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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
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第47話


 ミノタウロスは心なしか嬉しそうにジェリダとデリクを最奥へと案内する。ミノタウロスと人間の歩幅は違い過ぎて二人は走ることになってしまうので、ミノタウロスのトロイは二人を肩に乗せて進む。トロイという名前はジェリダが名付けた。


「この俺が魔物の肩に乗っているなんて悪夢だ……」


 デリクはミノタウロスの肩に乗るという行為にかなりの抵抗をしたが、ミノタウロスにひょいと掴まれて肩に乗せられてしまうと両手で顔を覆って嘆いていた。デリクの中にあるプライドと戦っているのだろう。


「……降ロシタ方ガイイカ?」


「気にしなくていいよ。それより、オークがいる部屋って言うのはあとどれくらいかかるの?」


「モウスグ、見エテクル。ホラ」


 トロイが言った通り、すぐに最奥の扉が見えた。一見、ただの行き止まりの壁のように見えるが、入り口の所に転移魔法の陣が地面に掛かれ、発動していた。このように人工的に見える魔法陣などは戸のダンジョンにも見られる特徴だ。しかし、ダンジョンはその存在自体がまだ謎に包まれており、一説では誰かが作っているのではないかと言われている。それでも、無限に湧き出るボスやモンスターの説明が付かないため、謎は謎のままである。


 トロイに降ろしてもらい、最奥の扉を見上げる。ごつごつとした岩でできている。転移用の魔法陣以外には特に何も見当たらない。


「これに入ればいいのか?」


「ソウ。我モ共ニ行ク」


「一緒に戦ってくれるって事?」


「ソウダ」


 トロイは頷く。オーガがこのトロイよりも強いとなるといても戦力になるのかは分からないが、外に出たいというのだから、連れて行くほかないだろう。トロイの肩に乗ったまま転移魔法陣に入る。ホオズキが使う転移と似た感覚が一瞬、脳を揺らした。そう感じた次の瞬間には目の前の景色が変化していた。


「ニンゲン、ガ、クルノハ、ヒサシブリダ」


 トロイが言ったように、そこにいたのはトロイよりも片言の言葉を喋るオーガの姿だった。だが、通常のオーガと違うのはその色と大きさだった。ほとんどのオーガが黒色なのに対し、このオーガは黄色っぽい肌に、上に反るようにして生える牙が覗いている。大きさも桁違いで、トロイの二倍はある大きさだった。でっぷりと肥えた体は鎧で守られている。手には血のような跡がこびり付いた棍棒を持っている。


 その空間は半円状に大きく岩が削られて出来ており、何本もの松明が部屋全体を明るく照らしている。オーガは一番奥で大岩の上に座って周りを様々な大きさの白骨に囲まれている。恐らく、ここにたどり着いた者がことごとくこのオーガに敗れたのだろう。だから、今までこのダンジョンが報告されていなかったのかもしれない。


――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 ガガル

種族 オーガ亜種

称号 ダンジョンボス

LV 65

HP 4274

MP 1269

《パッシブスキル》

威圧 LV 3

剛腕 LV 5

《アクティブスキル》

棍術 LV 6

咆哮 LV 5

《固有スキル》

野生の勘 LV 5

――――――――――――――――――――――――――――――――


ジェリダがステータスを視ると、なんとこのオーガ亜種にはガガルという名前があるらしい。以前、倒したボア亜種は名前がなかった。誰がこの魔物に名前を付けたのかは不明だが、ボア亜種よりレベルもHP、MP全てが上だ。油断はできない。


「オマエモ、オチタナ! ニンゲンニ、カワレル、コト、ニナッタノカ!」


 ブヒブヒと指を指してガガルはトロイの事を嘲笑う。トロイは何も言い返さない。ジェリダはそんなトロイの肩からひらりと飛び降りた。デリクも肩から飛び降りる。


「チイサイナァ、ニンゲン、ハ。ブヒヒヒヒヒ!」


 自分より強い相手を見たことがないのか、全てを自分よりも隠したとして嘲る。その態度がジェリダの中では腹立たしくて仕方なった。スッと目が細められる。


「あの巨体だ、まともに言ってもやれるだけだな。お前、いつも使ってる炎の魔法で目くらましはできないのか」


「その隙に接近してあのオーガを叩くって言うの? あの巨体を登るのは容易じゃないと思うけど」


「身体強化の魔法ぐらいなら使える。あれぐらいなら簡単に登れる」


「我ハドウスル?」


「トロイはデリクの援護。前衛として一緒に戦って」


「ワカッタ」


「チイサイ、ヤツラガドレホド、アツマッテモムダ、ダ!」


 最初に動いたのはガガルの方からだった。その巨体からは想像できないような速さで動き、すぐにジェリダ達の元まで接近した。


「プギィィィィイイイイイイ!!」


「ウモォォオオオォオオオオオオ」!


 ガガルの振り下ろした棍棒を自身の武器で受け止めたのはトロイだった。ぎりぎりと二体は鍔ぜり合う。その隙にジェリダはガガルの視界を塞ぐようにして炎の蛇を繰り出す。


「プギイイイイイイイイイイイ!」


 その声はガガルの悲鳴ではなかった。ガガルは視界を塞ぐ炎をその声一つでかき消して見せた。咆哮のスキルは相手を怯ませることもできるが、魔法や攻撃を打ち落とす事もできるのだ。炎が一瞬で掻き消され、ガガルの視界が晴れる。


「ブヒーーーーー!」


「モォォォォオオオオ!」


 何とかガガルと鍔ぜり合っていたトロイだが、後方へと吹き飛ばされる。


「トロイ!」


 トロイは壁が陥没するほどの勢いで叩きつけられる。痛みで声すら出せないが、死んではいなかった。


「はあああああああ!」


 デリクが身体強化を施した脚力でガガルの背を防具を足場に駆け上がる。そして、首に剣を突き立てる。


「なっ!」


 ガガルの皮膚は一切刃を通さなかった。それどころか刃の先が掛けてしまった。ぐりんと首を回したガガルとデリクの目がある。そしてガガルはデリクを鷲掴みにする。


「ぐっ…! この、離せ……っ!」


「イイノカ? ハナシテモ」


 そう言うと、ガガルは思いっきりデリクを放り投げた。トロイと同じく壁に叩きつけられれば命はない。ぎゅっと目を瞑ったデリクは柔らかい何かに当たって勢いを止めた。


「な、何が……」


「怪我ハ、ナイカ……」


 吹き飛ばされたデリクを受け止めたのはトロイだった。だが、デリクを受け止めるのが限界だったのか、地面に横たわってしまう。


「おっ、おい!」


「我ハ大丈夫ダ。体、頑丈ダカラ。ダカラ行ケ」


「チッ! 死ぬなよ! いいな!」


 デリクは舌打ちをするとトロイの言う通り駆け出した。今はジェリダがガガルを相手に一人で戦っていた。だが、その様子は先ほどとは違っていた。


「ブギイイイィィィィ」


 先ほどまで優勢に思われていたガガルの方がジェリダ一人を相手に押されていた。それどころか、ジェリダの繰り出す様々な魔法に翻弄され、少しずつ体に傷をガガルは負っていた。


 時に炎で体を炙り、咆哮を使われる前に地面から鋭く尖った岩の杭が突き出される。その内の一つがガガルの足を貫通した。


「プウギギギィィィィイイイイイイイイ!」


 今までにない程の大声で悲鳴を上げるガガル。必死にその杭を抜こうとした所を、別の方向から突き出て来た杭が貫通する。デリクの剣では傷をつける事すら難しかったあの皮膚に、いとも簡単にジェリダは攻撃をしていく。既にガガルの体には火傷や刺し傷ができ、血まみれになっていた。


「なんだ、あの女……」


 デリクは茫然とその戦闘を見るしかなかった。今デリクが出て言った所で戦闘の邪魔になるどころか、誤って殺されかねない。


 デリクは女という存在を軽視していた。何が原因で軽視しているのか、デリク自身はっきりしていない。だが、今思えば女は弱いと言うだけで軽視していたのだろうと思う。それが、ジェリダの戦う姿を見て認識が変わった。女であっても、強い者はいるのだと。


 そして、このジェリダという少女はその中でも桁違いの力を持っているのだとデリクは理解した。


「ニンゲン……ゴトキガァア…!」


「うるさい」


「ガッ……!」


 デリクがそう思っている間に、ジェリダはガガルをいくつもの食いで刺し貫き、最後の止めに首を完全に落とした。


 ゴロンゴロンと首地面を転がり、やがてと待った。首を失った体は刺し貫かれたまま立っている。斬られた首から血が溢れて流れている。と、最初にガガルが座していた奥が地響きと共に動き出した。そして、ガラガラと崩れる白骨の奥に階段が現れた。


(一人で戦った方が早かったな。さて、トロイとデリクは生きてるかな……)


 ジェリダはデリクが飛ばされた方を見る。トロイが庇ったのは分かったていたが、横たわっているのを見てトロイの元へ駆けつける。


「トロイ! 大丈夫!? 今、回復するから」


 ジェリダはそう言ってすぐに回復魔法をトロイに掛ける。傷は次第に塞がり、骨が折れたりしていたところも修復されていく。それを見ていたデリクが驚きの声を出す。


「その回復魔法は神官並みじゃないか。そんな力も持ってたのか……」


(あーあ。またやっちゃった。もう、殺してしまおうか)


 デリクがジェリダを下に見ているのも気に入らず、一緒に歩いている間も殺してしまおうか考えていたのだ。カルムには助けると言ったが、この戦闘で死んだ事にしてしまおうとジェリダが考えた時、ばっとデリクはジェリダに向かって頭を下げた。


「すまない。俺は自分の力を過信して、お前、いや。ジェリダの事を軽視していた。女だからと言って馬鹿にしていた事、本当にすまなかった」


「え……」


 デリクの突然の謝罪にジェリダは毒気を抜かれる。


「……それは嘘偽りない言葉?」


「ああ」


「なら、今さっき見た回復魔法の事は誰にも言わないで。もし、誰かに言ったらただじゃおかないから」


「そんなに神経質になる事か? 冒険者の中にはその域まで達する者もいると聞くし、そこまで隠す必要はないと思うが……」


「私はまだ十三で、侮られることが多いの。利用しようと考える奴も。だから、黙ってて」


「分かった。誰にも他言はしない」


 態度ががらりと変わったデリクに驚きつつも、ジェリダはデリクに回復魔法の事を他言しないように約束させた。トロイの治療が終わり、完全に立ち上がれるようになった。


「治療、感謝スル。そして、オーガヲ、倒シテクレタコトモ、感謝スル」


 トロイは二人に感謝を述べると再び方に乗せ、階段に向かって行く。これでようやく、ジェリダとデリク、トロイは隠しダンジョンから抜け出す事ができるのだった。



次は6月19日21時に更新です。

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