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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
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第63話


 隠しダンジョンの階層はここで出会ったトロイによって六階層だという事が分かっている。ここはずっと暗い洞窟内のような通路しかないが、その奥にあるボスを倒せば五階層への階段が現れる。


「アイザック隊長からはあまりダンジョン内のボスと戦うなと言われているが、ここのボスだけは別だそうだ。ここのボスを倒せば五階層へと上がれる。俺とジェリダが戦ったのはオーガ亜種だった」


 ダンジョンのボスは倒してもまた復活する。その仕組みがどうなっているのかはダンジョンの成り立ちと同じく謎だ。だが、倒されたボスは倒した相手の事を覚えていない。そして、レベルが上がるという事も今までに報告されていない。以前の調査の時、ジェリダが見たオーガ亜種のレベルやスキルなどは報告済みだ。つまり、この奥にいるボスを倒すのは少し楽になったと言えるだろう。


「ただ、アイザック隊長の指示によって俺たち調査兵は今回のボス戦には参加できない。その代わりに、ジェリダとジェニオ様に相手をしてもらう事になる…」


「は!? 私は聞いてないよ?」


 ジェリダは思わぬところで名前を出されて驚く。だが、説明していたデリクも不本意そうな表情をしていた。


「アイザック隊長によると、ジェニオ様からの意見があったとの事ですが――」


 デリクは説明をして欲しいとジェニオの方へチラリと視線を投げた。ジェニオはそれを受けて前の方へ出て説明を始める。


「私がアイザック隊長にお願いしたのはここのボスを倒させて欲しいという事だけです。皆さんのレベルが高く、スキルレベルや連携が取れているのは分かっていますが、相手はレベル65の相手。しかも、このダンジョンは今までにないイレギュラーなダンジョンです。何があるか分からない。だから、私とジェリダさんと二人で倒してしまった方が被害も少なく済むと思ったのです」


「ちょっと、私はそんな事一つも説明されていないんだけど」


 ジェリダはジェニオの説明を聞いていたが、何も説明を受けていない事に少し苛立っていた。だが、ジェニオはそんなジェリダに向き直り、ニコリと笑う。


「大丈夫です。これから詳しい事をあなたに説明しますから」


 こっちに、そう言ってジェニオはジェリダを隊から少し離れた所に呼ぶと、話しを聞かれないように結界を張ってしまった。


「それで、結界を張ってまで私にしたい説明って何?」


「あなたにはエルバートの見本になって欲しいのです」


「は?」


「エルバートは本当にフィルム大国の王なのですよ。ですが、エルバートには自信と勇気が足りなさすぎる。そこで、この調査隊で心身ともに鍛えてやろうと思ったのですが私の予想を遥かに超えるビビりでして……」


「はぁ……」


 ジェリダはその一国の王を連れ出して危険な目に遭わせているという事や、影でビビりだと言っているのはいいのかと、溜息とも返事とも取れる曖昧な声で返す。


「彼らの周りに結界を張って身を守りつつ私も戦いますから、どうかエルバートの見本として戦う姿を見せてくれませんか? あ、でも――」


 ジェニオは思い出したというようにそう言うと、ジェリダの耳元に顔を寄せて言った。


「人の身に余る獣の爪は戦闘で使ってはいけませんよ?」


「――っ!!」


 ジェリダの全身に鳥肌が立ち、ざっと後退った。


 どこで見られていた。どこでバレた。どこで、どこで、どこで――。


 ぐるぐるといつジェニオに見れらていたのかと考えるが、あの時そんな気配はなかったはずだ。だが、現にジェニオはジェリダが悪食のスキルで手に入れた獣の、狼虎の爪の事を知っていた。そんなジェリダを見つめるジェニオの表情はそこの見えない目をしていた。


「この事を知っているのは私だけですかね。流石にあの力をあなたがどう手に入れたのかは分からなかったのですが、危険ですよ。人間から離れるという事は。二度とまともな人間には戻れなくなりますから」


 どこか含みを帯びた言葉だった。ジェリダは警戒を強めながらジェニオとの距離を少しでも取ろうと下がる。


「ああ、大丈夫。あなたに何かするわけじゃありません。ただの忠告ですよ。じゃあ話しをもとに戻しますが、どうです? 協力してくれませんか?」


(あんな話をしておいて協力してくれって? 脅しにしか聞こえないんだけど!)


 ジェリダは悔し気に奥歯を噛むと、苛立ちを籠めて短く息を吐いた。


「分かった。協力する。ただし、その話を他言したら……」


「もちろん他言なんてしないよ。一番話されたくないルベルは特に、ね?」


「チッ」


 そこまで把握されているのかとジェリダは舌打ちをした。


「さ、そんな顔仕舞って。結界を解くからみんな何があったのか心配するから」


 ジェリダは努めて平静な顔を取り繕った。そして、ジェニオは周りに張っていた結界を解く。結界の外では、二人の話が終わるのを待っていたデリクが一歩ジェリダに近寄る。


「話しは終わったか。ん? どうした。何かあったのか?」


 デリクはジェリダから何かを感じ取ったのか不思議そうな顔をする。だが、ジェリダは何でもないと笑顔で答えた。


「そうか? ま、お前がいいならそれでいいけど」


 デリクにジェニオが話し合った内容の建て前だけを説明する。納得したデリクはそれを隊全体に伝達し、奥にあるボスの部屋へと進んだ。


◆◇◆


「あーらら? またあのガキと同じところに来ちまったのかよ。しかもあれはジェニオか?」


 六階層に黒装束の少年、イアンがいた。蜘蛛のように壁に張り付き、調査隊の様子を窺っている。


「ジェニオを相手にするのは厄介すぎる。仕方ねぇ、あいつらがボスを倒してから俺がそのボスをいただく・・・・とするか」


 彼らの思惑は少しづつ、しかし確実に進行しつつあった。




次は8月17日21時に更新です。


【訂正】

諸事情により、更新日を明日の8月18日に伸ばします。

楽しみにされていた方、申し訳ありません。

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