第68話
冒険者ギルドがフィルム渓谷のダンジョンボスが違っているという事態に対応しているとき、ジェリダは錬金術ギルドから呼ばれて訪ねて来ていた。
「ポーションの売上は中々いいぞ。あ、これはそっちの取り分な」
そう言ってレントが手渡した袋には大金が入っていた。それをジェリダは鞄にしまい込む。
ホロルの町にいる錬金術ギルド関係者の店に置いてもらったポーションの売上だけでもかなりのものになっているようだった。
「生産は追いついてるの?」
「ああ、材料はそっちが取ってきてくれている分で事足りてるし、人も集まってる。けど、まだまだ売る場所を拡大するならこの人数じゃきついかな」
「レントさんはその、お父様に頼むのは嫌なんですか?」
「レントはお父さんへの苦手意識が高いというか、借りとかを作るのが嫌なんだよ、単純に。何なら僕が手紙を代筆しようか?」
「やめろ。時期が来たら自分で書く」
ピオはレントの家の事情もよく知っているようだった。父親の話が出たからか、レントは少しムスッとした表情になり、機嫌が悪くなってしまった。
「今日は分前を渡したかっただけだからもう帰っていいぞ」
「レント! ごめんね、ちょっと機嫌悪くなったみたい」
「すみません、俺が余計なことを聞いたばかりに……」
地雷を踏み抜いてしまったことにルベルは申し訳なくなって頭を下げた。
「いいのいいの。こいつが子供なだけだけだから」
「ピオ!!」
「はいはい。じゃあ悪いけど」
「うん。人での件は私の方でも色々探してみるよ」
ジェリダは錬金術ギルドを出て、今日は薬草採取か魔物退治どうしようかと、ルベルと相談しているとさっと角から飛び出した少女がぶつかった。
「きゃっ!」
ぶつかった少女は小さな悲鳴をあげてジェリダの上に転んだ。しかし、ジェリダはぶつかられた痛みよりも、その少女の姿に驚いていた。
その少女は頭から二本の角が生えていた。
「う……はっ!!」
少女はノロノロと顔を上げてからパッと頭を抑えた。急いでフードを被り直したがもう遅い。周りの通行人も少女の異様な姿に眉をひそめる者や足を止める者もいた。と、少女が飛び出してきた方角から三人の男たちが走ってきた。
「そのガキを捕まえてくれ!」
少女はその声にビクリとすると、ジェリダの上から飛び退こうとした。その腕を、ジェリダはしっかりと掴んだ。
「いやっ! 離して!」
暴れる少女を無視してジェリダは少女を背に隠した。ジェリダたちの所まで走ってきた男たちは、ニコニコと笑いながらジェリダの機嫌を取ろうとする。
「いやー、冒険者の方そいつを捕まえてくださってありがとうございやす。ささっ、そいつをこっちに……」
しかし、男が言葉を言い終わる前にジェリダは少女の腕をしっかりと握ったまま走り出した。ルベルもそのあとを追う。
「あ! オイ! くそっ、追うぞお前ら!!」
男たちは先程までの表情を険しくしてジェリダたちの後を追った。
「ここならいいかな」
ジェリダが走ってきたのは人通りのない路地だった。
「はあっ、はあっ、はあっ…、なんで……」
「見つけたぞ!」
少女がぜぇぜぇと息を切らしながらジェリダの取った行動を問いかけるが、追手が声を張り上げた。
先程の三人がジェリダたちを挟み撃ちにする形でジリジリと距離を詰めてくる。
「手こずらせやがって……。オイコラ! いくら冒険者だからって舐めてんじゃねえぞ!」
「この子はなんで、あんたらみたいな汚い奴らに追われてるの?」
「なんだと!! ガキが知らなくてもいいことなんだよ!」
一人が短剣を構えると、二人の男も武器を構えた。だが、地面が土の時点で勝負は一瞬にして片がついた。
『ここから出しやがれー!』
『何だこれ! 全然崩れねえぞ!」
『クソ! 出せぇ!!』
土の蛹のように男たちをジェリダの土魔法で包み込み、足止めをした。中からはくぐもった叫び声や罵声が飛ぶが気にしてはしょうがない。
「さて、邪魔な奴らはいなくなったし好きなところに逃げたらいいよ」
「え……」
「ほら、早く」
「あ、ありがとうございます」
少女はフードを被り直し、ペコリとお辞儀をすると走り去っていった。
「ジェリダ様、あの男たちはどうするつもりですか?」
「ほっといたら所詮は土。そのうち削って中から出てこれるよ」
そうして二人はその場から去ったのだが、翌日二人は意外なところであの少女と出会うこととなった。
「はあ? 私達にこの子を預かれって言うんですか?」
「一時的で構わない。それと同時に君たちには、この子の村を救ってもらいたいんだ」
そう、ラドックは告げた。
お待たせしました。長らく更新できなくてすみません。
今回の更新分は少ないですが、卒業できてようやく余裕ができたのでゆっくり更新したいと思います。
これから社会人になりますが、更新を続けたいと思います!
次は3月21日21時更新です。




