 セリオは家族以外に親族がいないため、そのドリーンが代わりに面倒をみているようだった。


「セリオは頭も良くて、勇気のある子なんです。それに、あの子は他の子供達よりお兄ちゃんだから、強がってきっと泣いてないと思うんです」


 サウファは俯きながらそう話す。


「セリオは本当に深く深く傷ついてる。だからみんなに、心を病んでるって言われてもおかしくないのかもしれません」


 サウファはセリオの実の姉のように心配しているようだ。今朝見せたあの表情とはまた違った様子をジェリダは感じた。


「そう。ところでサウファ、セリオはあなたと同じで魔法が使えるのね。他の子よりも竜の血が強いとか、そういう理由?」


「はい、セリオの血はこの村でもかなり濃くって。魔法を使える人はこの村でも少なく、時々セリオの魔法で火をおこしてもらったり、傷を癒やしてもらったりしてます。私も治療をしていたんですが、私がいない間は、怪我をした人たちの治療をセリオがしていたんだと思います」


 サウファによるとセリオは、あまり治癒魔法が得意ではないそうだ。だが、怪我を負った人々のために必死に魔法を掛けているとの事だった。


◆◇◆


 ジェリダたちが丁度セリオの事を話していた頃、セリオはドリーンの家からこっそりと抜け出して村を囲む森の中にいた。


「この草じゃない……、これも違う」


 セリオの目は竜の血の関係か、暗い中でも昼間のように景色を見る事ができた。その目を使って薬草を探しているがなかなか見つからない。


 セリオが探しているのは傷薬として一般的なルノン草だった。以前、セリオの母親が生えているところを教えてくれていたのだが、肝心の場所を忘れてしまった。


 もう治療するための村の薬草が底をついていた。このままでは怪我人の傷口が化膿してしまう可能性がある。行商も近くを通る時期ではない。


(絶対に、絶対に見つけないと!)


 あまり村から離れないように気を付けながら薬草を探す。すると、大きな切り株の元にルノン草が生えているのを見つけた。それはセリオの記憶を呼び戻し、母が教えてくれた所がここだと思いだした。


「あった!」


 目を輝かせ、嬉しさに思わず声を上げるセリオ。その時、ペキリと、枝の折れる音がはっきり聞こえた。


「グルルルルルル……」


 ハッとしてセリオが音のした前方を見ると、金色に輝く目と合った。


「グオオオォォォォォオオ!!!」


「うわああああ!!!」


 それは森の中に潜んでいた飛竜(ワイバーン)だった。飛竜(ワイバーン)は森中を震わせるのではないかというほどの、大きな咆哮をあげる。セリオは叫び声を上げ、その場に尻もちをついてしまう。


 飛竜(ワイバーン)はジリジリとセリオに近寄ってくる。腰を抜かして動けないセリオをどういたぶってやろうかというように、長い舌で舌なめずりする飛竜(ワイバーン)


 ズシン、と。セリオの目の前にやってきた飛竜(ワイバーン)を見上げたとき、その足元に目が行った。飛竜(ワイバーン)の足元には先程セリオが見つけたルノン草が生えている所だった。


 ルノン草は無残にも踏み潰され、飛竜(ワイバーン)の足元から潰れた姿が少し見えた。


 セリオはその行いにカッと頭に血が上った。身体の鱗が逆立ち、瞳はいつにも増して煌めきを増した。


「お前っ!!!」


 セリオが無謀にも飛竜(ワイバーン)に飛びかかろうとした時、顔の両側を赤い何かが電光石火の如く通り抜けていった。


「グギャオオォォォォオオオ!!」


 次いで、セリオの目の前にいた飛竜(ワイバーン)は吹き飛ばされて、炎の蛇に締め上げられていた。飛竜(ワイバーン)は苦悶の声を上げている。


 セリオはあまりにも一瞬のことで何が起きたのか分からず、呆然としていると背後から声がかけられる。


「大丈夫? 怪我はない?」


「ここは危ないから下がって」


 そこにいたのは、今朝見た冒険者の二人だった。


◆◇◆


 ジェリダは夕食の途中、何かが唸る声を確かに聴いた。


「サウファ、ここの森には肉食の獣はいるの?」


「いいえ、飛竜(ワイバーン)の影響で肉食系の獣は全て何処かの森に散っていったみたいです。残るのは僅かな草食の獣だけです。魔物も飛竜(ワイバーン)以外は――」


 その時、森から大きな咆哮が響いた。その声はルベルとサウファも聞こえた。ただ、その咆哮に隠れたセリオの叫び声はジェリダにしか聴こえていない。


飛竜(ワイバーン)!?」


 サウファが青ざめる横でジェリダは小さな声で呟いた。


「セリオが危ない」


「え?」


 サウファの声に返すことなくジェリダは素早く武器を取ると、外へと駆け出した。ルベルもその後をすぐに追いかける。


 ジェリダは迷うことなく現在地から反対側の方へ駆ける。ルベルはジェリダについて走りながら問いかける。


「ジェリダ様、相手は一匹ですか」


「そうみたい――いた!」


 ジェリダは前方の森にワイバーンと尻もちをついたセリオを捉えた。視認してすぐにジェリダは杖を飛竜(ワイバーン)に向け、炎の蛇を放った。


 炎の蛇はセリオの両脇を通り抜け、セリオに迫っていた飛竜(ワイバーン)を後方へと吹き飛ばし、その皮膚を燃やしながら締め上げる。


 セリオの側に駆け寄った二人はジェリダがセリオの前に立ち、ルベルがセリオを立たせて声をかける。


「大丈夫? 怪我はない?」


 赤い瞳が夕焼け色の瞳を覗き込む。セリオは呆然としながらもコクリと頷いた。


「ここは危ないから下がって」


 ジェリダは油断なく武器を構えている。


「森を抜けて走るんだ。ここは任せて」


 ルベルはそっとセリオを背を押し、村の方を向かせる。


「でも……!」


 一瞬、セリオの脳裏に両親の姿がフラッシュバックした。


「大丈夫。――――走れ!」


 ルベルは力強く大丈夫と言い切った。そして、鋭い声でセリオを走るように促す。ビクリと驚いたセリオだが、言われた通り踵を返して村の方へ走り出した。


 それを確認したルベルはさっと剣を抜き、ジェリダより前に出て剣を構える。


 ルベルが前に出た瞬間、ゴウと飛竜(ワイバーン)は羽ばたき、締め上げていた炎の蛇を霧散させた。その身体からは肉の焦げる臭いがする。シュウシュウと身体から煙が出ているが、硬い皮膚のせいで致命傷にはなっていない。


「あのぐらいじゃ駄目か。あの皮膚は相当硬いみたいね。どうやったら貫けるかなっ!!」

 

 言いざま、ジェリダは飛竜(ワイバーン)へ向けて地面を操り作った棘を突き刺そうとするが、一瞬早く飛竜(ワイバーン)は飛翔して躱す。


「あの図体でなかなかに俊敏みたいですね」


 ジェリダが次の攻撃で飛竜(ワイバーン)を撃ち落とそうとしたとき、飛竜(ワイバーン)は彼方を向いた。すると、飛竜(ワイバーン)は戦うことをやめ、更に高く飛び立つと去っていってしまった。


「は? どういうこと?」


「逃げた……のでしょうか?」


 飛竜(ワイバーン)の行動が理解できず、二人が首を傾げていると戦闘が終わったのを見計らってサウファとセリオが駆け寄ってきた。


「お二人共怪我は!?」


「大丈夫。本格的に戦う前に飛竜(ワイバーン)は逃げちゃった」


「そうですか。よかった……。とりあえず戻りましょう。村の人たちも飛竜(ワイバーン)がどうなったか不安だと思うので、私は先に戻ってみんなに状況を伝えてきます」


 そう言ってサウファは先に村の方へと駆けて行った。村の方を見るといつの間にか、家々に明かりがつけられているのが見えた。


「では、戻りますか」


「そうしよう」


「セリオ君も行きましょう」


 サウファと共について行かなかったセリオにルベルが手を伸ばすと、恐る恐るといった様子で手を伸ばし、掴んだ。そのままセリオはルベルとジェリダを見ると頭を下げた。


「ごめんなさい。僕のせいで……」


「何も君のせいじゃない。飛竜(ワイバーン)は元から潜んでいて、夜にでも奇襲をかけるつもりだったんじゃない? それに君が出くわしただけ」


「ジェリダ様の言うとおり、君は何も悪くない。でも、どうしてこんな夜に森の中に入っていたんですか?」


 ルベルはセリオと目線を合わせるためにしゃがみ、優しく問い掛けた。セリオは一瞬、躊躇うように目線を彷徨わせたが、しっかりとルベルの目をみて言葉を紡いだ。


「……ルノン草が欲しかったんだ。もう村には薬草が残ってない。昔、母さんが薬草のある場所を教えてくれてたから記憶を頼りに探してて……」


 チラリと薬草の生えていた所をセリオは見た。二人もその先を見る。そこは先程の戦闘で飛竜(ワイバーン)に踏み潰され、使えそうなルノン草は残っていない。


「なるほどね。そういう事ならサウファも村の人達も行ってくれればよかったのに。セリオ、怪我人の所に案内して。私が治してあげる」


「ほっ、本当に!? でも、あんたは冒険者なんじゃ……」


「冒険者だからって戦うばかりが得意な人ばかりじゃないの。私はどっちもできるけど、それは人それぞれ。さあ、早く怪我人の所へ」


「うん!!」


 セリオは大きく頷いた。


次の投稿は10月21日21時です。

(ちゃんと次話も予約投稿してるので安心してください!!)

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