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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
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第51話


 三階層にいる調査隊では、かなり回復してきた怪我人の様子から、予定通りこの日の夕方手前には地上を戻る事になっていた。


 この日も早くから食事の準備や怪我人の世話やらと駆けまわっていたルベルは、いや、その場に居た全員が徐々に近づいて来る地響きのような音を聴きつけた。


「な、なんだこの音は!?」


「もしかして大型の魔物が接近してきてるのか!?」


 動揺を見せる若い兵士達。だが、経験のある兵士達はじっと耳を澄ませる。冒険者の者達は索敵スキルを使って気配を探っていた。


「一…いや、三か? 大きな何かが近づいてきてるぞ!」


 音の方角から近づきつつあるものの数を知らせた冒険者は周囲に警戒するように言う。怪我人の手当に当たっていた者は、戦闘になった際に怪我人が巻き込まれないように奥へ避難させている。


 足音はだんだんと近づいてくる。その方向には大きな洞がある。調査に向かいたかったが、引き返す手前、調査に入れていない所だった。


 もう、足音はすぐそこまで来ていた。ズンズンと言う音が。


 アイザックやルベルなど、剣を使う者達は前に出て剣を構える。暗い闇の中に光る眼光が高い位置に見えた。一気に緊張が高まる。そして、ついに闇の中からその正体が現れた。


「オヤ、タクサンノ人間ガイル」


「ミ、ミノタウロスだ!」


 そこに現れた大きなミノタウロスに若い兵士が悲鳴を上げる。


「これはいかん。前衛がひきつけている間に後衛は徐々に下がれ! まともに戦えば全滅するぞ!」


 アイザックは予想以上の敵の姿に撤退の指示を出す。


「待って、待ってください! アイザック隊長! そのミノタウロスは敵ではありません!」


 緊迫した状況の中、どこからか声が聞こえた。と、先ほどミノタウロスが出て来た洞の中からデリクが姿を現した。


『デリク!』


 走って来るデリクの姿に糸目のローレスや大柄な体格のフレッドが揃って声を上げる。


 デリクはミノタウロスのトロイの前に立つと、アイザックに説明する。


「アイザック隊長。このミノタウロスはてきではありません。ジェリダの使役です。なので剣を納めてください」


「な、ミノタウロスを使役にしただと!?」


 アイザックは驚愕の声を上げた。そして、デリクと同じく洞からジェリダが姿を現す。ルベルはパッと表情を明るくした。


「ジェリダ様!」


 ジェリダはルベルに気が付くと、ふっと優しく微笑んだ。が、この状況を落ち着かせるためジェリダもアイザックに話しかける。


「アイザック隊長。デリクの言う通り、このミノタウロスは私の使役で、あの割れ目に落ちて隠しダンジョンにいた時に外に使役にしました。攻撃の意思はありません。なので剣を納めてください」


「……分かった」


 アイザックは頷くと剣を鞘に戻す。それに倣い、他の者達も武器を仕舞う。張り詰めていた空気は何とか落ち着かせることが出来た。


「ジェリダ様! お怪我はありませんか!?」


 ルベルは真っ先にジェリダに駆け寄った。ローレンスやフレッドもデリクに駆け寄る。


「ルベル、ごめんね心配をかけて。怪我はどこにもないから大丈夫」


「もう、本当に心配しましたよ……。ですが、お怪我がないようでよかったです」


 ルベルは涙が滲んでいるせいで目が潤んでいる。そんな年上のルベルをジェリダはよしよしと頭を撫でて落ち着かせている。一方のデリクはローレンスやフレッドに驚かれていた。


「え、本当にあのデリクか…?」


「なんか、丸くなったような……」


「うるさいっ!」


 デリクが二人に開口一番、心配をかけて済まなかったと言った途端、この反応である。今までならば、心配なんか必要ないと尊大な態度だったのが帰って来てみれば何やら殊勝な事を言うのだから、逆に心配しない訳がない。


 そんな感動の再開の途中ではあるが、アイザックはジェリダとデリクに今まで何があったのか報告するように言う。


 二人は隠しダンジョン内での出来事を全て話した。そして、トロイが外に出て知識を学びたいと望んでいる事も伝える。アイザックは全ての話しを聞き終わると一つ小さな溜め息を吐いた。


「……ともかく、お前達が無事に帰って来てくれてよかった。その間に、デリクは少し成長できたようだな」


「はい」


 デリクの成長した部分をしっかりと見ているアイザックはやはり素晴らしい隊長なのだろう。アイザックと話が終わり、他の兵や冒険者達の所にジェリダが行くと一斉に集まって来た。


「お前本当に無茶するなぁ! でも帰って来れてよかったぜ」


「あんなデカい魔物まで使役にするなんて、中々やるじゃないか!」


 などなど。完全に取り囲まれてジェリダは賛辞を贈られる。


「ちょっと皆さん! ジェリダ様は疲れているんです! そんなに取り囲まないでください!」


 ジェリダを救うべくルベルが間を分け入ってジェリダを救出する。ジェリダは二度目の事なのでしれっとしていた。


「ジェリダ! よく帰って来たな! 何の躊躇いもなく割れ目に入って行った時はヒヤリとしたぞ」


 ルベルがジェリダを庇っていると、カルムが声を掛けてきた。


「カルム。あの時は咄嗟に動いたんだけど、心配してくれてありがとう。この通り、私は怪我してないから大丈夫」


「そうだとしても、あんな無茶は今後するなよ。ルベルが泣いちまうぞ」


「なっ!! カルムさん!!」


 ルベルはカルムの言葉に顔を真っ赤にする。カルムはしてやったりというようにケラケラと笑っていた。


 その後、ジェリダは怪我人の傷をほとんど治し、その場を立つ時刻が少し早まった。昼食を取ったあと、調査隊は三階層を後にする。


 もう、ほとんど生きているのを諦められていたジェリダとデリクが戻って来た事で、隊の士気は高まっていた。途中、魔物に何度か出くわしたが協力した陣形で難なく倒し切る事が出来た。


 三階層から地上へ出る頃には夕方の少し手前の時刻だった。この時刻に予定では三階層を離れようとしていたので、かなり早くに戻る事が出来たようだ。


 最初と同じように魔法が使える者が何度か往復して上の方へ人を運ぶ。ジェリダも三往復程して兵士達を上へと運んだ。上では数人の兵士達が待機していた。トロイの姿を見てかなり驚いていたが、攻撃する事はないとジェリダが説明する。


 だが、町に近づけば人が多くなる。そんな中、ミノタウロスがいれば混乱を招きかねないという事で、ジェリダはトロイに姿の認識をずらす魔法を使った。これでトロイは人々に見られても別のもに見えたり、姿が見えなくなった。


 予定よりも早い帰還となったが、成果はかなり得られた。アイザックは来た時に連れて来ていた馬に跨ると、ホロルの町の南門へと向かう。


 南門に近づくと、なんだか懐かしさを感じた。当初と同じ場所に到着するとアイザックは冒険者の者達の方を振り向いた。


「冒険者の諸君。今回の調査に同行してくれた事感謝する。報酬は後日、ギルドで受け取れる。様々な困難はあったが全員、一人も欠けることなく戻って来れた。協力ありがとう」


 冒険者はその場で解散を言い渡された。兵士達とはここでお別れだ。


「ジェリダ、またこの町にいるならどこかで会うかもしれねぇし、その時は声を掛けてくれよ。おれも声を掛けるからさ」


「分かった。色々とありがとう。ルベルの面倒も見て貰ったみたいだし」


「お、俺はそんなに面倒を見て貰ってません!」


 ルベルはまた顔を赤くして反論する。ジェリダはその様子が面白くてクスリと笑う。


「じゃあ、これからも頑張って」


「ああ」


 カルムと話し終えると、ジェリダは視線を感じた。その方向を見るとデリクと目が合った。デリクは一瞬目を大きく見開くと、すぐに視線を逸らされてしまう。特に、話す事はないのかジェリダの方へ話しかけてくる来る様子はない。


 ジェリダは兵士達と少しずつ言葉を交わし、初めてのダンジョンの調査は幕を閉じた。



またテスト期間がやってきましたので、更新が遅くなります。

次は6月28日21時に更新です。


【訂正】

更新日を6月30日に変更します。すみません。

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