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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
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第65話


 ジェリダはまずガンガンとファイヤーボールをつくり出し、ガガル目がけて打ちまくった。顔や手足に当たったファイヤーボールはどんどん爆発を起こし、ガガルに火傷などを負わせている。


「プギィィィィィィイイイイ! ナ、ナニガオキテ…!」


 さっきまで自分がいたぶっていたはずの人間からの手痛い攻撃にガガルは戸惑っていた。だが、このままやられるほどやわではないガガルは、力任せに棍棒を振り回し、ファイヤーボールを避け始めた。


(えっと、私はこれあっさりと勝ったら駄目なやつ? 苦戦した体で勝つ方がいいの?)


 エルバートの心に火が付くような姿、つまりは苦境の中にあっても諦めずに戦い、そして勝利するというものをジェニオは求めている。それを正確に読み取っているジェリダは面倒だと思いながらも、あのジェニオに弱みを握られてしまったのだ、演技を続けるしかない。


 ジェリダはガガルが打ち返すファイヤーボールの一つに自ら当りに行った。


「あ! 何してんだあいつ!」


 結界の中でジェリダの様子を見ていたデリクは思わず声に出してしまった。いくら治癒能力が高くても、ジェリダの生み出したファイヤーボールは通常の物より威力は上だ。自分から大けがをしに行くジェリダを止めようとデリクが結界を飛び出そうとした。それを慌ててカルムが引き留める。


「待てデリク! この結界は中のものが外に出たら解ける仕組みになってるんだぞ! みんなを危険に晒す気か! それに、お前が行ったって戦力にならないだろ!」


「くっ……」


「それに、ほら。ジェリダは当たりに行ってるけど掠る程度だ。ジェニオ様もすぐに治癒してるみたいだし、大丈夫だって」


 カルムが指さした方を見ると確かにジェリダはファイヤーボールに体を掠めさせる程度で、大きな怪我とはなっていない。デリクはホッと体の力を抜いた。そして、そんな自分に疑問を持つ。


(ん? 俺、今なんでホッとしたんだ?)


 デリクが首を傾げていると、結界内にいた兵たちがわっと声を上げた。ジェリダの方を見ると、ジェリダがボロボロの姿になりながらも、ガガルに勝利していた。それと同時に、兵士達を守っていた結界がジェニオによって解かれる。兵士達は一斉にジェリダに駆け寄った。


「いやースゲーな嬢ちゃん。こんな小さいのに俺らよりも強いなんて!」


「流石その年でAランク冒険者になっただけのことはあるな」


 わいのわいのとジェリダを兵士達が褒めたたえる。その後ろでエルバートは呆けたように立っていた。


(すごい! あんな女の子が大きな相手に立ち向かって勝つなんて!)


 ジェニオの狙い通りエルバートはジェリダの事を見て尊敬の心を芽生えさせていた。そんなエルバートにジェニオは近寄ってきた。


「どうですエルバート様。彼女はあなたよりも歳がしたなんですよ。それでも勇気を持ってあの大きな相手を倒した。だからエルバート様も――」


 王城で話すような敬語に戻ったジェニオはエルバートに『できる』と言うように誘導しようとしたのだが、それをエルバートは遮った。


「ああ、すごいな! だから、彼女を妃に迎えるのはどうだろうか!」


「え……?」


 さしものジェニオもその言葉には一瞬思考が停止した。そして、事態を理解した途端、ジェニオは頭痛を覚えた。


(まさか、エルバート様の甘さがこれほどとは……)


 一方のエルバートはキラキラとした目で、しかも自信たっぷりという感じだった。ジェニオはこれは教育のし直しが必要だと思っていると、エルバートはジェリダを褒めたたえる兵士達を掻き分けてジェリダに声を掛けに行ってしまう。


「あ! エルバート様! お待ちなさ――」


「ジェリダ! そなたの勇姿を称え、私の妃になる事を許そう!」


「は?」


「なっ!?」


「おっと、これは……」


 エルバートはジェリダの手を取り、その場に盛大な爆弾を落とした。ジェリダは眉を寄せて疑問を口にし、デリクは驚愕の声を上げ、カルムはやばい事が起きそうだと早々にジェリダの近くを離れた。そして、周りの兵士達は驚愕に声も出ない様子だった。いや、それよりも本当にエルバートは王なのではと思い、思考が固まっていた。


 エルバートはこう考えてしまったのだ。ジェリダという強い者を妃にすれば、自分が強くなくてもいいのではないかと。


「どうだ? まだ私には妃がいない。そなたのような強い妃ならきっと……ぐふっ!!」


 エルバートは全ての台詞を言い終わる前に鳩尾を押さえながら気を失った。どさりとエルバートはその場に倒れ込む。もちろん、その攻撃をしたのはほかでもないジェリダだった。ジェリダは完全にキレた状態でジェニオを睨んだ。


「どういう教育をしたらこうなるのか、聞かせてくれる?」


「こればかりは本当に申し訳ない。その一発はエルバートのいい薬になるといいんですけど……」


 剣の腕も魔法の腕も優れたジェニオでさえも、このエルバートには手を焼いているようだった。




ひと悶着あったが、とりあえずはボスを倒したことで階段が出現した。体長のデリクを先頭に調査隊はその場を後にした。 綺麗に決まったジェリダの一発により、しばらくエルバートは目を覚まさなかった。そのためジェニオが責任を持ってエルバートを背負う事になった。


 彼らが去った後、その場所を訪れる少年がいた。黒装束を身に付けたイアンだ。彼がその部屋に入った時には既にガガルは復活していた。そして、ジェリダ達と同じ台詞を口にする。


「ニンゲン、ガ、クルノハ、ヒサシブリダ」


「可哀想になぁ、ダンジョンのボスになっちまえば同じ台詞を口にして何度も死と再生を繰り返す。ま、それが俺にとって好都合なんだけどな。来いよデカ物!」


「オロカ、ナニンゲンガ!」


 ガガルは棍棒を振り回しながら、イアンに突進する。それを狙っていたイアンは短い呪文を口にした。


「【ゲート】」


 その呪文を発した途端、暗闇を映したかのような大きな穴が地面に現れた。丁度その上にいたガガルは穴に吸い込まれる様にして闇に溶けて行った。


「さて、任務完了っと。簡単すぎだな」


 そう言うと、イアンはガガルが落ちた深淵に自らも飛び込んだ。すると、穴は小さくなりとぷんという水のような音を最後にその場から綺麗に消え去った。



次は8月29日21時です。


【訂正とお詫び】

本日更新できずすみませんでした。

少しバタついておりますので、更新日時を9月5日21時に変更します。

申し訳ないです。

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