第66話
大変お待たせしました!
やはり、新学期はバタついてしまい、更新が遅くなりました。
もう少しすれば余裕もできると思いますので、少し更新が遅くなりますがよろしくお願いします。
エルバートの事を愚王と罵る者は多い。
エルバートという現在の王はとても臆病で自身の無い王である。偉大な父を持つがゆえに周りからは何かと比較された。それが余計にエルバートの心に堅牢な牢を作ってしまったのかもしれない。
勉学も武術も並以下。秀でた所などありはしない、そう城内で囁かれている。せめて彼に兄か弟がいれば替えが利いたものを。そう言うよくない輩も城内にはいる。彼の周りは敵だらけだった。そんな中でも彼の支えとなっていたのはジェニオだった。彼はエルバートが知らない内に敵を排除し、エルバートの安全を守っている。当然、エルバートは王である。そのため身辺警護を命じられている騎士たちは城内に沢山いる。しかし、その中でもエルバートを良く思わない者も少なくはない。ジェニオはそんな騎士たちの中から信頼のおける者達を選び、側に置いえている。
そんな事は露とも知らないエルバートは日々そのヘタレっぷりを伸ばしてしまった。周りが彼に甘すぎたのかもしれない。そんな彼にとって自分を叱り、ましてや殴って気絶させる女性など初めてだった。そう、ジェリダの事である。
現在、エルバートはジェリダに食らった鳩尾への攻撃から回復し、目を覚ましていた。だが、彼は懲りた様子が一切なく、ジェリダを何度も口説いていた。
「ジェリダよ、頼む。私の妻になってくれ」
「い や! ついて来ないで」
「ジェリダ! 待ってくれ!」
しつこいエルバートからの求婚にジェリダは逃げていた。こんなタイプは初めてでジェリダは逃げるしか対処法が思いつかなかった。
一方、その様子を見つめる面々の表情はそれぞれ異なっていた。まず、デリクはエルバートのしつこさに怒りを溢れさせ、今度は俺が殴ると言ってエルバートに向かおうとした所をカルムが必死に抑えていた。他の兵士達はその場で休みながらただ呆然と様子を窺うのみ。下手に手を出して、不敬罪で処罰されてはかなわないからだ。そして最後に、エルバートを連れて来た元凶のジェニオは片手で顔を覆い、呆れかえっていた。
(まさか、ここまでエルバートが愚かだとは。これは本当に私の教育が悪かったのだろうか……)
ジェニオが片手で顔を覆っている隙に、エルバートはジェリダの能力でしか聴こえない声量でこう言った。
「君の身のこなしは我が国の騎士団長ですら凌駕している。君はまだどれ程の才能を隠し持っているんだろうな。な、この声ぐらいは聴覚強化スキルで聞こえているだろ?」
「…………!」
ジェリダは思わずエルバートの方を振り返った。エルバートの声は本当に小さく、ジェリダと同じ聴覚強化のスキルを持っていなければ聞き取れないほどのものだ。そして、エルバートの声音は今までの甘ったれた者の声ではなかった。
ぞわりとしたオーラをジェリダはエルバートから感じた。
今のエルバートが見せている一面は何なのか。
「私の妃にならないまでも、騎士として使える気はないか? 今の冒険者の暮らしよりはいいと思うのだが。ぜひ私は君の才能が欲しい」
彼の行動の全てが演技だったとしたらどうだろう?
あのジェニオでさえも騙し切るその才能。今、エルバートはジェリダの目の前に今までと全く違う面で対峙していた。
エルバートの事を愚王と罵る者は多い。
だが、それは本当の彼の姿なのだろうか。
ジェリダはエルバートに魅入られたように動けなかった。そんなジェリダにエルバートは手を差し出す。
「ジェリダ、君を信頼してこの偽りのない姿を見せている。どうだい? 私の妃、もしくは騎士にならないか?」
次は9月30日21時に更新です。




