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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
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第48話


 暗い階段を魔法で照らしながら登っていく。しばらくすると、先の方に小さな光が見えてきた。


「あれが出口か!?」


「でもなんだか明るすぎる気が……」


 今までの洞窟内は魔法で照らさない限り、真っ暗で光源がなかった。もしや、ルベルたちのいるところに出るのだろうか、そう思ったが、光の先はまたしても見たことのない場所だった。


 天井からは外に出たのかと錯覚するような光が届き、青々と茂る森が目の前に広がっていた。頭上の光源は光る鉱石がもとになっているようだった。きらきらと光り、その場全体を照らすほどの明るさを有している。


「これは、まだ隠しダンジョン内なのか……?」


「違ウ。ココハ五階層ダ」


「五階層だと!?」


 デリクは驚いた声を出した。それもそうだろう。ジェリダとデリクがオークに遭遇した場所は三階層だった。そこから五階層ということは、あの割れ目からそれだけの深さを落ちたという事になる。


「まるで外にいるみたいに木々が生えてる。どこのダンジョンもこんな感じなのかな」


「いや、このダンジョンが異様すぎる。洞窟系のダンジョンかと思えば、森林系のようなフィールドがある。こんなのは今までにない」


 今見つかっているダンジョンは系統が決まっており、フィールドもそれに準じる形で存在している。だが、このダンジョンは洞窟系と森林系のダンジョンが合わさった珍しい、いや、新種のダンジョンだった。


「このダンジョンは俺たちの調査できる範囲を超えている。アイザック隊長はおそらく引き返すことを考えているだろう。なら、俺たちは元の三階層に戻るべきだ」


 デリクの言う通り、これはレベル平均が30の兵士たちで調査できるダンジョンではない。一度引き返し、隊を編成しなおすのが妥当な判断だろう。おそらくあのオークとの戦闘で負傷者が出ているだろう。これ以上奥の階層に進んで、被害が出る前にアイザックは引き返すだろうと予測できる。ならば、ジェリダとデリクはそれまでに隊へ合流しなくてはならない。


「上ヘノ出口ヲ探スノカ? ソレナラ我ガ知ッテイル」


 そう言うとトロイはのしのしと森の中を分け入って行く。さすがに、この森の中をトロイの方に乗って進むのは危険なので下ろしてもらう。トロイが進む方向についていく。


 森の中には普段市場などで見かける果物がなっていた。デリクはそれをトロイに取ってもらう。少しでも食料を増やそうと思ったのと、調査するための材料として取ってもらったのだ。土も少量、布にくるむ。


(意外と熱心なんだな…)


 ジェリダはデリクの様子を横目で伺いながらそう思う。デリクは差別的な考えがなければ出世するのは容易いだろう。いままでデリクよりもカルムが評価されていたのはこのような所なのかもしれない。


◇◆◇


 一方その頃、三階層にて調査隊と冒険者達は負傷者の事やジェリダ達の事もあり、その場で二日ほどとどまることにしていた。


「ルベル君! こっちを手伝ってくれ!」


「はい!」


 負傷者の治療や料理などを手伝うため、ルベルはあちこち走り回っていた。幸い、住居のようなものがあるため、その中でも一番大きな場所に負傷者を集めて治療している。今ルベルは血の染みた包帯を洗って煮沸する作業を手伝っていた。


(ジェリダ様は大丈夫。絶対に返って来る)


 ルベルはひたすらそれだけを祈っていた。ジェリダの事を信じていない訳では無いが、もう大切な人を無くすのも、ワ国のように置いて行かれるのも嫌だった。もっと自分にできる事をと、動いているのだ。


 そんなルベルをカルムも、隊長のアイザックも心配していた。アイザックは特にギルド長から二人を任されているのだ。それが一人、デリクを助けるために隠しダンジョンに向かってしまった。他の兵士達も大切だが、ジェリダの事も、無理をしているルベルも心配だった。


「ルベル、それ代わるから。少し休んで来い」


「いえ、大丈夫です。このくらいで疲れたりしませんから」


 包帯の束を運ぼうとしていたルベルをカルムが止める。だが、ルベルは頑として仕事を譲らない。流石にカルムもムッとなる。ばっとルベルから包帯の束を取り上げる。


「いいから代われ! お前、俺達よりも働き過ぎだぞ!」


「俺がしたいからいいんです。返してください」


「お前達!」


「「っ!」」


 見かねたアイザックは二人に声を掛ける。二人は同時にびくりと肩を跳ねさせ、やってしまったという表情になる。アイザックは二人をきつく睨みがら呼ぶ。二人は説教を覚悟でアイザックの元に行く。


「お前たちが今焦っても何の解決にもならん。だが、二人とも働き過ぎだ」


「え、俺もですか!?」


「そうだ。自覚がないのか」


 カルムも隊のため、負傷者のためにルベルと同じくらい走り回っていた。カルムは全く自覚がなかったらしく、アイザックはため息を吐く。


「お前たちのお陰で大分落ち着いてきた。お前たちは一時間ほど休憩しろ。いいか、これは命令だ」


「……分かりました」


「はい……」


 ルベルもカルムも命令と言われれば逆らう事はできない。冒険者のルベルでも、今はこの調査隊の一員だ。隊長の命令は聞かなくてはならない。カルムが取り上げていた包帯はあの糸目のローレスが預かって行った。


 手持無沙汰になってしまった二人は、取り合えず邪魔にならない隅で腰を落ち着ける。


「はぁ……」


「はぁ……」


 そして同時に二人は息を吐き出した。じっとして見れば、意外に疲れがたまっていたのが分かった。他の者達があちこちに行きかう様を見ながら、二人は沈黙する。


「あと二日。それまでにあの二人が帰って来なかったら俺達は一度、戻らなくちゃいけないのか……」


 最初に沈黙を破ったのはカルムだった。あと二日。その言葉がぎゅっとルベルの心臓を締め付ける。隠しダンジョンに行った二人が無事であろうと、他の兵士達の安全を考えて一度地上に戻る。もしも、ジェリダをこのダンジョン内に置いて行くようなことになったらと、ルベルは不安になっているのだ。


「ジェリダはあれで強いし、判断力もある。あのデリクが足を引っ張る形になるかもしれないが、非常事態だってことぐらい理解して、協力はしてると思うぞ。絶対に帰って来るさ」


 ルベルを不安にさせた事を察したのか、カルムは言葉を付け足す。


「……分かってます。ジェリダ様ならきっと、きっと戻って来れます」


 自分を励ますように、ルベルは呟いた。若干声が震えている。カルムは何も言わず、ルベルの髪をかき混ぜたのだった。


次は6月22日21時に更新です。

【変更】

6月23日21時に更新日を変更します。楽しみにしていた方々、本当にすみません。

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